「いい湯だな」
「そ、そうですね……」
立ち上る湯気。身体を包み込む程よい温度の天然温泉。夜の幻想郷が生み出す美しい景観。これらは今の状況を楽しむには十分すぎるほど整った条件だろう。だというのに、銀時達は少しも満喫する事が出来ないでいた。
理由は超単純で、代々もっさりブリーフ派である将軍が一緒に入っているからだ。
銀時達は知っている。いつもロクな展開を迎えていないが、将軍がいる時には更に面倒臭いことが起きるに決まっている、と。
そんな彼らの気持ちなどいざ知らず、茂茂は初めての幻想郷、初めての温泉を心から満喫しているのだった。
「事前に聞いた通りの素晴らしさだな。世の中にはこんなにも素晴らしい場所が残されていたとは……」
温泉に浸かりながら、茂茂は感動している。確かに江戸に住んでいる者達からしてみれば、天人もおらず、機械による発展もそこまでなされていないこの地の景観は、自然によって守られていて美しいに違いない。事実、江戸からやってきた者達のほとんどは同じことを考えている筈だ。
だが、問題はそこではない。
「銀さん、僕達……宴前に汗をかいて流す為にここに来ましたよね?」
新八が尋ねる。
「そうだな……霊夢の目が金のマークになってやがったけど、それ以外に不審な点は……」
「なのに、同じ条件のはずの桂さんがいないのはどうしてなんでしょうか?」
「「……あ」」
その一言により、銀時と長谷川は気付いた。
確かに、先に向かっていた筈の桂がいない。桂が提案を断っているだけならば話は簡単なのだが、彼はたしかに『温泉が出たから入りに来て欲しいと誘われた』という旨の話を受けている。まして謎にスタンバイすることに命を懸けている男だ。先に行くのであれば温泉に浸かって、何かしらひとネタ仕込んでいても不思議ではない。
実は影でスタンバッてました、とかならまだ良かったのだが、今この場において存在しているのは四人しかいない。その他の気配もなさそうだ。
ここまできて、銀時達の脳裏に嫌な予感が浮かんでくる。
「あの、銀さん。これ、もしかして、僕達やらかしてません?」
「い、いや、まだわからねぇぞ? やらかしたのは桂である可能性も否定できねぇ訳だから……」
「そ、そうだぞ新八君。お、俺達はきっと大丈夫だって! 何も起きないって!」
顔面蒼白になる三人。
「どうかしたのか?」
そんな心配などいざ知らず、だが三人の様子がおかしいことには気付いてしまう茂茂は、当然心配するような声をかける。彼はカリスマを持ち合わせている為、こういうことを平然とやってのけてしまう。
「な、なんでもないですよ! そ、そうだ! もっと景色よく見る為に奥の方行きましょう!」
新八が茂茂と共に端の方へ向かう。銀時と長谷川も、それに合わせて同じ場所へ移動する。万が一自分たちの予想が当たっていた場合、すぐ様隣へ逃げ込むことが出来るようにする為だ。
「わ、わぁ! すげぇ! この風呂ってアスレチックも完備してるんだなぁ!」
長谷川がわざとらしくいうも、そんなもの設置してるわけがない。故にこれは、何かあった時の保険として茂茂が動きやすくなるための保険だ。
そして、その保険は……。
「「「っ!?」」」
ガラッという扉が開かれる音が発せられたと共に活用出来てしまうことになった。
「だ、誰か、くる……っ!」
銀時は小声で呟く。
その後の三人の動きは早かった。茂茂をつれて、岩陰に隠れる。そして周囲を確認し、隣の湯に行くためのルートを確保。命綱のないアスレチックを楽しむことになるのだった。
「ほう……温泉にはこのような楽しみ方もあるのだな……服を纏わずアスレチックを堪能出来るとは……いや、これは幻想郷だからこそ、なのか?」
「そ、そうですねー。幻想郷やっぱすごいなぁ」
ある程度の安全は確保出来たので、とりあえず普通の声に戻る。
そうして彼らは必死に女湯を見ないようにしていた。
いや、ここで覗くのは確かに男のロマンでもある。定番といっても過言ではないだろう。それを銀時達がやらないのには理由がある。
命が足りないからだ。
さて、というわけで女湯にとうとう人が入ってきてしまったわけなのだが、その人物達とは……。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百四十六訓 出来れば回収したくないフラグもあるが大抵否が応でも回収されるのがフラグ
もう、将軍がいるんだと思うだけで笑ってしまう作者がいます……。