第百五十五訓 空を自由に飛びたいなと思った子供時代を何人が過ごしたことか
とある日の幻想郷。
人気キャラ投票反省会が執り行われた翌日の話。
珍しく博麗神社には、魔理沙の他にも早苗の姿があった。博麗神社に守矢神社の分社が建てられている関係で、定期的にこうして霊夢に顔を出しに来ているのだ。とは言いつつも、目的の内の八割は、博麗神社に遊びに来るかもしれない銀時を待ち構えているだけなのだが。
「何よ早苗。銀時なら来てないわよ」
「ここ最近銀時さんが来てくれないから、私銀時さん成分が不足しているんです……いっそ私から会いに行きましょうか……」
「銀さんだって仕事位して……なさそうだなぁ」
銀時の仕事が万事屋でなければ、魔理沙ももう少し自信を持って『仕事しているだろう』と言えたのかもしれない。残念ながら彼の仕事は、依頼があるかないかで左右される。元より家賃も満足に支払えないような状態なのは周知の事実な為、今後の彼の生活を誰かが支える必要がありそうだ。
閑話休題。
「となると今日も霊夢さんには信仰の集め方をレクチャーした方がよさそうですね」
「毎度毎度ほぼお説教に近い形になるじゃないの。そんな面倒なのは私御免よ」
「まぁまぁ、どうせ暇なんだし聞くだけ聞けばいいんじゃねえの? 霊夢の為にもなるぜ」
「アンタはどうせつまらなくなったら帰ればいいだけだからいいじゃないの」
「ははっ! 霊夢が辛そうにしているのを見るのはなかなかに楽しいものだぜ!」
「魔理沙さんもなかなかにいい性格してますよね……」
ここに居る三人は、幻想郷の中でも人間組として仲がいい方だ。ここに咲夜が加われば、幻想郷において最強の人類四天王が揃うという算段だ。ちなみに銀時に関しては幻想郷の住人ではないのでカットされている。
「ところで、二人とも最近こんな噂が出回ってるんだけどさ、知ってるか?」
「「噂?」」
話のネタを提供してきたのは魔理沙だった。
魔理沙は二人に対して話し始める。
「最近、幻想郷の空の上を、宝船が飛び回っているって話だぜ?」
「宝船、ですか?」
「何よそれ。金銀財宝がその中に載せられているって言うの?」
早苗はキョトンとしていて、霊夢の目は金マークと化していた。
最近、地霊殿の事件があってから掘り出された温泉によって、多少の収入は得ている霊夢。しかしそれだけではまだまだ足りないのか、金になることなら大抵のことはやろうとしていた。とはいえ彼女自身も銀時並に働きたくない人間である為、楽して稼げるものなら最初からそうするタイプの人間だった。
そんな彼女の所に入ってきた、宝船の情報。
これを彼女がみすみす聞き逃すわけがない。
「にしても、本当幻想郷というのは常識に囚われてはいけない場所なんですね!」
早苗は心なしか少し興奮している。
彼女はこう見えて幻想郷歴が浅い。実は銀時達よりも後に幻想郷の地を踏んだのだ。如何に元居た世界と違うのかを実感している頃だろう。そして彼女が得た答えが、『幻想郷に常識は通じない』というもの。
船が空を飛ぶ事態など、元居た世界ではあり得ない話だ。幻想郷ならではのものだろう。
……最も、銀時達の世界では空を船が飛んでいることなど結構日常茶飯事なのだが。
「しかし、空を飛び回っているということは、なかなかそう簡単には見つからないかもしれないわね」
「そこだけが悩みどころだぜ。見つけちまえば銀さん達を連れて様子を見に行きたいところだぜ……」
「銀時さんがいるなら私も行きます!」
「いるとはまだ一言も言ってないぜ……」
最も、異変あるところに万事屋ありな風潮はあるので(というかそうしないとこの物語が成立しない為)、自ずと何かが起きたら銀時達が召喚されることだろう。
そうして今回もまた、ある物が彼女達の目に映ることとなる。
「れ、霊夢さん……魔理沙さん……あ、あれ……」
「「え?」」
その時、早苗は空を指差しながら二人を呼んだ。
つられて彼女達が空を見上げると――。
飛んでいる船が一隻。
「……あれって」
「まさか……」
今まで自分達が話していた情報を照合する。
空を飛ぶ船。
それは宝船と噂されるもの。
そしてそんな船が今、自分達の上空を高速で飛び去った。
それはつまり――。
「魔理沙! アンタのスピードなら追いつける筈よ! 船の行方を追いなさい! 私と早苗は、銀時達を呼んでくるわ!」
「分かったぜ!」
「霊夢さん! 早く銀時さんを迎えに行きましょう! 私の旦那様を!」
「アンタの旦那様じゃないけど、銀時達を迎えに行くわよ」
「えぇ! 私の家へ!」
「だまらっしゃい」
「はい」
こうして、今回の騒動も幕が開かれることとなる――。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
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