銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百六十九訓 怪しい動きを見せる奴は大抵何かしら企んでいる

 封獣ぬえは、今回の異変においてただ単純に周りを掻き乱すだけの役回りしかしていなかった。間欠泉の影響で地上に散らばったと思われていた飛倉の破片も、実は彼女の悪戯心が引き起こしただけの迷惑行為でしかなかったのである。また、霊夢達がUFOとして認識していた物体についても、彼女が見せていたまやかし。つまり、ぬえがある程度自身の行動を抑えていたならば、今回の一件はここまでの騒ぎになることはなかったということになる。

 そのことに気付いた彼女は、少しばかり後悔していた。元々彼女は、『こんな行動をとったら相手は困るだろうな』程度にしか思っていなかったのだ。それに加えて、彼女は人間という存在に対して嫌悪に近い感情を抱いていた。故に、妖怪が人間を復活させようとしている状況は、彼女にとって気に喰わなかったのもまた事実。

 だが、彼女は途中で気付かされたのだ。己の行いによって、結果的に己の首を絞めることになっていたということを。聖白蓮は、復活させるべき人間であったということを。それらすべてを、ぬえがただ邪魔していただけであったということを。

 

「私は、なんてことをしてしまったんだ……けど……人間は……醜く、嫌いだ……」

 

 根本にあるのは、人間に対する嫌悪と憎悪。

 しかし、自分達の為に動いてくれると語る白蓮に対しては、恩義を返したいという気持ちを抱いているのもまた事実。彼女は、自身の考えの間で揺らいでいたのだ。

 そんなところに。

 

「なら、存分に人間共を駆逐してみてはどうじゃ?」

「……貴方は?」

 

 ぬえの前に現れた一人の女性。

 彼女はぬえに対して、こう話を持ちかける。

 

「妾はこの地を支配しようと企てておる。しかし、下等生物の猿共に邪魔され続けて、立て続けに失敗しておるのじゃ。いい加減妾としても人間共に一泡吹かせてやりたいと思うておるのじゃ」

「下等生物の、猿共……」

「そうじゃ。人間など、群れを成して戯れる者共に過ぎぬ。平和に酔い痴れ、歩みを進めることを忘れた愚か者共に、妾は一矢報いたいと思うておるのじゃ」

 

 その者の言葉がどこまで本当なのか、ぬえには知る由もない。

 しかし、一つだけ言えることがあるとすれば。

 

 この女性の言葉は、間違いなく意思があるということだ

 

「しかし、妾はまだこの世界に来て日が浅い。この地における能力や戦い方について、まだ知らぬことも多いのじゃ。じゃが、其方はこの世界の住人。弾幕ごっこについても知識があろう。能力というものの特性についても理解しておろう。其方と妾で手を組めば、この幻想郷を支配出来るやもしれぬ。人間共を、この地から追い払えるかもしれぬと聞いたら、其方は協力するかえ……?」

「人間共を、幻想郷から追い払う……」

 

 ぬえにとって、人間という存在は邪魔でしかない。

 嫌悪する相手であるならば、その存在を取り払うこともよいのではないだろうか。

 ぬえには、そんな考えが宿り始めた。

 

「準備する期間がとにかく必要じゃ。今は賛同する者の数が惜しい。機が熟したら妾としては戦争を始めるつもりじゃ。どうじゃ、其方も来てはくれぬか?」

「私は……」

 

 ぬえは考える。

 人間の中には、白蓮みたいに妖怪の為に動こうとする人間もいる。

 そして何より、今回の異変を見ていく上で、人間の中には勇敢な者がいることも知ってしまった。

 

「人間が醜いのではないか? 嫌悪しているのではないか? 妾とて同じじゃ。この地を支配するからこそ、その力を存分に発揮出来るというものではないか?」

「……っ」

 

 ぬえの意思は固まった。

 目の前に居る女性の言葉が、彼女にとって最早甘美なる誘い文句にしか聞こえない。

 

「……乗ったよ、貴方の話。せっかくの戦争だ。派手におっぱじめる為の準備、私にもさせて欲しいね」

「よかろう。そう、その表情じゃ。悪戯を思いついた小童のような無邪気な表情」

「……そうか。私、今笑っているんだね」

「そうじゃ。妾も、笑っておろう?」

「お互い様、だね」

「その通りじゃ」

 

 女性とぬえは、互いに笑い合う。

 これから始まる盛大な計画を実行へと移す為に。

 

「ところで、名前はなんていうんだ? 私は封獣ぬえ。貴方は?」

「妾か? 妾の名前は……」

 

 ぬえの自己紹介の後、女性は自分の名前を口にする。

 

「妾の名前は、華陀。この幻想郷を支配する者の名前じゃ」

 

 

「……気に喰わないですわね。実に反吐が出るお言葉ですわ」

 

 二人のやり取りを、八雲紫は憎悪の眼差しで見つめていた。

 

「幻想郷を支配するですって? この幻想郷を支配出来る者など、誰もいませんわ。そもそも、幻想郷がどういう場所なのかを知りもしないであの女狐め……幻想郷の住人を誑かして、そのような世迷言を実行しようだなんて……許せない」

 

 彼女は、幻想郷を愛している。

 恐らく、この地に根を伸ばしている者の中で、誰よりも。

 そんな彼女だからこそ、華陀の言葉を憎み、彼女の行動を蔑み、潰そうと考えていた。

 

「精々踊りなさい……いずれ貴女は、幻想郷にも見放されますわ」

 

 彼女は戦う決意を抱く。

 

 ――だが、いずれ訪れる最大の異変は、彼女の想像をも遥かに上回るかもしれない。

 

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

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第百六十九訓 怪しい動きを見せる奴は大抵何かしら企んでいる

 




今回の話は、いずれ訪れる話への伏線回みたいなものです。
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