銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百八十六訓 結束を固めるのはとても重要なこと

「華陀……あのアマ、まだ懲りてなかったってか……」

 

 霊夢より告げられた名前を聞いて、銀時は苛立ちを隠すことなく曝け出す。

 かつて歌舞伎町を我が物にしようとした彼女。そして、幻想郷においても自らの手に収めようと企んだ女狐。しかしその野望はやはり阻まれている。

 

「今回における厄介な点は、敵が人脈を広げようとしている所。注意喚起をしようとしたところで、いくら何でも幻想郷全域の妖怪たちまで幅を広げるのはなかなかに難しいことだわ」

 

 霊夢もまた、今回の異変における犯人のやり口に対してあまり快く思っていない様子だった。

 ただし、将として動こうとしている者のやり方としては正しいことに間違いはない。敵がそのやり方を以て制圧しようと企むのだとすれば、少なからず味方を増やさなければ話にならないからだ。裏切られて殺されるようなことがあったら目も当てられない。そう言う意味では、華陀のやり方は褒められるものといっても過言ではないのかもしれない。

 

「けど、それならばソイツぶっ倒してしまえば解決するんじゃないのか? 見つけて踏んじばってやるぜ!」

「場所が分かるのならば最初からそうしているわよ。それに、紫だって見つけ出しているのに手を出せていない理由があるのよ」

「どういうことですか?」

 

 確かに、敵の名前まで把握している上に、幻想郷の危機ときては、本来ならば八雲紫は黙っていないわけにはいかないのだ。つまり最初に行動していたとしてもおかしくはないということになる。

 だが、今回紫はそれをしていない。

 つまりそこには明確な理由が存在する。

 

「もしかして、既に敵になっている妖怪がいる、アルか?」

「……」

 

 霊夢は何も言葉を返さない。

 しかしそれは無言の肯定。

 確実に、神楽の呟きが正解であったということを意味していた。

 

「安心なさい。恐らく私達の周りに居る妖怪達は向こうにつこうとか思っていない筈だわ。けれど、まだ私達がそんなに会ったことのない妖怪達となると話は変わってくる……それに、今回の異変はそれだけじゃないのよ」

「それだけじゃないって、どういうこと?」

 

 銀時にくっついているフランが尋ねる。

 

「まずは華陀による幻想郷転覆計画。それに便乗……もしくは転覆計画の一環として、既に別の異変が始まりつつあるの」

「もうそんな状態になっているのー?」

 

 驚いたようにこいしが目を見開く。

 霊夢は真剣な表情を崩すことなく、説明を始める。

 

「本来ならば気の弱い筈の妖精や妖怪達が、まるですべてひっくり返ってしまったかのように強気になって人を襲おうとする異変……この二つが同時に起こされているというわけ」

「今回は二つも同時に起きちまっているってわけか……いや、これは華陀の計画の一つなのか……?」

 

 これがもし華陀の計画だとすれば、辻褄が合う部分も存在する。

 彼女は幻想郷において味方がいなかった。そんな彼女が短期間で仲間を集めるにはどうするべきか。自分から話しかけにいった所で、一度異変を起こした上に改心していない彼女だ。そんな彼女に対して信頼する者が現れるとはなかなか考えにくいだろう。

 ならば、新たに異変を企てている者を利用すればよい。

 

「とはいえ、妖怪への人脈を持っていない筈の彼女に、そんなことが出来るのでしょうか?」

「……やはり、思い当たるとすれば今までの異変関連で、関係者を既に見出していたとしか思えないわね……」

 

 それが果たして誰なのか、霊夢達に思い当たる節はない。

 だが、そう考えるのが自然であることに間違いはない。

 

「兎にも角にも、まずは情報が欲しい所だな……幻想郷行って、ちょっくらあの女狐との決着つけてくるとするか」

「ありがとう……味方は少しでも多い方が心強いわ」

「そういうことなら私も行くぜ!」

「フランだってギン兄様のお手伝いするもん!」

「私も手伝うよー。お兄さんのお役に立てるよう頑張る!」

「万事屋として僕達もお供します!」

「私も戦うアル!」

 

 ここに一同の心が結束した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

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