ナズーリンと村紗、そして銀時達は、自身が集めた飛倉の破片を手に乗せて、それを宙へと差し出す。星は手に持つ宝塔を頭上近くまで持ち上げた。瞬間、宝塔より発せられた光が飛倉の破片へと吸収されていく。その光に導かれるように、銀時達の手の上に乗せられていた破片は、宙に浮いていく。やがてそれらは組み合わさって光の扉を生み出して、静かにその扉が開かれた。
「…………っ!」
そこから出てきたのは、一人の女性だった。
金色に紫のグラデーションが入ったロングウェーブ。白黒のゴスロリ風ドレスに表が黒で裏が赤のマントを羽織り、黒いブーツを履いていた。彼女の手には絵巻のようなものが握られている。閉じた瞼が開かれると、そこから金色の瞳が覗いていた。彼女こそ、かつて人間の手によって封印された聖白蓮。
「聖……よかった……封印は無事解かれたんだ……っ!」
「聖……よかったです……ようやっと……会えました……っ!!」
「水蜜……星……そうでしたか……貴方達が迎えに来てくださったのですね……」
彼女の元に駆け寄った二人は、その身体に抱き着く。三人はその温もりを確かめ合った。その際に白蓮は感じる。封印されていた自分が長いこと感じ取ることが出来なかった、他者からの温もりを。
「……彼女こそが、あの者達が言っていた」
「あぁ、多分お偉い魔法使いなんだろうな」
桂と銀時が、その再会の様子を見ながら言う。誰かを慕い、誰かと共に過ごす空間。少なからず銀時達にとっても考えるところがあった。重ね合わせるのは、先生との日々。かつてあの三人のように、銀時達もまた──。
「貴方達にも感謝をしなければいけませんね」
白蓮は銀時達に向き直り、そして頭を下げた。
「ありがとうございました。ここまできてくださって、本当に感謝しております」
「宝探しのついでに辿り着いただけよ。だから感謝されることもないけど……どう致しまして」
「霊夢ってば素直じゃないぜ!」
「うっさいわね……」
魔理沙に弄られて、霊夢は顔を赤くする。そんな様子を、
「霊夢さんの貴重なデレ顔写真ゲットだぜ☆」
文は写真に撮っていた。隙あらば特ダネを追い求めるマスゴミとしてのあるべき姿である。
「…………ここに来ているのは、人間と、妖怪……ですか?」
白蓮は、銀時達にとっては意図が分からないことを尋ねる。
「えぇ。そうなりますけど……それが、どうかしたんですか?」
新八がその質問に答える。ただ、やはり白蓮が意図することが分からない為、当然の質問を投げた。
白蓮は何処か嬉しそうに、
「いえ……時代も変わったものだな、と思っただけです」
そう言った。
「……貴方は、人間からの信仰も集め、妖怪達を助けていたんですよね?」
早苗が話を切り出した。
「えぇ。かつて私はそのように動きました。そして今でもその気持ちに嘘偽りはありません」
白蓮はさも当然のように語り始める。そして次の一言は、彼女の思考を決定づけるものとなった。
「私が目指しているのは、妖怪と人間の、完全な平等……人間も妖怪も、等しく立場を同じにして暮らしていける世界の実現です」
その言葉を聞いた途端、霊夢が少し不機嫌となった。
「……どうかなさいましたか?」
白蓮は努めて冷静に尋ねる。
霊夢は鼻で笑いながら、
「妖怪と人間の完全なる平等? ハッ……そんなの、実現出来る訳ないじゃない。妖怪は人間より力が強い。これはもう絶対的なことであり、それを忌み嫌う人間が妖怪を退治しようとする。この構図からはもう逃れることが出来ないわ。ここにいる妖怪が特別だとかそういったことはなく、元々『そういうもの』なのよ。確かに、妖怪の中には人間と仲の良い者もいる。逆に人間の中でも、妖怪と仲の良い者はいる。けどそれは結局の所少数でしかない。私達の周りがそうであるという他ない。人里に下りれば、やはり妖怪は恐れられるのも仕方ないのよ」
「……結局、人間は変わらない訳ですね」
霊夢が言う現実も、白蓮のいう理想も、どちらも間違っているわけではない。どちらも事実。そこから覗いている未来が違うだけ。
「……白蓮、つったか。俺は別に、誰が誰守ろうが構いやしねぇ。だが……少し、語り合おうじゃねえか」
「そうだな。黙って話を聞いていれば、大層な理想を抱いていることだけはわかったが、それだけだ。俺達少数派の話も聞いてもらおうではないか」
前に立つのは、銀時と桂。
──白夜叉と、狂乱の貴公子だった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百六十六訓 理想と現実