一人目の気配は湖の中からだった。それを象徴するかのように、湖の中より弾幕が放たれ、銀時達に襲いかかった。
「ほわちゃあああああああああああ!!」
それらを神楽が、傘の中に仕込まれた銃弾で以って打ち消す。弾幕による攻撃が叶わなかったことを悟ったその人物は、湖の中から顔を出した。
そこに居たのは、和服を着た少女だった。肩に付かない程度の縦ロールは、深い青色に染まっている。耳の位置には、『ヒレ』を象ったようなものがついていた。
和服の色は深緑を基調とし、帯の色は紫色。そこに橙色の帯紐を蝶々結びにして結んでいる。
何より、彼女を示す上で最大の点は……。
「人魚……!?」
霊夢が言った。
そう、彼女の下半身は、まるで魚のよう。薄い青色の鱗が目立つ彼女は――人魚そのものだったのだ。
「惜しかったですね。あと少しで当たったと思ったのに……」
いかにも残念そうに、しかし好戦的な口調で彼女は言った。
「どうやら穏便に話し合いで……って雰囲気じゃなさそうだな」
「そりゃそうだろ! 何せこちとらせっかくの機会だってのに、みすみす見逃すわけないじゃん!」
「!?」
銀時の呟きに呼応するように、もう一つの気配が襲い掛かった。
鋭い爪で斬り裂こうと襲い掛かる何か。銀時はそれを木刀で弾き飛ばすと、臨戦態勢をとった。
相手は――狼を象った少女だった。
ストレートの黒髪に狼の耳が生えている。手には先程猛威を振るった鋭い爪があった。
服は赤・白・黒からなる三色のドレス。
「私は今泉影狼」
「そして私はわかさぎ姫です。ここで会ったのも何かの縁です。せっかくなので、私達と遊んでいただけませんか? そして――その身体をゆっくりと頂いてあげます」
影狼とわかさぎ姫。
二体の妖怪が、まさしく銀時達に襲い掛かろうとしていた――。
「ワンコにわかさぎ? 随分とまたアンバランスな組み合わせじゃねえか」
「私はワンコじゃねえ!!」
人の地雷を易々と踏み抜く銀時だった。
挑発に乗った影狼は、銀時を斬り裂こうと爪で襲い掛かる。
しかし、そう易々と決められる程、彼は甘くない。
「ワンパターンな攻撃だな! 防ぐのもそう難しくねぇな!」
「単純な力勝負において、私達妖怪に勝とうなんざ思ってないでしょうねぇ!」
「そうだなぁ。力の差を埋めるにゃ……」
ニヤリ、と口元を歪ませて、それから銀時は言い放つ。
「数で勝れば、問題ねぇだろ?」
「!?」
影狼は後ろを振り向く。
「「ダァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」
今まさしく、木刀を振り下ろそうとしている新八と、番傘を叩きつけようとしている神楽がそこにいた。
「ちぃ……変身『トライアングルファング』!」
彼女はその姿を――完全なる狼へと変える。そして、鋭い牙を以て、相手を噛み千切ろうと試みた。
しかし、三人揃った万事屋の力は、そう簡単に乗り越えられるものではない。
「あめぇ!!」
「遅い!!」
「鈍いアルネ!!!」
三人を狙った筈の影狼の牙だったが、三つの刃に敵わなかった。
そのまま三人の攻撃を受け、後方に吹き飛ばされた。
「ぐぅっ!!」
大木の幹に叩きつけられた影狼は、打ちどころが悪かったのか、そのまま気を失ってしまった。
「……鱗符『逆鱗の大荒波』」
わかさぎ姫からポツリと呟かれた言葉。
その言葉に誘発されるように、無数の弾幕が霊夢や魔理沙を襲う。
それはまるで、氾濫した川のような勢い。勢いを殺すことなく、容赦なく彼女達を呑み込もうとする。
「単調な攻撃ね。元々凶暴な妖怪というわけじゃなさそうね」
「そうみたいだぜ。これなら私達の攻撃で、一捻りに出来そうだぜ」
「かもしれないわね。けど、下手したら人里で戦争勃発するかもしれないんだから、なるべく力は温存しておきなさいよ」
「人のこと言えた義理じゃないぜ!」
「私はいいのよ。どうせ省エネだから」
「へっ、言ってくれるぜ!」
二人は減らず口を叩く余裕すらある。
何故なら、今まで異変解決をしてきた二人にとって――この程度の弾幕なぞ何回も経験したことがあるからだ。
「行くぜ! 弾幕はパワーが大事だぜ!! 恋符『マスタースパーク』!!」
「霊符『夢想封印』」
二人の渾身のスペルカード。
それらが容赦なく、わかさぎ姫を呑み込んだ。
濁流は、弾幕によって制圧される……。
「きゃあああああああああああああああ!!」
その奔流を受けたわかさぎ姫は、そのまま気絶してしまった。
「「……圧倒的すぎない?」」
そんな光景を茫然と眺めていたフランとこいしの二人は、思わずそう呟いてしまったという。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百九十三訓 圧倒的な力の差はなかなか埋められない