「私にとって人を驚かすのは生き甲斐……いえ、人生の一部のようなものなんです……それなのに……どうして驚いてくれないんですかー!」
わりと理不尽な八つ当たりに近い感情を存分にぶつけられる銀時。それこそ、まるで振られた女のように泣きじゃくり、ぽかぽかと弱い力で銀時の胸元を殴り続ける彼女は、可愛い以外の何物でもない。これで脅かさる人物はそう多くないだろう。脅かし方についても、可愛い女の子がやるそれにしか見えなかったし。
「……銀時。その子は一体何者なの?」
何故か霊夢は汚物を眺めるような目で銀時を見つめていた。ちなみに、早苗は頰をハムスターばりに膨らませている。怒っていますアピールを存分にしている。
「いやしらねぇけど……」
真面目な話、彼は彼女のことを知らない。当然ながらその場にいる誰もが、目の前に現れて急に泣き出した彼女のことを知るはずがない。
そんな少女は、ひとしきり泣き終えた後に気を取り直したのか、おもむろに自己紹介を始めた。
「私は多々良小傘。こう見えても唐傘お化けなんですよー」
どう見てもお化けには見えないのだが、小傘は何故か妙に自信満々に胸を張っている。幽霊であることを誇っているかのようだ。具体的に言うと『ドヤァ』という効果音が背景に描かれるのではないかと思われるほど。
「立ち直るの随分と早いアルな」
何気なく神楽は呟く。
「でも、最近は全然驚いてくれないんですよ……前までは少なからず誰かしらは驚いてくれたのに、今や妖怪なんて珍しくもなんともなくなってしまいましたから……」
「確かに、この幻想郷では妖怪たくさんいますし、人間の中でも圧倒的な力を持つ人だっていますからね……」
「下手したら人間の方が怖いやつだっているくらいだからな」
新八と銀時が妙に悟った目をしながら語る。彼らの周りにいる人物達が軒並み化け物級揃いなのが原因だろう。そもそも今いる中に人間でもなければ妖怪でもない、カテゴリーに悩む着ぐるみ的存在がいるくらいだ。
「その頑張りは実に良いことではないか。周りが変わったとしても、己がやることがブレることない。その姿勢は褒められたものだと俺は思う」
うんうん、と頷きながら桂が言う。キャラがぶれぶれな彼が言っても何処か説得力に欠けるのだが、割と小傘には響いた模様。そもそも桂がどんな人物か分かっていないのだから、素直に褒められていると思っても不思議ではない。
「まぁ、なんにせよこれからも精進するといいんじゃねえか? ただまぁ、本気で人驚かせてぇんだったら、まずはその可愛い面どうにかした方がいいと思うけどな」
「えっ……?」
小傘は目を丸くして銀時を見つめる。
サラリと女殺し的な台詞を言ってのける銀時に対して、思わず胸が高鳴ったのだ。ドキドキさせようとしてた側が、ドキドキさせられた瞬間である。ただし相手の目は死んでいる。流石は坂田銀時と言えるだろう。
「もっとこう、腕にシルバー巻くとかさ☆」
「ただそれぶっこみたかっただけだろうが!! ゲームキングに謝ってこい!!」
新八の遠慮ないツッコミが銀時を襲う。
しかし本人は痛くもかゆくもない様子。ボケはボケられたらそこで満足なのだ。
「とりあえず、驚かせてぇってんなら、ちっとは驚かす為の勉強してこい。話はそれからだ」
「あっ……」
銀時はその場から立ち去ろうとする。彼らには一応のこと目的がある。いつまでもここで油を売っている場合ではないのだ。だから先に進もうとして、
「ま、待ってくださいっ!」
その手を、小傘に引き留められた。
『お?』
エリザベスが興味津々なプラカードを掲げる。
構わず、小傘は銀時に対して言った。
「あの、また驚かせてもいいですか?」
不安混じりに尋ねる声。
断られたらどうしようと言いたげな表情。
上目遣いに見つめる瞳は不安げに揺れている。
銀時は頭を右手でガシガシと搔いてから、
「やりたきゃ好きにしろよ。人が何しようとテメェの勝手だからな。勝手にやる分には止められねぇだろ」
「……っ」
その言葉に、小傘は胸を打たれた。
「まぁ、銀さんは幽霊とか苦手ですからね」
「お化けだと分かった瞬間に泡吹いて倒れるのかと思ったけど、そうでもなかったアル」
「前は怨霊の声が聞こえるって聞いただけであれだけ騒いでたのに……随分ね」
「そうだったんですか!? それは是非とも見てみたかったです……可愛い銀時さんも素敵……」
「情けないなぁ銀時。武士ともあろうものが怖い物あるとは」
『無様☆』
「テメェらふざけんじゃねえぞ!!」
銀時の叫び声が辺りに響いた瞬間だった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百六十訓 人が勝手にやることについては止められない