銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百四十二訓 たまに事態が収まらないこともある

「この声……こいし?」

 

 さとりは、少し慌てた様子で対応する。

 実の妹がこうして泣いている姿は、今までそう多く見たことがあるわけではない。

 特に、こいしが自身の能力の一つを潰してからというものの、何かを求めるように泣く姿を見ることはなかった。

 しかし、彼女は今、実際に泣いている。

 

「お兄さん!!」

 

 目標を見つけたこいしは、泣きながら抱き着く。その相手は当然――坂田銀時。

 

「よかった……もう、お兄さんに会えないんじゃないかって……私のこと、見なくなっちゃうんじゃないかって思った……だけど、居てくれた……離れないで……こいしのこと、ずっと見ていて……お兄さん……っ」

「……」

 

 銀時には、こいしが不安に思っていることがなんとなく理解出来てしまった。

 彼女は無意識を操る。

 それも、彼女の意思は問わず、無意識に。

 誰からも認知されず、誰からも存在を感じられない。

 そんな中で見つけた貴重な存在。

 そんな存在が、もし自分の目の前からいなくなってしまったら――?

 銀時の中で、こいしは被るのだ。

 紅魔館で待っている、吸血鬼の少女と――。

 

「……ったく、どいつもこいつも人の気しらねぇで……そう簡単に見捨てるわけねぇだろう?」

 

 銀時は、抱き着いてきたこいしの頭を優しく撫でながら、まるで子供をあやすように優しい声で告げる。

 それは彼の心からの一言。

 さとりは、心を読まずとも、彼が嘘によって塗り固めていないこと位分かっていた。

 

「テメェにゃ、こんなに優しい姉がいるだろうに……天然パーマな侍なんざ、忘れたってかまいやしねぇんだぞ?」

「いやだ。絶対やだ。私は忘れないよ。こいしのことを救ってくれたお兄さんを、絶対に忘れない。お姉ちゃんも、お兄さんも、私にとって大切な存在なんだから」

「っ!!」

 

 この言葉を聞いて、一番動揺したのはさとりだった。

 実の妹から告げられた言葉に対して、さとりは一気に嬉しさが増したのだ。

 今までこうして口にすることのなかった正直な気持ち。

 心を読めなかった彼女にとって、妹の口より告げられたその一言は、とても嬉しい物。

 いままで聞きたかった、本当の気持ち。

 

「こい、し……っ」

 

 さとりはこいしに抱き着いた。

 彼女の身体を優しく包み込み、頭を撫で、そして落ち着かせるような口調で。

 

「もう、貴女を独りぼっちにしないから……こんな情けない姉だけど、貴女のことを大切に想うから……だから……」

「……分かってるよ、お姉ちゃん」

 

 銀時の身体から少しだけ名残惜しそうに離れるこいし。

 しかし、こいしはさとりに抱き着いて、その腕を腰に回す。

 こいしは笑顔で、

 

「お姉ちゃんのこと、私、すっごく大好きだもん」

「……私もよ、こいし。貴女のことを愛している」

「私も、お姉ちゃんのこと、大好き」

 

 銀時は、そんな姉妹の様子を見て、小さな溜め息をついた。

 これで一安心。

 彼女達の居場所は、彼女達によって確立している。

 その中で、更なる居場所として、銀時達が居る。

 それで彼女達は救われたのだ。

 最早この地霊殿において、彼女達は孤立していないのだ。

 

「……一件落着、ってか?」

 

 ぽつりと零した銀時。

 しかし、姉妹の会話はこんな感じで流れていた。

 

「ねぇ、お姉ちゃん」

「どうしたの? こいし」

「私ね? 前にも言ったと思うんだけど、お兄さんのこと、凄く気に入ったの……大好き……ううん、愛してる、のかもしれない」

「……そうね。私も、坂田さんのことはいい人だと思っているわ」

「だからね? お姉ちゃん。お兄さんを……地霊殿に……」

「ん?」

 

 今、こいしの口から発せられた言葉に対して、少し疑問を抱きつつあった。

 坂田銀時を地霊殿にどうするつもりなのだろうか?

 

「……坂田さん。貴方さえ良ければ……いいえ、私達の為にも、この地霊殿に住んで頂けないでしょうか?」

「……は? え?」

 

 坂田銀時は、動揺している!

 

「妹のこいしはこのように、貴方のことをとても気に入っています。貴方は私に、居場所になってくれると言ってくださいました」

「俺だけじゃねえよ? 俺達って言ったぞ?」

「ですから、貴方は私達の為に、地霊殿に居てくださいますよね?」

「オイィイイイイイイイイ! 話が飛躍し過ぎてわけわかんねぇ所まで来ちまってるんだけどぉおおおおお!?」

 

 一気に話が飛んでいた。

 最早銀時一人では収拾がつかないかもしれなかった。

 

「ちょっと! 何勝手に話決めてるのよ?」

 

 その時。

 ちょうど起きてきたらしい霊夢が、青筋を浮かべながら彼らの所まで歩み寄ってくる。

 その後ろからは、こめかみを抑えた咲夜と、焦っている魔理沙。そして今すぐにでも痰を吐き捨てそうな表情を浮かべる神楽の姿があった。

 

「ケッ! これだから天パーは……っ」

「おい神楽、テメェ何俺に対して恨み持ってんだよ。喧嘩売ってんのか?」

「自覚ないアルか? 救いようのねぇ変態ダナ」

「後でテメェ話し合うからな!?」

 

 結局、この場が収まるわけがない――。

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

 

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百四十二訓 たまに事態が収まらないこともある

 

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