「ねぇ、ギン兄様。一体今回ってどんな異変に巻き込まれたの?」
白蓮と話した後、フランが銀時に対してそう尋ねていた。ここ最近、フランは異変解決の時現場にいないことの方が多い。それはつまり、銀時が戦っている時にその場にいないということを指すのだ。純粋な疑問もそこには混ざっていることだろうが、それ以上に彼女は、坂田銀時のことを心配している。
もちろん、フランは銀時の言う言葉ならば基本的に無条件で信じられる。それだけ彼女は坂田銀時に信頼を預けていると言っても過言ではない。しかし彼女にとって、銀時は居場所そのものなのだ。心配するなという方が無理ある事態も多いだろう。
「そうだな。今回は異変ってよりは宝探しメインだったからな……結局どれも棒に振っちまったようなもんだけどな……」
銀時は頭をガシガシと掻きながら言う。
そう。なにせ今回の異変、別に誰かに迷惑をかけたわけではない。単に幻想郷に散らばってしまった破片を集め、一人の女性を復活させようとしただけだ。その過程で目撃された船が『宝船』と称されて、人々の間で噂として語り継がれたのみ。
「宝探し!? なんだか面白そうだなぁ……」
「見つかれば、それ売り払って溜まってる家賃を払えたんだけどな……」
「私……お姉様に聞いてみるよ? ギン兄様が困ってるから援助出来ないかなって……」
「いやそれはしなくていい。シスコン吸血鬼に命取られる」
妹にたかる虫を追い払う為にレミリアが行動開始しかねない。第一、いい大人が家賃払えないが為に幼女からお金を受け取る図というのは、なかなかに犯罪的な光景である(実年齢でいえば銀時の方が下なのだが)。
と、そんな感じでフランと銀時が話していた時だった。
「そーっと……」
何処からか、声がする。女の子の声だ。その声は銀時にもフランにも届いている。というより、二人の背後より聞こえている気がしている。
銀時とフランがその声に気付いてゆっくりと後ろを振り向く。
「ばぁ……きゃあっ!」
ポスンッ。
どうやら近付いてきた人物は二人を驚かせようとしていたらしく、そのタイミングで銀時達が振り向いたものだから、逆に驚かされてしまった模様。そのまま尻餅をついてしまうという失態。
「ん? お前はあの時の驚かせ娘か……」
「うぅ……また失敗してしまいました……」
少女──多々良小傘は、二人を驚かせるのに失敗し、少し目に涙を溜める。ウルウルな瞳である。
そんな彼女を見てフランが一言。
「ギン兄様…………もしかして、『また』?」
「なんでそこ強調してんの。またって何? まるで銀さんがいつも何かやらかしてるようにしか聞こえないよ? 銀さん何もしてねぇよ?」
「…………はぁ」
フランは銀時の腕をギュッと抱きしめる。そして小傘を威嚇するように見つめていた。
「ひっ……!」
その様子が怖かったのか、小傘はさらに怖がっている。そもそも驚かせようとしていた側がここまでコテンパンにされていいものなのだろうか。
「おいフラン。何威嚇してんだ」
「わぷっ」
銀時がフランの頭を少し乱暴に撫でると、すぐにフランの目から鋭さが消えた。純粋に銀時に甘えるように、身体をスリスリと擦り寄せている。そんな光景を見ていた小傘が一言。
「いいなぁ……っ!?」
小傘は、自分が思わずこぼした一言に対して驚いていた。今小傘は、銀時に甘えるフランを見て、『羨ましい』と思ってしまったのだ。それが指す意味は、つまり──。
「どしたぁ? 顔真っ赤だぞ?」
銀時に指摘されて、小傘は自分の頬を両手で触ってみる。
熱くなっていた。それはもう自分の体温がどんどん上昇していることが分かるほどに。それこそ身体から湯気が出るのではないかと思われるくらいに。
「あ、あわわわわわ……し、失礼します!」
あまりの照れっぷりに、小傘逃走。戦略的撤退というか、ただの戦線離脱と言うべきか。
しかし、今の光景で確実にフランは察する。
やはり、坂田銀時は今回の異変を通じてまたライバルを作ってしまったのだろう、と。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百七十三訓 驚かせようとすると逆に驚かされてしまうこともあるよね
小傘がただただ可愛い回でした…!