銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百三十一訓 人は無意識の内に見る見ないを判別している

「なっ……?」

 

 確かに、銀時の肩に誰かが触れた感触はあったのだ。

 実際視線も感じたので、間違いはない筈だった。

 しかし、

 

「誰も、いない……?」

 

 振り向いた時には、そこに誰も居なかった。

 

「おい、今誰か俺の肩叩いたか?」

「何言ってるの銀時?」

 

 周囲に確認を取る銀時に対して、霊夢はその質問をする意図が理解出来ていないようだった。

 魔理沙や咲夜も、あまりそのことに気付いている様子はない。

 当然、新八や神楽もだ。

 

「誰かが銀さんの肩を叩いたってことですか?」

 

 新八が尋ねる。

 

「あぁ、確かに……」

 

 辺りを見渡す銀時。

 すると今度は、

 

「ひぃっ!」

 

 銀時の背筋に感じられた、謎の感触。

 誰かが指で背中をつー……となぞったような、くすぐったさと寒気のダブルパンチ。この場において不穏なのは、銀時の視界には五人全員映っているのに、背後からその感触が感じられたことだ。

 

「ま、まさか……」

 

 そこで銀時は、ある可能性に辿り着いてしまう。

 これは、こんなことをするのは――。

 

「もしかして幽霊なんじゃないかな?」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 瞬間、銀時の耳元で女の子の声が聞こえてくる。

 それが致命的となった銀時は、つい勢いで後ろを振り向いて思い切り抱き着いてしまった。

 

「えっ」

 

 感触があった。

 本来ならば後ろに誰もいない筈なので、抱きしめた所で自分の身体を抱きしめる情けない天然パーマの図が誕生する筈なのに。

 

 そこには一人の女の子がいた。

 

「なっ……!?」

 

 霊夢は思わず臨戦態勢を取る。

 今まで気配すら感じなかった少女が、突然目の前に現れたのだ。

 警戒しない訳がない……ただし、天然パーマの変態が抱き着いていなければ、だが。

 

「銀ちゃん!? その子誰アルか!? さっきまで居なかったアルよ!?」

 

 当然、神楽も尋ねる。

 銀時が今抱きしめているのは、薄く緑がかった癖のある灰色のセミロングに緑の瞳を秘めた女の子。薄い黄色のリボンをつけた鴉羽色の帽子をかぶり、黄色い生地に、二本白い線が入った緑の襟、鎖骨の間と胸元とみぞおちあたりに一つずつ付いたひし形の水色のボタン、黒い袖の上着。緑の生地に白線が二本入ったスカートには、薄っすらと花柄模様が描かれていた。

 何より最大の特徴は、左胸にある閉じた瞳。そこから伸びた紫色の管は、一本は右肩を通って左足に履いている靴に付けられたハートへつながり、もう片方は一度顔の左でハートマークを形作り、そのまま右足に履いた靴に付けられたハートへつながっている。

 その女の子は、悪戯に成功したように嬉しそうに笑っている。

 

「初対面の女の子いきなり抱きしめちゃうんだねー。お兄さん大胆だー」

「あ、す、すまねぇ!!」

 

 勢いよく離れた銀時。

 少女は両手を後ろで組み、少し前のめりになって銀時を覗き込む。

 

「あはは。面白いねお兄さんー。お名前なんて言うの?」

「俺か? 俺は坂田銀時。テメェは?」

「私は古明地こいし。よろしくねー」

 

 銀時の周りをうろちょろしながら、嬉しそうに話すこいし。

 

「……先程までこの場に居なかったようですが、どうやってこの場に?」

 

 咲夜は警戒しながら尋ねる。

 当然だろう。今の今まで姿かたちを一切見せなかった少女が、いきなり現れたのだ。

 対する少女は、なんてことないと言いたげな表情を浮かべながら、

 

「あ、それきっと私の能力だねー。『無意識を操る程度の能力』っていうのを持ってるんだー」

 

 無意識を操る程度の能力。 

 その名の通り、相手の『無意識』を操ることによって、こいし自身を認知させないようにするもの。

 

「なる程……だからさっきまで私達は気付けなかったようね」

「全然分からなかったぜ……」

 

 霊夢と魔理沙は納得する。

 

「だけど、お兄さんだけは私の気配を感じ取ってた。私の周りに居る人はみんな、こうして私が意識して現れない限りは存在を認知できない筈なのに……だから面白いなーって」

 

 こいしからしてみれば、坂田銀時の存在は稀有な物なのだろう。

 能力が発動している以上、銀時にもその影響は及んでいる。確かに銀時の目にも彼女は映っていなかったからだ。しかし気配は感じ取ることが出来た。故に銀時だけが怪しむことが出来たのだ。

 

「お姉ちゃん以外で私のことを確認出来たのは初めてかもしれないー」

「お姉ちゃん、ですか?」

 

 気になるワードを聞いた新八が尋ねる。

 姉、というワードに反応する辺りは流石シスコンである。

 

「って、何勝手に地の文でシスコン認定してんだゴラァアアアアアアアア!!」

 

 シリアスなので邪魔しないで頂きたい。

 

「何言ってるんだぜ? 新八……」

 

 魔理沙が呆れながら新八にそう言った。

 閑話休題。

 

「私のお姉ちゃんは、この先にある地霊殿の主なのー」

「俺達、ちょうどその地霊殿ってとこに用があるんだ。テメェが案内してくれっか?」

「いいよ! お兄さんのこと気に入ったから、案内してあげるー」

 

 銀時の手を握りながら、こいしは笑顔でそう言った。

 瞬間、霊夢は両拳を握りしめて青筋が浮かんでいた。

 

「……なんでこう、行く先々で銀さんは女の子を落としていくんだぜ……」

「妹様の苦労が……」

 

 魔理沙は呆れ、咲夜は紅魔館に居る主人の妹を案じていたという。

 

 

 

 

 

 

 

銀魂×東方project

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

 

 

第百三十一訓 人は無意識の内に見る見ないを判別している

 

 




地霊殿篇を書くにあたって一番気に入っているヒロイン、こいしちゃんの登場です!
彼女に関するエピソードは、恐らく地霊殿篇の中で描かれることになるでしょう……。
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