「はぁっ!!」
先手を取ったのは妖夢だった。彼女は右手に握った剣を振り下ろし、相手の首を狙う。だがその攻撃は相手の剣により弾かれる。
もちろんそれは妖夢の読み通り。すかさず左手の剣を振り上げて相手の息の根を確実に止めようとする。
が、それも相手によっていなされる。
「一体何が目的ですか? この地に何の用があるというのですか?」
剣と剣をぶつけ合いながら、妖夢は尋ねる。しかし男はその質問に答えようとしない。
「だんまりですか……ならば、力づくで吐かせるのみです!!」
追い払うことこそ最大の目的だが、それ以上に男が来た理由を知りたかった妖夢。そんな彼女を挑発するように、何も言わずただ剣を振るっている男。
だが、何度か打ち合っているうちに妖夢は感じ取る。
目の前の男が、剣の手練れであるということを。
「天晴れです。ならば……!」
剣のみの戦いではいつまで続くのかわからないと判断した妖夢は、次なる攻撃手段を用いることにした。
「幽鬼剣『妖童餓鬼の断食』」
縦横無尽に駆け巡り、斬撃を繰り出していく。その軌道からは無数の弾が繰り出される、
スペルカードによる弾幕攻撃。
能力を持っていなければ並大抵の人間には避けることが難しいもの。当然、剣のみで戦う男には避けるのが難しいものと思われた。
だが。
「……っ!!」
男も同じように縦横無尽に駆け巡り、斬撃を放つ。そしてその軌道からは、やはり妖夢と同じように弾幕が放たれた。
「なっ……!?」
妖夢にとって、これは二つの意味で驚くべきことだった。一点目は、相手も同じように能力を持っていたこと。もう一点は。
「今の太刀筋……私と、同じ……?」
繰り出された技は、妖夢が放った物と同じ……いや、厳密にいうと、妖夢のものよりもより洗練されている。
「……私の技を真似している?」
妖夢は次なる技を放つ。
「人符『現世斬』」
一度目を閉じ、そして大きく目を見開いて、剣を構えたまま突進する。そのまま二対の刃を以て相手の身体を斬り裂く攻撃だ。
しかし、
「なに……!?」
寸分違わず、同じ構えを取って、同じように突進してきたのだ。
いや、妖夢がそうするよりも先に、男は妖夢と同じ動きをした。
「くっ……!」
動きに気を取られた妖夢は、剣を握る力が鈍ってしまう。
放たれた技が同じである時、その技の破壊力を以て勝敗が決まる。妖夢が力を抜いてしまったことはもちろん関係しているだろうが、それ以上に、相手の攻撃の方が一枚上手だった。
ガキン! という音と共に、妖夢の剣が弾かれる。それはそのまま宙を舞い、妖夢から見て後ろの方へといき、そのまま地面に突き刺さった。
当然、妖夢は攻撃手段を失う。次なる攻撃を繰り出すには剣を取りに行かなければならない。それを目の前の男が許すならば、だが。
「今の太刀筋……真似ていたわけではなく、私の技を知っていた……その上、私の技の更に上をいく……まさか、貴方は……」
妖夢はこの段階であることに気付く。
今こうして目の前にいるこの男は。
剣を振るい、その剣を鞘に収めたこの男の正体は──。
「強くなったな。だが、まだまだ空気を斬れるようにはなっていないようだ……雨は斬れるようになったといったところじゃな」
男は番傘を取り、その正体を現す。
その男の顔を見て、妖夢は驚愕の表情を浮かべた。
「な、何故、貴方が……」
「儂にはここに来た目的がある。その為にもお主らの力が必要だと判断した。だが、久しぶりに舞い降りた地であったが故、少々はしゃぎ過ぎたようじゃ。柄にもなく、弟子にこのような所を見せてしまうとはのぅ……」
まるで幼い子供を慈愛の眼差しで見つめるように、男は語る。
この男のことを、妙齢の男性のことを、厳格な剣客のことを、魂魄妖夢は嫌という程知っている。
知っているが故に、彼女は感情が抑えきれなくなっていた。
「……ふざけないでください! 今更帰ってきて、どういう風の吹き回しですか!?」
溢れる想いは叫びと化し。
男にぶつけられるその想い。
そして妖夢は、その名前を口にする。
「……師匠!!」
男の名前は魂魄妖忌。
妖夢の師匠であり──彼女にとって大切な存在だった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百八十三訓 自分と同じような技を使ってくるやつには気をつけろ
というわけで、妖夢の祖父、魂魄妖忌さんの初登場です!!