銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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お久しぶりです!


第百六十八訓 守ると救うの違い

「私が、気を張っている、ですって?」

 

 聖白蓮にとって、銀時と桂から発せられたその言葉は不名誉以外に他ならなかった。彼女は彼女なりに信念を持ってこの戦いに身を投じた。その理想はとても大きく、本物だ。妖怪と人間の完全なる平等。その実現のために、目覚めた彼女はこれから尽力しようとしていたのだ。

 それを、銀時と桂は『気を張っている』と称した。つまり、それはあくまで理想であり、実現するために背伸びしているだけだと突き放されたのだ。

 白蓮は本気だったのだ。だからこそ、その言葉が心に突き刺さる。

 

「テメェ一人が何かをしたって、妖怪は結局人間を食い続け、人間は妖怪を倒し続ける。中には共存したり、妖怪が人間に、人間が妖怪に愛を抱いたりすることだってあるだろうな」

「だが、彼らは自覚している。人間と妖怪の間には、絶対的な違いがあるということを。それでも尚、歩み寄ろうと必死になっている者もいるだろう」

「だからこそ、平等なんかなくたっていいんだよ。本当に大切なのは、互いに互いを思いやり、その為に何かをしようとする心構えじゃねえのか?」

「っ!!」

 

 白蓮は銀時の言葉にハッとさせられる。

 それは恐らく、相手を思いやる気持ち。或いはその為に何かをしたいという気持ち。

 だからこそ、白蓮はそのために、人間も妖怪も分け隔てなく、完全なる平等に向けて力を発揮しようと思っていた。

 

「なら尚のこと、私のやろうとしていることに口を出さないでください!!」

 

 大魔法『魔神復誦』。

 白蓮の周囲に浮いている四つのビットより、網目状の弾幕が張り巡らされる。それを銀時達が避けていると、今度は白蓮本人より大きな弾が放たれた。

 

「そういうわけにもいかねぇんだ。俺はただ、勘違いしてる大馬鹿野郎に説教してぇだけなんだからな」

「気があうな、銀時。俺もそう思っていたところだ」

「テメェと気が合ったところで別に嬉しかねぇけどな、ヅラ」

「ヅラじゃない、桂だ!!」

 

 銀時と桂は、迫り来る弾幕を刀で斬り伏せる。しかし、その先に待ち構えていたのは、白蓮の周りに浮いているビットによるビーム攻撃。

 銀時達はこれらを俊敏な動きで避け続ける。

 

 「私は、多くの者達を救いたいと思いました。そして、平等な世界を作ることが出来れば救えると思ったんです。だから……!」

 「だから、その前提から間違ってるんだっての」

 「!!」

 

 白蓮は、自身の考えに迷いが生じていた。

 自分の考えは、前提からして間違えていた? 

 なら、もしそうなのだとしたら一体何が正しいのだろうか。

 

 「人ってのは、救うもんじゃねえ。守るもんなんだよ……」

 「まも、る?」

 「大切なやつが出来た時、そいつを決して手離さないように守るもんだ。救うってのは、人や妖怪には出来ねぇことだ。だから、テメェがやるべきなのは、テメェのことを大切に思ってるやつらを……テメェらが大切だと思う奴らを、守る事だ」

 

 聖白蓮にもまた、大切なものがいる。封印された彼女を解き放つ為に動いてくれた、大切な人々。そんな彼女達を、白蓮は『護りたい』と思った。

 彼女達は救いを求めているわけではない。側にいることを望んでいるのだ。

 

 「そもそも『救う』とは行えるものではない。誰かが行動した結果、勝手に救われるものだからな。人間と妖怪を完全に平等にし、救おうとする理想そのものが破綻するというわけだな」

 

桂の言葉に、白蓮はハッとさせられる。

  今まで自分が行ってきたことがいかに浅はかであったのか。

 『救う』とは、同じ立場の人間が行うものではない。そもそも、人間と妖怪の完全なる平等を謳う前から、彼らはそもそも等しく命を授かっているのだ。改めて平等にする意味もないし、そもそも平等でないからこそ成り立っている。

 故に、聖白蓮がするべきだったのは……。

 

 「……どうやら、寝起きで調子が悪いらしいですね。そんな簡単なことにも気付かずに、惑わされっぱなしとは私らしくもありませんね……」

 

 聖白蓮は、銀時と桂に抵抗することをやめた。即ち、自分自身の過ちを認めたということになったのだった……。

 

 

 

銀魂×東方project

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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