銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第十六訓 人には様々な顔がある

「なんで浮気に気付いた時の奥さんみたいな雰囲気出してんの? え? 俺何かした?」

 

 困惑する銀時。

 禍々しいオーラを放ちながら、霊夢は銀時に歩み寄る。

 

「人には散々心配かけさせておいて、自分はのんびりハーレムライフ送るぜベイビーって? いいご身分だなおい」

「本当に身に覚えがねぇんだけど!?」

「じゃああの記事は何? 完全にスキャンダル撮影されてるじゃない? え?」

 

 霊夢がここまで怒りを見せる理由に銀時は辿り着いてしまった。だからこそ彼は、心の中で叫ぶ。

 

「(あのマスゴミぜってぇゆるさねぇえええええええええ!!)」

 

 どう考えても今朝撮られた写真が原因だった。つまりは文のせいだった。

 

「あれは完全にマスゴミの印象操作だ! 俺は悪くねぇ!!」

「そうやって何処ぞの皇子よろしく叫んでおけば許されると思ってるんじゃないでしょうね?」

「そんなつもりで言ってねぇけど!? つか、連絡手段なくて無事伝えられなかったのはわりぃと思ってるけど、俺は無実だからな!? 何もしてねぇからな!?」

「そうだよ! ギン兄様はただ、私のことを優しく包み込んでくれただけだよ! ぎゅーってしてくれたんだよ!」

「ほほう? 優しく包み込んだ、ねぇ……」

「フラァアアアアアン! 間違っちゃいないけど火に油注いじまってるぅううううう!!」

 

 大凡フランの言う通りではあるものの、今の霊夢に伝えたところで曲解してしまう。恐らく今、彼女の脳内ではとんでもない誤解が巡っていることだろう。

 

「とりあえず落ち着きなさいよ、博麗の巫女。せっかくの宴が台無しになるであろう?」

 

 前に出てきたのは、カリスマ(笑)オーラを出しているレミリアだった。

 

「……なんか今猛烈に馬鹿にされた気がするんだが」

「気のせいかと、お嬢様……」

 

 虚空に向かって呟いたレミリアに対して、咲夜が冷静に対応した。

 

「レミリアね。今日はよくきてくれたわ」

「今回の一件では迷惑をかけたからな……申し訳ないと思っているんだ」

 

 今回の宴は、場所こそ博麗神社で行われるが、食材や酒等は紅魔館によって準備されたものがほとんどである。迷惑をかけたことを詫びる目的も兼ねている為、このような形を取っているのだ。

 

「開始前にひと暴れしてしまっては、せっかくの宴も吹き飛んでしまうだろう? それにギントキは何もしてないよ。それは私が保証する。もし何かしてたら、今頃首一つでここに来てたところだ」

「…………それもそうね。悪かったわね、銀時」

「あ、あぁ……」

 

 わりとレミリアの一言が冗談に聞こえず、思わず震え上がってしまう銀時なのであった。

 

「もう既に人は来てるわ。あんた達で最後よ。中に入りなさい」

「そうさせてもらうよ。フラン、ギントキ、みんな。行くわよ」

「はーいっ」

「おう」

 

 霊夢、レミリアに続く形で、銀時達も中に入ったのであった。

 こうして宴が始まるのだが、幻想郷の宴、常識に囚われない人達が多い中、何も起きないはずがなく……。

 

 ※

 

「表出ろクソアマァアアアアアアアアア!! よくもあん時は人の意見聞かずに落としやがったなこのやろぉおおおおおおおお!!」

 

 宴が始まってほぼすぐのこと。

 酒を飲みつつ辺りを見渡した銀時は、何食わぬ顔で酒を嗜んでいる八雲紫を見つけ、早速喧嘩を売っていた。

 

「あらあら、血気盛んな事。とても良い事だと思いますわよ?」

「胡散臭いのもいい加減にしろよ? 下手したらあのまま妖怪に喰われて人生ジエンドになってた可能性すらあるんだからな!? ってか俺を元の世界に帰しやがれ!!」

「紫様に向かってその態度はなんだ? なってないな侍」

 

 銀時と紫の間に入ったのは、九本の尻尾を持つ女性ーー八雲藍。彼女は九尾の狐である。所謂、妖怪。

 

「藍様、この方が紫様が言っていた、坂田銀時さんです?」

 

 藍の後ろからひょこっと顔を出したのは、赤と白のワンピースを着て、猫耳を生やした少女、橙だ。

 

「あぁ。そして紫様に仇為す愚か者だ」

「そりゃ先に仕掛けてきたのはあんたの主人だからな!? こいつのせいで俺は危ねぇ目に遭ってんだから、怒って当然だろうが!!」

「そんなこと有り得ない。大凡、お前が何かやらかしたのだろう。だからこそ紫様も見かねて……」

「依頼されたからね? 依頼してきたくせに有無も言わさずいきなりスキマに落としやがったからね? 俺何も悪くないからね?」

「まぁまぁ、銀時さんも藍もそこまでになさいな。ワインでも飲んで大人しくなさい。橙、貴女は駄目よ」

「えーっ!」

「橙にはまだ早い。酔ってしまって何が起こるか分からないからな……マタタビでも相当酔ってしまうだろう? それに、私の自制心がどれだけ持つか分からなくなる……ハァハァ」

「想像だけでいきなり鼻血タラタラ流しやがったぞこの化け狐。大丈夫かよオイ」

「藍は橙を溺愛してるからね……仕方のない事なのよ」

 

 扇子を開いて口元を隠しつつ、うふふと笑う紫。その後ろでは、自由に食事を頂いている橙と、鼻血を拭きつつ他の人とも会話をする藍の姿があった。

 

「それにしても紫、アンタこの外来人を呼んで異変を解決させようとしたみたいだけど、一体何処でこんな天パー変態侍を引っ掛けてきたのよ? 今日の新聞ではロリコンとしての頭角を現したわよ?」

 

 酒の入った盃を持ちつつ、霊夢が会話に参加する。

 

「おいちょっと待て。天パーと侍は認めるが、誰が変態でロリコンだこのやろう」

「アンタ以外いないでしょうが。なに、アンタまだ無実だとか抜かしやがるわけ?」

「レミリアが誤解解いたよな!? 引きずりすぎだろおい!?」

 

 必死に誤解を解く銀時と、睨みつけるような眼差しを向ける霊夢。

 そんな二人をにこにこ見守る紫の図。

 はっきり言って、異様な空間である。

 

「昔馴染みの知り合いから聞いていたのよ。だから何かあった時は頼ろうと思ってたわけ。これで満足かしら?」

「まぁ、嘘はついてないでしょうし、アンタがそれ以上言わないのも分かってるからそれでいいわ……」

 

 霊夢は紫という女性の性格を掴んでいる。それ故にこれ以上追求したところで何も出てこないだろうと考え、質問を打ち切ったのだった。

 

「それと銀時さん、この度は協力して頂いて感謝致しますわ。お陰様で幻想郷を襲う異変からまた一つ、救われましたわ」

 

 頭を下げつつ、紫は礼の言葉を述べる。そこには胡散臭さなどなく、本心から告げていることが理解出来た。

 銀時は頭を掻き毟りつつ、

 

「まぁ……依頼だからな。これで依頼は成立。達成って所だろ?」

「えぇ。今後もご贔屓にさせて頂きますわ」

「出来ればこれきりにしてもらいてぇところだけどな……」

「あらあら、こちらの世界でも背負ったものはあるのではなくて?」

 

 その言葉に、銀時は考える。

 戦いの中で出会った者達の姿が脳裏に浮かぶ。

 共に戦った霊夢や魔理沙。

 孤独に怯えていたフランに、妹とすれ違い続けたレミリア。

 そんな彼女達の元に仕える、美鈴や咲夜。

 紅魔館の主人と友人関係となっているパチュリー。

 図書館でパチュリーに仕える小悪魔。

 銀時が来た時に最初に会った妖怪の少女、ルーミア。

 そして、バカなチルノ。

 

「なんとなく予想ついてたけど、なんか理不尽なところでバカって言われた気がするぞ!!!」

「お、落ち着いてチルノちゃん……」

 

 遠くでチルノや大妖精の声が聞こえた気がするが、今回はスルーする物とする。

 とにかく、銀時はこの世界で様々な人物と出会い、交友を深めた。時間で言えば全然経過していないが、それでも何かしらの形で関わったのは事実である。

 

「そいつは勿論ある。こっちで背負ったもんも忘れねぇよ。ただ、歌舞伎町には歌舞伎町で、俺が背負った馬鹿共がいるからな……其奴らのことも大切なんだよ。だからいつまでもこっちに居続けるわけにゃいかねぇ」

「そう……貴方、やはり優しいのね」

「そんなんじゃねえよ。俺はただ、守りてぇもん守るだけだ。ただそんだけだ。テメェと同じだよ、八雲紫」

 

 銀時は、手の届く範囲を守ろうとする。紫もまた、自身の世界を守ろうとする。そこに違いなど存在しない。

 

「銀時……」

 

 思わず、霊夢は彼の名前を呟く。

 その時の顔が、とても優しい表情を浮かべていたから。

 優しい顔、間抜けな顔、真剣な顔、必死な顔。

 たった数時間しか居なかったのに、その間に霊夢は銀時の様々な顔を見ることが出来た。それは魔理沙も同様だろう。

 そんな中で、純粋に、変な心を抜きにして、坂田銀時という人物の人柄に、霊夢は心打たれていた。

 惚れた腫れたの問題ではない。恋愛的な意味でも決してないのだろう。

 しかし、今まで出会ったことのないタイプの中に、自分と共通する何かを持っていて、それなのに、絶対に横に並び立つことのない男。むしろ、前に立って誰かを先導するような、そんな背中を持つ侍。それが坂田銀時。

 

「……この宴が終わったら、貴方を元の世界に返します。ただ、これは私のエゴなのだけど……どうかまた、幻想郷に足を踏み入れては頂けないかしら?」

 

 深々と頭を下げる紫。その声色は、まるで懇願するかのよう、心から、銀時が来ることを望んでいるようなものだった。

 銀時はしばらく黙り、そして。

 

「テメェが来る方法教えてくれるってんなら、構いやしねぇよ。それに、約束もあるからな」

「約束?」

「なんでもねぇよ……こっちの話だ」

 

 そう言いつつ、銀時は目線をとあるところに向ける。

 そこには、姉妹並んで楽しそうに話すレミリアとフランの姿があった。

 

「……そう。本当に優しいのね、ありがとう……幻想郷の管理者として、感謝するわ」

 

 そう告げた時の紫の顔は、とても魅力的だった。魅惑で、それでいて純粋な少女としての感情も含まれているような、穢れのない笑顔。

 暫し銀時は見惚れて、その気恥ずかしさを隠す為に、視線をずらして髪の毛をがりがりと掻き毟るのだった。

 

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

第十六訓 人には様々な顔がある

 




宴はまだまだ続きますー。
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