銀時達が乗り込んだ船は結構な大きさを誇っていた。宝船と噂されることはあり、その広さは並の船と比べても広い方だ。しかし、それにしては少し地味で、本当にここが『宝船』なのか怪しいところである。
だが、この船以外に幻想郷において空を飛ぶ船は存在しない。少なからず何かしらの目的があると見てまず間違いないことは確かであった。
「……こういう場所はあまり良い思い出がないものだな」
桂がポツリと呟く。
かつて空を飛ぶ船で、桂と銀時は天人と鬼兵隊と戦った。即ち、かつての友である高杉が率いる集団と命のやり取りをしたのである。
「今はアイツとは何も関係がねぇんだ。高杉の話は一旦置いておくことにしようぜ」
「それもそうだな……此度の異変に、高杉は関与していない。話題にあげるだけ意味のないことであったな」
「銀時……桂……?」
その姿は、霊夢達にとって初めて見る物だったかもしれない。過去を懐かしみ、愛おしく、そしてそれでいて──憎んでいるような表情の二人を見るのは。正の感情と負の感情が共に強く、そしてほぼ同時に出ているこの状況。
とはいえ、今彼らが言った通り、二人が通って来た過去と異変については何の関係性もない。なので今追求したところで意味のない事なのだ。その迫力に、こういう時一番動きそうである文も手を止めてしまうまでいるほどだ。
「……ま、とにかく中探るとしようや。話はそれからだろ?」
そんな空気を壊したのは、やっぱり当人である銀時だった。彼は頭をガシガシと掻きながら、自らが先陣を切って進もうとする。そのあとを桂とエリザベスが追い、さらにその後を新八達が着いて行くという構図。これから中に入ろうという時に、
「止まりなさい!」
船の中から一人の少女が現れた。
空色の髪の毛、灰色がかった黒い瞳、頭には裾にギザギザの切れ込みが入った黒い頭巾を被っている。白の長袖の上着を羽織っている。スカートは上下で色が分かれており、上が白で下が黒。右手には金色の輪を持ち、ブーツのような黒い靴を履いている。
そんな少女の横には、
「あれは……雲、でしょうか?」
早苗がポツリと呟く。
そこにある……いや、そこに『いる』のは雲。通常のそれと違って、明らかに意志を持っている。これも幻想郷故に起きている出来事なのだろうか。
「この船に乗り込んでくるとは……貴方達も飛倉の破片を狙っている曲者ということになりますか!?」
『飛倉の破片?』
みんなの気持ちを代弁するかのようにエリザベスがプラカードを掲げる。そう、彼らはただ単にこの船が宝船だと思ってきている。よって、彼女の言っているものが何を指すのかなど知る由も無いのだ。
そのことを悟ったのか、
「……え? もしかしてなんのことか分かっていないのではないか、ですって? それは本当ですか? 雲山さん」
どうやら彼女の隣にいる雲の名前は雲山というらしい。意外にもしっかりとした名前だった。
「私は雲居一輪。この船で飛倉の破片を守る者。その手にしているものこそが、私達が守りし破片です。よって貴方達を敵とみなして、奪わせて頂きます」
「なっ……!?」
突然戦闘態勢を取った一輪と雲山。
それに驚きの声をあげた銀時だったが、すぐさま彼も戦闘態勢を取る。同じように霊夢達もまた、それぞれの得物を構えた。
「何が何だか分からないけど、少なくとも只事ではないことは分かったわ……とりあえずまずはこの場を乗り切らせてもらうわよ」
「久しぶりの弾幕勝負と行こうぜ! 吹き飛ばしてやるぜ!」
「これでも私も巫女ですからね。戦えるのは霊夢さんだけじゃないことを見せて差し上げます!」
「あやや。なんだか面白いことになってきましたね……私も加勢します!」
弾幕を放てる四人が即座に反応する。
「銀時達はそこで見ていて。ここは私達でなんとかしてみせるわ」
「……あぁ。なんとかしてくれよ」
「当然」
そして、彼女達の弾幕ごっこが幕を開けた。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百六十二訓 ダイナミックエントリーした奴は大抵相手からしてみればただの不審者