銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百三十三訓 鬼退治をするのは一苦労

 橋を渡り、こいしの道案内の元地霊殿を目指す銀時達。辺りを見渡すと、先ほどよりも妖怪や鬼が多く存在することに気付いた。何人かは、銀時達一行が珍しいのかチラチラと眺めている。

 

「なんだか私達注目されてるアル!」

「地底に来る人間が珍しいからでしょうね……それもこんなに大勢」

 

 神楽の疑問に対して霊夢がそう語る。

 幻想郷における地上と地底の関係性は、制約がいくつか定められていることからも良好であるとは言えないのだろう。そんな中でやってくる人間達だ。純粋な興味が入り混じっていても何ら不思議ではない。

 

「しかし、あまり感じのいいものってわけでもないな……」

 

 ポツリと銀時が呟く。

 好奇の眼差しというのは、良くも悪くも注目されるということ。受けることによって気分が悪くなることだって十分に考えられるのだ。特に、地底には人間がいないせいで、あまりいい印象を抱かれていることはない。

 そんな中。

 

「おやおやおや? こんな所に人間がいるたぁねぇ」

 

 と、一人の女性――鬼が話しかけてきた。

 金髪ロングの女性の額には、赤い角が生えている。その角には星柄の模様が描かれていた。瞳の色は赤。上着はまるで体操服を彷彿とさせる、白を貴重に袖の部分が赤く染まっている物。下はロングスカートを履いている。 

 そんな彼女は、銀時達を見るとニヤッと口元を歪ませた。

 

「そんなに珍しいものですか?」

「そりゃねぇ。地底に人が降りてくるなんざ、物好き以外の何物でもないし」

 

 咲夜の質問に対して、女性は笑いながら答える。

 

「私は星熊勇儀。見りゃ分かると思うけど、鬼だよ」

「なる程……本当に鬼が居るたぁねぇ」

 

 銀時は木刀を握りしめて前に出る。

 新八と神楽、そしてこいしの三人は慌てて止めようとするも、

 

「へぇ。アンタ、私が何をしたいのか分かってんのかい?」

「そりゃそんだけ闘志むき出しにしてりゃあ、心が読めなかったとしても理解出来らぁ」

「やっぱり面白いねぇ、これだから人間相手にすんのは止められないのさ!」

 

 勇儀は、手に大きな杯を握り締め、そこに酒を注ぐ。

 それを持ちながら銀時達に告げた。

 

「面倒だからまとめてかかってきな。ただし、鬼を相手に人間が実力だけで勝つのは難しいだろうから、私はこの杯に入った酒が零れたら負けってことにしてやるよ」

「随分と大層な余裕だぜ。この人数相手に勝てるっていうのか?」

「あぁ。弾幕を使ってもいいよ。こちとら腕が鳴るってもんよ!」

 

 そう言いながら、勇儀は魔理沙目掛けて突っ込んできた。

 

「早速って所だぜ!」

 

 魔理沙は一筋の大きな光を放つ。

 マスタースパーク。彼女が持ち得る最強の攻撃だ。

 

「一直線なのは悪くないけど、避けやすさもピカイチだねぇ!」

「なっ!」

 

 勇儀はそれを、難なく避ける。

 そのまま魔理沙の腕を掴んで、

 

「そらよっ! お返しだっ!」

 

 霊夢に向かってぶん投げた。

 

「ほわたぁ!」

 

 その間に神楽が割って入って、魔理沙をキャッチ。

 

「さ、サンキュー……」

 

 助けてもらった魔理沙は、神楽に対して礼の言葉を述べた。

 

「いいコンビネーションだねぇ。それなら……っ!」

 

 鬼符『怪力乱神』。

 鱗のような形の弾幕を張り巡らせて、全方位に放つ。

 それらは地面に着弾すると、バネのように勢いを増し、目標目がけて突っ込んでくる。

 

「そんな攻撃、効きません」

 

 咲夜はナイフを配置することで、弾幕を撃ち消していく。

 新八も、木刀を使って斬り伏せていた。

 

「いいねぇ! どんどん暴れ回ろう!」

 

 勇儀の方は楽しくなってきたのか、どんどん弾幕を放っていく。その上でさらに別のスペルカードを使用した。

 

「怪輪『地獄の苦輪』!」

 

 勇儀はパンチを放つ要領で、拳を前に突き出す。

 瞬間、そこから複数のリング状の弾が飛び、銀時達を目指して飛んできた。

 

「数撃ちゃ当たるってもんでもねぇぜ?」

「生憎、当てるのが目的じゃないからねぇ。本命はこっちさ……っ!!」

 

 銀時が迫ってきたのに対して、勇儀はニヤリと口元を歪ませる。

 勇儀はノーモーションから、鋭い蹴りを放ってきた。

 銀時はそれを木刀を使って受け流す――しかし。

 

「ぐっ……お、おめぇ……なんつぅ蹴りだ……っ!」

「それが鬼の蹴りってもんよ! どうだい!?」

「大した蹴りだな……が、当たらなきゃどうってこたぁねぇだろ?」

「はっ! 大した余裕だねぇ!」

「お互い様だろ……っ!」

 

 銀時の木刀と、勇儀の拳が激突する。

 無数に放たれる、剣戟と拳。

 衝突する度に鈍い音が鳴り響くも、両者にダメージが通る気配はない。

 

「霊夢っ! 咲夜っ! チャンスだぜ!」

「一気に行くわよ!」

「かしこまりました……っ!」

 

 その隙を、三人は逃さない。

 霊夢は札状の、咲夜はナイフの、魔理沙は星型の弾幕を放ち、それを勇儀目掛けて撃つ。

 

「はっ! 舐めるんじゃないよ!」

 

 銀時を拳で突き飛ばした後、

 

「四天王奥義『三歩必殺』!!」

 

 勇儀は地面を思い切り踏みつけた。

 

 ――壱歩。

 

 瞬間、地面の叫び声が辺りに響いたと思いきや。

 

「なっ……!」

 

 夥しい数の弾幕がばらまかれていた。

 

「まだまだ……!」

 

 ――弐歩。

 

 再び、地面が揺れる。

 さらに多くの弾幕が張り巡らされた。

 

「そして……っ!」

 

 ――参歩。

 

 またしても多くの弾幕を張り巡らせる。

 つまり、避けたくても避けられない数の弾幕が、霊夢達を襲うということ――っ!

 

「これで私の……っ」

「テメェの負けだ、鬼」

「え?」

 

 その油断の隙を、銀時は逃さなかった。

 銀時は手に持つ木刀を横に振るうと、

 

「なっ……!」

 

 勇儀が握り締めていた杯を吹き飛ばし、中に注がれた酒をすべて地面に吸わせた。

 

 

「酒が零れちまったみたいだな。アンタの負けだぜ?」

 

 銀時が、木刀の刃先を勇儀に向けつつ、口元をニヤつかせながら宣言する。

 勇儀は高々に笑い出す。

 

「あははははははっ! こりゃいい! アンタなかなか面白いねぇ!」

 

 その笑い声と共に、先程まで設置されていた弾幕は消え去った。

 

 ――ここに、鬼と、鬼の子との勝敗は決されたのだった。

 

 

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

 

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第百三十三訓 鬼退治をするのは一苦労

 

 

 

 

 

 


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