第百八十二訓 何か行動を起こす時はまず仲間を集めることが先決
幻想郷某所にて。
二人の女性が声を潜めて話していた。名前はそれぞれ、封獣ぬえと華陀。共に目的を持っている二人だった。彼女達は今、幻想郷を乗っ取るための計画を企てている。華陀は幻想郷という世界を支配する為。ぬえは、自身が嫌悪している人間を追い出す為。そしてそんな中、彼女達はとある物に目を向けていた。
「幻想郷を支配するのに、人手が欲しいと思うておったが、よもやそんな近場におったとはなぁ……此度の戦いは妾達に軍配が上がっているのやもしれぬ」
「協力してくれるかどうかは私達次第って所だけどね。だけど、あの子達の力を借りれば、きっと今回の計画も上手くいく」
「お主のおかげでこの世界の何たるかも理解出来たところじゃ。お主はお主なりの伝手を頼るが良い。妾は妾で、妖怪共の力を集めることに努める」
「私達二人だけではどうすることも出来ない。だけど、幻想郷に居る妖怪達の力を借りれば……きっと上手くいく筈だ」
「そうじゃのう。より多くの者共と結束しなければならぬ。ぬかるではないぞ」
「私と貴方は対等関係さ。上下関係はないのだから、指図は受けない」
「そうであったな。すまない」
「分かってくれればそれでいい」
ぬえと華陀はそれぞれの目的の為に動き始める。
これは、後に幻想郷を揺るがす大きな異変の、序章に過ぎない。
※
「幽々子様。お食事の用意が出来ました」
幻想郷は冥界。そこに存在する白玉楼。冥界の番人たる西行寺幽々子は、剣術指南役兼庭師である魂魄妖夢の作った料理に舌鼓を打とうとしている所だった。
幽々子はよく食べる。雑に十人前は平らげてしまうのではないかと思われる程の大食いだ。白玉楼における経費の使い道のほとんどは、幽々子の食事代に潰えてしまう。最近の妖夢の悩みの種の一つだった。
「いつも美味しい料理をありがとう」
「幽々子様の為ですから……」
笑顔でそう言う妖夢だが、内心大変なのは否めないだろう。
兎にも角にも、そうしていつものように平和なひと時が流れようとしていた。
「今日の料理も腕によりをかけました。美味しく召し上がってください」
「そうさせてもらうわ。貴女もおかけになって食べないの?」
何処かへ行こうとする妖夢に対して、幽々子が呼び止める。
元々、食事の時には二人で食べるのがここの習慣だった。
故に、今妖夢がとろうとしている行動が、彼女にとって珍しいものだったのだ。
「先に厠へ……すぐに戻ります。ですが先に食事を初めて頂いて構いませんよ。幽々子様の食事スピードを考えれば、後からでも追いつけると思いますので」
「そう……分かったわ。妖夢の作ってくれた美味しい料理ですもの。でも私、貴女と食べるこの時間も味わいたいと思っているから、なるべく早く帰ってきなさいね」
「厠行くだけですので早めも何もないと思いますが……待たせてしまうのも申し訳ありませんので、失礼させていただきます」
「えぇ。いってらっしゃい」
幽々子に断りを入れると、妖夢は部屋から出る。そこには、先程まで見せていた笑顔は消え、真剣な面持ちで前を見る妖夢が居た。
幽々子が居る部屋を後にし、鳥居の前までしばらく歩みを進める妖夢。そうして進んだ後、立ち止まって、こう告げた。
「先程から気配がしました。貴方は何者ですか?」
二本の剣に手を添えて、いつでも抜刀出来るようにしながら尋ねる。
彼女の目は、前に居る侵入者を捉えていた。
腰に差した剣は二本。相手も同じく二刀使いだった。
「だんまりですか……この場所が何処であるか分かっていての狼藉か?」
「……」
番傘を被っている為に、妖夢からは相手の顔が窺えない。
体格からして男であることは予想がつくものの、それ以上の情報が入ってこないのだ。
だが、彼女はなんとなく感じ取る。
――相手がただ者ではない、ということを。
「この地を踏まず、今すぐにでも立ち去るというのであれば手出しはしません。ですが、抵抗するというのであれば……」
彼女は二本の剣を鞘から引き抜き、剣先を相手に見せ、
「この場で貴方を斬り伏せます」
彼女自身が持ち得る限りの殺気を、相手にぶつけた。
だが、相手はそれだけでは動じない。それどころか、妖夢と同じように、腰に差した二本の剣を引き抜き、同様に剣先を見せつけたのだ。
まるで妖夢の真似をするかのように。
「……不愉快ですね。貴方に同じような動きをされると、私としても腹が立ちます。よろしいです。これは宣戦布告とみなします。覚悟はよろしいですね?」
男は何も答えない。
だが、元より妖夢は答えを聞くつもりがなかった。
「あったとしてもなかったとしても、問答無用で斬り倒します――!!」
そして妖夢は、男に向かって剣を振るった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百八十二訓 何か行動を起こす時はまず仲間を集めることが先決