宴の準備もほぼ終わり、のんびりしている霊夢と魔理沙。そして、手伝いに来た関係で、青のノースリーブにロングスカート、肩にケースのようなものを羽織った、金髪赤リボンの少女ーーアリス・マーガトロイドも居た。三人とも、お茶を飲んでのんびりしていた。
「手伝ってもらって悪いわね、アリス」
「別に構わないわ。宴が開かれるっていうし、暇だったことには変わりないから。それに、紅魔館の人達も昨日手伝いに来てたんでしょう? 今日はそんなにやることなかったし、こうしてお茶飲めるからちょうどいい感じよ」
「まっ、アリスは照れてるだけだろうぜ!」
「ちょっ、茶化すのはやめなさいよ!」
魔理沙の言葉を聞いて、耳まで真っ赤に染めるアリス。どうやら恥ずかしがっている模様。
とりあえず今はのんびりしている状態であり、後は宴が開かれる夜まで待つのみとなったわけなのだが。
「文々。新聞でーす!!」
襖を思い切り開いて、満面の笑みで新聞を持ってきた文がやってきた。
「ゴーホーム。お呼びじゃない」
「あやや!? いきなり辛辣じゃないですか霊夢さん!?」
不機嫌なのを隠すことなく、霊夢は外を指差しながら文に帰らせようとする。
「どうしたんだ? 紅魔館でのことならこの前答えたので全部だぜ? もう何も話すことなんてないと思うんだけど……」
「その節はお世話になりましたー。ですが今日は取材ではなく、その時の記事と、新鮮ホッカホカの特ダネを含めた新聞が出来たのでお届けに上がりました!」
「紅魔館っていうと、この前起きた紅い霧の話よね? 私ちょっと気になるわ」
「当事者が目の前にいるんだから魔理沙に聞きなさいよ……」
「ナチュラルに自分の名前が抜けてるぜ!? 私に全部押し付ける気満々じゃん!! 取材の時も全部私任せだったぜ!?」
こんな時にも霊夢の働きたくない病が発揮されていた模様。そのとばっちりを魔理沙が受けていた模様。
「ていうか特ダネって何よ? まさか銀時のこととか?」
「そうです! 坂田銀時さん、なかなか面白い方でしたねー」
「お? てことは銀さん目が覚めたのか! 一安心ってところだぜ!」
霊夢と魔理沙は、銀時が倒れてから会っていない。つまり、彼が気を失った状態から目が覚めたことを今初めて知ったようなものなのだ。
「坂田銀時?」
ポカンとしてるのはアリスだった。
彼女にとっては聞き覚えない名前だったからだろう。
「あぁ、最近きた外来人よ。前回の異変で偶然会って、そのまま一緒に紅魔館行ったってわけ」
「霊夢と波長が合うから大変だぜ」
「あー……なるほどね……」
「ちょっと待ちなさい。何納得してるのよ? その納得はどういうことよ?」
何故か魔理沙の言葉を聞いてうんうんと頷いているアリスに、思わず霊夢は一言物申す。
「で、その坂田さんについてのビッグニュースってわけです!! とりあえず見てください! 宴楽しみにしてますんでそれでは!」
新聞を人数分置いていき、文字通り風の如き速度でその場から立ち去る文。
仕方ないといった感じで三人とも新聞を手に取り、
『スクープ! 異変解決の英雄色を好む! 朝はベッドで幼女を好む!』
「「「…………は?」」」
その見出しを読んで、アリスは目を点にし、魔理沙はキョトンとし、霊夢は新聞をぐしゃっと握り潰した。
※
「超行きたくねぇ…………」
夜。
紅魔館から博麗神社へと向かっている途中で、銀時はポツリと呟いていた。
理由は明白。どう考えても、朝現れた文が撮影したスクープ写真のせいである。あの後、そこまで時間が経たない内に新聞は届けられ、紅魔館の中は修羅場と化した。
スペルカード全開で銀時を襲うレミリア。そんな彼女を抑えながらも、ナイフを投げることを辞さない咲夜。そんな二人に対して全力で挑み、能力を躊躇いなく使用するフラン。何も出来ず震え上がっている小悪魔と美鈴。白目を剥きながら『むきゅ〜』とリタイアしてるパチュリー。そして当事者たる坂田銀時は、椅子に縛り上げられて逃げられないようにされていたという。
誤解は解けたのだが、新聞が他の場所にも広まったのは周知の事実であり、どう考えてもその話題で持ちきりになるのは見えていた。
「何言ってるのよギントキ。主役がいなきゃ宴が始まらないじゃないの。今回の主役は間違いなく貴方なのよ?」
「その主役をさっき抹殺しようとしてたよなお前? 絶対許さねぇからな?」
「それはあんたがいけないんじゃない。私の大事なフランを……」
「だから誤解だっつってんだろうが!!」
刃のように鋭い爪を見せつけながら、レミリアは銀時に殺気を放つ。対する銀時は、もうこんなことは真っ平御免だと言わんばかりにツッコミを入れる。
尚、その間フランは銀時の腕を片時も離さないものとする。
「私は別にギン兄様ならいいんだよ?」
「話をややこしくしないでもらえる!? いや、お前の場合マジでやりかねないから余計怖いんだけど!?」
フランの眼を見て、恐らく彼女は本気で銀時に身を捧げかねないことを悟っていた。
「銀時様? 分かっておりますね?」
「こえぇよ!! もうテメェらからの圧力が半端ねぇよ!! 銀さんストレスマッハゴーゴーゴーだからな!?」
ナイフをちらつかせる咲夜に、冷や汗ダラダラ流しまくる銀時。
尚、小悪魔と美鈴は後ろに少し離れて、上司の愚痴会を開いている模様。
「パチュリー様ったら……」
「いえいえ、咲夜さんも……」
上司の愚痴は、彼女達の絆をより深くしている模様。
ちなみにパチュリーは、咲夜の横を陣取り、お互いに部下についての話をしている模様。
「……まぁ、こうして館の外を歩けるのも、一緒に並んで話せるようになったのも、アンタのおかげよギントキ。本当にありがとうね。そのことについては感謝してる」
「……俺は何もやっちゃいねぇよ。ただ発破かけただけだ。後はテメェらが掴んだ結果だ。もう手放すんじゃねえぞ」
「……えぇ。何があろうとも、私は妹を……フランを手放す気は無いわ。姉として当然じゃない」
「お姉様……」
凛とした声に秘められた決意。かつて互いを想い合いながらもすれ違い続けた姉妹。そんな二人はもう、互いの気持ちをぷつけあい、気付くことが出来たのだ。決定的に決裂していた時とは違い、今の彼女達は大丈夫だろう。
フランの狂気も治まり、こうして並んで歩く姿など、彼女達は想像する事が出来ただろうか。
「ま、それだけ言えりゃ十分だな。家族は家族で一緒が一番だからな」
「……ギン兄様も、大切な家族だよ。だから一緒」
抱き着く力を強くしながら、フランは懇願するように言う。
姉であるレミリアや館の住人はもちろんのこと、彼女にとって坂田銀時はとても大きな存在となっていた。それこそ家族同然ーーいや、ある意味では家族以上に想っているのかもしれない。だからこそ、フランは銀時のことを『ギン兄様』と呼ぶ。兄とつけることで、自分の家族であることを認識しようとしている。
「……ああ、そうだな」
それが分かってるからこそ、彼はそれ以上何も言わずに、頭を優しく撫でるのだった。
フランは安心しきったようにその身を委ねる。
「……本当、面白いわね。侍って」
「お前達もなかなかに面白いけどな。見ていて飽きなくてちょうどいい」
「それはありがたい言葉だな。これからよろしく頼むぞ、ギントキ」
「……あぁ。できる限りな」
そんな会話をしていた所で、彼らは博麗神社へとたどり着いたのだが、
「……言い訳を聞こうか、銀時」
長い階段を登り終えた先に待ち構えていたのは、般若のような形相を浮かべている霊夢だった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第十五訓 確認しないと誤解を招くから気をつけろ
次回は宴です!!!