銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百三十七訓 受け取った力に舞い上がってしまうのは否めない

 地霊殿、灼熱地獄跡。

 その地に降り立った銀時達が感じ取ったのは、周囲の熱さだった。

 周囲には少しばかり地面が残っているだけで、基本的にはマグマが迸っている場所。

 言ってしまえば、火山の火口に自ら足を突っ込んでいるような状態なので、当然のように身体からは汗が噴き出してくる。へばりついてくる服に不快感を覚え乍らも、銀時達は先に進む。

 

「この先に、今回の異変の主犯格が……」

 

 新八の気は思わず引き締まる。

 間欠泉を生じさせる原因となった人物が、この先に居る。

 そう考えれば当然のことだろう。

 

「新八、それはちょっと違うわよ。この先に居る人物もまた、ある意味では被害者の一人……ただし、ただの被害者ではなく、自覚なき加害者であることもまた事実だけどね」

「どういうことアルか?」

 

 霊夢の言葉に、神楽が疑問を抱いた。

 それに対して答えたのは、

 

「先程、とある二柱の神が力を与えたことにより暴走した旨が彼女の口から告げられました……つまり本当の犯人は……」

「ソイツに力を与えたバカな神様ってことになるな……なるほどなぁ。懲りてねぇのな、アイツら」

「もしくは、単純に別の目的で力を与えたら、与えられた人物が予想以上に力に溺れてしまった、と考えるのが自然ではないでしょうか?」

「どちらにせよ迷惑な話だな。ちっとばっかお灸をすえた方がいいんじゃねえか?」

 

 咲夜と銀時によって立てられる推論。

 それが正しければ、力を与えたのは――。

 

「それに関しては安心なさい。さっき外に居るアイツらには既に連絡とっているわ。きっと今頃向かってくれてると思うわ」

 

 霊夢が冷静な表情でそう告げる。

 ここに来る前、咲夜と霊夢の二人は、通信機を利用して何者かに連絡を試みている。

 その人物は恐らく、外で連絡を待っている妖怪達。

 その人物達に伝わっている以上、並行して今頃関係者の所へ足を踏み込んでいる所だろう。

 

「しっかし、この先に居る奴をぶっ倒しちまえば、異変解決ってことになるんだろ? 早く降参させてやりたいぜ! マスタースパークきっちりとお見舞いしてやらなきゃいけないぜ!」

「テメェの強すぎるレーザーぶっぱなすことでここが崩壊しねぇよう気を付けてくれよな?」

「大丈夫だろ! 博麗神社の近くに間欠泉がもう一つ出来上がる位で済むぜ!」

「私の神社がある敷地が穴だらけになるのは勘弁してもらいたいんだけど……」

 

 土地を管理している者としては勘弁していただきたい事態である。

 そんな会話をしている内に、開いた場所へ到着した。

 

「……アイツか」

 

 ポツリと銀時は呟く。

 彼らの目の前に居たのは、高身長な少女だった。

 白のブラウスに緑のスカート。長い黒髪に緑の大きなリボンをつけている。背中には漆黒に染まった羽が生えており、その上には白いマントを羽織っていた。マントの内側には、宇宙空間が映されているように見えた。

 驚くべきは、彼女の身体に付けられてた装備品。右足は鉄で覆われており、左足は電子が絡みついている。右腕は多角柱の制御棒。そして胸元には大きな真紅の目が飛び出している。

 

 ――彼女こそ、霊烏路空。今回の異変における重要人物であり、張本人である。

 

 そんな彼女は銀時達の姿を確認すると、口元をニヤつかせながら言葉を発した――。

 

「ここまで来たのは凄いね! だけど、私は貴方達より強いよ?」

「へっ! もらった力を振りかざすようなガキに、俺達が負けるわけねぇだろ?」

 

 銀時は挑発する様に言う。

 しかし、お空には効いていない。

 

「私はもらったこの力で、地上に出て破壊し尽くすよ! そうすれば灼熱地獄がもっと広がる!」

「……なる程ね。力をもらったことに関しては何の負い目もないわけね」

 

 霊夢は、お空の態度を見て分析する。

 それならば、銀時の挑発は何の意味も見出さない。何故ならば、お空自身にその自覚がまるでないからだ。

 悪いことと認識していない以上、それ以上追及したところで意味はない。

 言ってきかない相手ならば――。

 

「なら、力づくで止めてやるだけだぜ!」

 

 魔理沙はお空を指差しながら宣言する。

 そんな彼女を見て、お空は高々と笑い出す。

 

「あっはっはぁ! 出来るかな? 私の火力は貴女達を軽く上回る! それこそ世界を破壊することが出来る程の力だよ! そんな力を相手に勝とうだなんて、無謀なこともするもんだねぇ!」

「テメェ程度の奴なんざ、俺は嫌と言う程相手にしてきたからな……妹の為に霧で覆い隠そうとした吸血鬼や、地面に埋まった奴の為に春を奪い去った冥界の番人、月の使者から逃げる為に月を隠しやがったどこぞのお姫様……信仰の為にどんな手でも取ろうとした神様まで居たっけな」

 

 木刀を握る手に力を籠める。

 坂田銀時は、幻想郷に来てからたくさんの敵と戦ってきた。

 その誰もが、目的があり、自身の力を最大限に発揮し、そしてぶつかってきた。

 だが、お空は――。

 

「テメェ自身の力ではなく、受け取って舞い上がって勝手に暴れ回っているガキの頭冷やすにゃ、俺達のようなバカ共が相手の方がちょうどいい。地上に出る前に、ちったぁテメェ自身のバカさ加減に気付きやがれってんだ、バカガラス!!」

「なかなか言ってくれるねぇ、天然パーマの侍さん! なら私も、全力を込めて貴方達を倒してみせるさ!! この力がどれだけ強いか、しかとその目ん玉に焼き付けな!!」

「ばーか、炎なんざ目に焼き付けたら本当に焼けちまって見れなくなるだろうが。そんなこともわからない程鳥頭なんだなぁ!」

「そんな安い挑発で私が怯むと思ってるのかな!?」

 

 こうして、銀時達の戦いが始まる。

 この異変を終わらせる為の戦いが――。

 

 

 

 

 

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第百三十七訓 受け取った力に舞い上がってしまうのは否めない

 

 




次回、ついにお空との戦いが始まります――!

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