幻想郷は妖怪の山。そこに住む一人の少女は、携帯電話と思われる機械をじっと眺めていた。茶色のロングヘアーを紫色のリボンでツインテールにし、紫色の天狗帽子を被っている。襟に紫色のフリルがついた薄ピンク色のブラウスに黒色のネクタイ。黒と紫の市松模様が描かれたミニスカートを着用し、靴下は黒のハイソックス。
少女の名前は姫海棠はたて。文と同じく幻想郷で新聞を発行している少女である。
しかし、彼女の発行する新聞は文のものよりも若干ウケがあまりよろしくない。理由は前回文が語った通り、はたての取材方法にある。彼女は基本的に能力があるが故に外での取材を行わない。
『念写をする程度の能力』。
彼女が撮影しているものは、すべて念写で行われたものだ。ただしそれは予測等の類ではなく、実際に起きたことを遠くにいながら撮影することの出来る能力。使い方によっては相当に便利な能力であることに間違い無いが、あくまで『既に起こった事』しか撮影出来ない。そして何より、念写で写真を収めてしまう彼女は聞き込み取材を行うことがあまりない。要するに、ネタとしての鮮度があまりないということだ。
「文の新聞……日に日に発行部数が上がっているのよねー……」
画面を見つめてゴロゴロしながら、はたてはつまらなそうに呟く。
事実、ここ最近の文々。新聞の売れ行きは好調とのこと。それは恐らく、文が何かしらの特ダネを掴んでいるからということは、当然はたても認識している。そして大体新聞に書かれている人物が固定されているのも理解していた。
「坂田銀時……紅魔館での異変で突如現れた不思議な外来人……以降、スキマ妖怪である八雲紫が彼の存在を気に入り、坂田銀時に関係する人達が幻想郷に出入りするようになった……それ以降も彼らは度々起こる異変に関わって、博麗の巫女と魔法使いと共に異変解決へと導いている……こんな特ダネのすぐ近くに文はいるなんて卑怯だわー」
確かに、射命丸文の新聞は、銀時が関係するようになってから発行部数が伸びている。しかしそれは、はたての新聞が伸び悩んでいる理由にはなっていないことを、彼女はまだ気付いていない。
「はぁ……特ダネでも写ってくれないかなー。まだ文が写真に納めてないような、とびきりのネタでもあれば最高なんだけどなー」
足をパタパタとさせながら、何か面白いものを期待するかのようにボヤくはたて。とは言っても、外に出ていない彼女の元にそう簡単に何か特ダネのようなものが転がり込んでくることはそうそう起こらない。もちろん流石にはたてだってそのことは理解している。それに、はたては何も完全に家から出ない訳ではない。妖怪の山に関連することについては参加しているし、定期的に外へ出ることもある。新聞を配ることも当然やっているわけだ。ただし、特ダネは待つものではなく、自分から追い求めなければなかなか手に取ることが出来ない。
しかし、時にはチャンスが訪れることもある。
「……ん?」
何気なくパシャりとシャッターを切ったはたて。特に意識した訳ではないが、適当にキーワードを入力して、何かが撮れればいいな程度の気持ちで撮影したのだ。
姫海棠はたての能力である念写は、カメラにキーワードを打ち込めば、その場所に関連する何かが撮影出来るというもの。たとえばそれは人物であったり、建物であったり、何かを指し示すワードであったりと、種類は様々。そんな彼女は、思いついた単語を適当に入力してみたのだ。
それだけのはずなのに。
「なに、これ……こんなものがあそこにあるなんて、びっくりだわー……」
それは恐らく、彼女が見たことのないもの。いや、幻想郷に居る人達の殆どが知らないもののはずだ。何せ今彼女が映し出したものについて、その存在を知るものはほとんどいない。知っている者がいるとすれば、それは当事者となる。
「これは……特ダネの予感ね! しかも文より先を越せるかもしれないわねー!」
今回はより一層気合いを入れるはたて。
カメラに映し出されていたのは、謎の巨大ロボットのような何かだった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百七十七訓 何気なく撮った物が意外な特ダネを呼び寄せることもある