「ふはははははは! 久しい感覚だ。この地は陽の光が当らぬ。まるでかつて儂が根城としていた吉原を思い出させる! 良い感覚じゃ……誠良い心地だ!!」
「その思い出に浸りながら、潔く成仏されるが良い。亡霊である貴様に、行く宛など存在しない」
「そう無碍にするものでもない。お主とていずれは辿ることとなる末路だろう?」
「生憎、儂はまだまだ現役でな!!」
傘と剣がぶつかり合う。
力任せの打ち合いの中には、確かな技術が込められている。妖忌と鳳仙。二人の戦いは、最早介入など許されないほどまでに激化していた。
「付け入る隙が、ない……!?」
故に、妖夢はその場に立ち止まるしかなかった。師匠であり、祖父である妖忌の助力となる為に来たというのに、そもそも間に入ることすら叶わない。
「せめて、隙を伺うことが出来れば……」
妖夢は、目の前で戦う妖忌を見て、まだまだ自分が半人前であることを自覚させられた。その為に剣を習わなくてはいけないことも自覚した。
「師匠……っ」
ポツリとこぼされた一言は、己の得物を打ち合っている彼らの耳に届くことはない。
「はぁあああああああああああ!!」
地面に傘を叩きつけ、辺りに粉塵を撒き散らす。目眩しをするつもりなのだろう。
しかし、妖忌はその粉塵を……。
「……っ!」
斬った。
土煙や粉塵を叩き切り、一気に視界を広げたのだ。
「む……ほほう。空気を切り裂くか」
「修業を重ねた身だ。この剣に斬れぬものなし」
「なれば儂は、貴様が初めて斬り伏せられなかった男ということになるな!!」
「欲の塊である貴様など、儂が一刀の内に沈めてやろうぞ!」
妖忌は、鳳仙の首を狙って剣を振るう。首を
落とす為の斬撃を、鳳仙は傘で振り払う。
しかし、妖忌の剣は一本ではない。
「ふん……っ」
振り払われた反動を使って、二本目の剣を下から上に振り上げる。今度は斬り上げようとしているのだ。
「甘いわ!!」
鳳仙は地面を強く踏み込み、大きな瓦礫を下から上に打ち上げる。妖忌の剣は、瓦礫に阻まれて鳳仙まで届かない。
「どうした? 侍。この程度か?」
鳳仙は相手を挑発するように嘲笑う。
「こちらもここまでの強敵と当たるのは久しいからな。つい打ち合いを楽しんでしまっているというもの」
「随分と余裕ではないか。まだ一太刀も入れられていないというのに」
「それはお互い様であろう? 貴様とてその拳を未だに放てずにいる。責めきれていないことに変わりない」
「だが、斬れた所で儂のこの身は亡霊だ。殺しきれぬぞ?」
「生憎、ここには貴様を消し去る手段は多数存在する。生まれ落ちたのがこの地で不運だったと思うがいい」
「戯言を。強がる必要はないぞ……!」
鳳仙は知らない。
彼の身体が霊体であるならば、この地で戦いを挑むのは本来ならば無謀であるということを。
だがそれでも拮抗出来てしまっているのは、夜王鳳仙の力が他の者よりも絶大であるからだ。並大抵の人間であるならば、数回の打ち合いのうちに決着がついている。
魂魄妖忌を前に亡霊が相手をするというのは本来そういうものだ。
「こう見えても儂は深く考えるのが苦手でな……邪魔なものはすべて斬り伏せるのが一番と考えておる」
「奇遇だな。儂も同じ考えだ。邪魔する者はすべて葬るのみ」
「「貴様は邪魔だ。死んでゆけ!!」
剣と傘の衝突。
辺りには打ち合った結果生じている余波が流れてきており、地面を粉々にしていく。それだけ、この二人の戦いが激しいことを意味していた。
「どうしたのだ? 今一歩決め手にかけているようだが……その自慢の剛腕は飾りか?」
「貴様こそどうしたのだ? 今一歩攻めきれていないようだが……その自慢の刀は飾りか?」
「「これからやるんだよ、間抜け!」」
二人の戦いは、さらに激しさを増していく……。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百八十八訓 力と力のぶつかり合い