「ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ォオオオオオオオ!!!!」
吼える。叫ぶ。猛る。
鳳仙と妖忌の戦いは、もはや他者からの介入を許さない程熾烈な物となっている。剣と傘による激しいぶつかり合い。それでいて、互いに疲弊している様子はない。
主人を守る為に剣術に命を懸けてきた男と、最強部族としてその力を存分に振るう男。たとえ彼らの身体が老化によって蝕まれていようとも、止まることなど決してあり得ない。
「休んでいる暇などないぞォオオオオオオオ!!」
鳳仙は地面を叩き、大量の粉塵と瓦礫を撒き散らす。妖忌は迷うことなくそれらを一閃。
「この程度で儂の動きを止められると思うたか? 間抜けぇ!!」
俊速。
空間を何回も斬り裂き、そこから大量の衝撃波を生み出す。即ち斬撃による弾幕。
「小細工など通用せぬわァアアアアアアアアアア!!」
今まで畳んでいた傘を広げ、鳳仙はそれらの攻撃を未然に防ぐ。そのまま前へと駆け、傘を広げたまま妖忌へと突っ込んでいく。
広げている限り、妖忌がどれだけ弾幕を張り巡らせようとも、鳳仙に当たることはない。
「なれば……っ!!」
妖忌は敢えて真正面からそれを受け止めた。
「「フヌォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」
衝突する。
彼らの有り余る力が、周囲へと溢れ出す。抱えきれなくなった衝撃が、地面を揺らし、斬り裂き、粉砕する。
「っ!!」
そんな中、鳳仙は広げた傘を──そのまま妖忌めがけて投げつけた。
妖忌は躊躇うことなく傘を弾き飛ばす。だが、そんな彼を待ち受けていたのは。
「ふんっ!!!」
「っ!?」
振りかざされていた、鳳仙の拳だった。
周囲に影響を及ぼすほどの剛拳。その直撃を身体に許してしまったとしたら、どれだけ鍛えていたとしても相当なダメージを受けることになるのは明白だ。故に妖忌は、この攻撃をなんとかしなければならない。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオ!!」
腰に差していた鞘を、鳳仙の拳に叩き上げた。これによって鳳仙の攻撃は軌道をそらす。だが、その軌跡に作り上げられた衝撃は、妖忌の身体に容赦なく響く。ただ掠めただけであるというのに、全身の筋肉が泣き喚いた程だった。
「これ程までに儂と拮抗した者はおらぬ。しかもその身一つで儂相手にここまで立っていられるとは……実にこの地は面妖だ」
「お主こそ、儂を前にして斬り伏せられぬとはな。実に興味深い相手だ」
「何、そのようなことなど他愛無い。むしろ儂にとっては、貴様の攻撃など子守唄にも等しい」
「その言葉、そのまま返してしんぜよう。お主のそれは飾りなのかと疑ってしもうたわ」
「弱い狗程よく吼える。如何なる世界でも共通する事柄よの」
「全くだ。自分を強く見せようと躍起になるから困ったものよ」
「「誠、今宵の戦いは久々に楽しめそうじゃ!!!!」」
それぞれの全力をぶつけ合う相手が前に居る。
ただそれだけで、二人の心は踊っているのだ。
叩きつけ、避け、斬り裂き、受け流し、攻撃を止めない。
「よもやその執念深さは怨霊の域にすら達するな。貴様一体何者だ?」
「何、ただのしがない流浪人だ。少し剣術を振るえるのみのな……お主こそ何者だ?」
「何、ただのしがない遊び人だ。少し力が強いのみのな!」
「お互い似たようなものじゃのう」
「まったくじゃ。まだくたばってくれるなよ? 遊び人としてまだ遊び足りないのだからな!」
「そういうお主はここでくたばりやがれ。お主はこの地の平穏を阻害する。亡霊は大人しく消え去るが良い」
「そう言うてくれるな、流浪人。まだこの地に降り立ったばかりでな。消え去る気など毛頭ない」
「そうであったか……なれば……」
妖忌は覚悟を決める。
剣を鞘に収め――居合いにて一閃するつもりだ。
「ほう……一太刀にて沈めようというのか。良いだろう。儂も本気でいくとしよう」
それを受け、鳳仙もまた、握り拳に力を籠める。
先程までの争いは嘘のように止まり、辺りに静けさが訪れる。
それが嵐の前の静けさであることは明白だ。
「儂を止めてみよ!! 流浪人!!」
鳳仙は勢いよく突っ込んでいく。
それを受け、妖忌は告げる。
「あぁ。お主を止めてみせようぞ…………儂『ら』の力でな」
「何を……!?」
瞬間。
「……貴方の迷い、断ち斬りました」
音のない瞬速。
目に留まることもなく、妖忌のたった一人の弟子――魂魄妖夢は、刀を静かに収めた。
「きさま……きさまぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」
妖夢の剣――白楼剣の一閃が、鳳仙の身体を斬り裂いたのだった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百九十一訓 迷いを断ち斬る一振りの剣