銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百九十五訓 承認されることはやはり嬉しいことだ

「よくやった、妖夢……流石は儂の弟子……いや、孫じゃ」

 

 鳳仙との戦いを終えた後、妖忌と妖夢は剣を収め、周囲を警戒していた。確かに彼は成仏させることが出来たが、他の神霊が出る可能性も否定出来なかったからだ。

 

「師匠……師匠は一体何を掴んだのですか?」

 

 永年戻らなかった自分の師匠が、こうして戦いに舞い戻った理由。妖夢としてはどうしてもそれを知りたいと思っていた。

 そんな彼女の質問に、妖忌は答える。

 

「気配がしたのだ……儂はこの地を離れてからというもの、幻想郷に蔓延る悪しき気配を絶ち斬る為に回ってきた。それが終わりなき旅であると理解しつつも、そうして裏からこの地を護ろうとした……そんな時、儂は幻想郷を支配しようと企んでいる人物がいることを掴んだのだ」

「幻想郷を、支配……!?」

「左様。もしそのような事態が本当に引き起こされてしもうたら、幽々子様が愛しているこの地が失われてしまう可能性すらある……儂はそう考え、お主達の前に姿を現したのじゃ」

 

 影から護るのも限度がある。時には前に立ち、その身を呈してでも戦わなければならない時がある。かつて西行寺幽々子に仕えていた者として、その辺りを熟知していたのだ。

 

「……妖夢。此度の戦いを見て、儂は思ったことがある」

「なんでしょう……?」

 

 妖夢の目をじっと見つめながら、妖忌は自身の胸の内を明かした。

 

「やはり儂一人では限度がある。正直なところ、今の戦いもまた、妖夢がいなければどうなっていたことが分からなかった……それだけ、敵の力は強大だった」

「そんな……!?」

 

 妖夢からしてみれば、あの攻撃は自分が完全に視界に入っていなかったから使えた技。鳳仙の目に妖忌しか写っておらず、妖忌が気を逸らしていたからこそ出来た技。

 魂魄妖夢は、未だに半人前のままだということを嫌という程自覚してしまっている。

 

「……確かに、お主はまだ一人前ではない。じゃが、もう半人前でもない。実力は確かに評価されるべきところまで来ておる。じゃからそう卑下することはない」

「師匠……」

 

 その言葉はどれだけ暖かかったことだろう。師匠の口より認められるような発言が聞けたとなれば、弟子としてどれだけ名誉なことだろう。

 

「儂は今ある異変を解決する為……命蓮寺の方へ向かった幽々子様を追いかけようと思う。お主もついてきてくれるか? 妖夢」

「師匠と共に、私も戦うことが出来る……?」

 

 感極まって、妖夢は思わず目から一筋の涙が溢れたことを悟る。彼女が今まで欲して止まなかった、大切な師匠と肩を並べて戦うことが出来る瞬間。それが今、まさしく訪れたのだ。そうなったら、彼女としては掴まずにはいられない。

 

「私でよろしければ、何なりと……!」

「お主じゃなければならぬのだ、妖夢……共に戦って欲しい。幽々子様の愛する幻想郷をお護りする為に」

 

 かつての師匠と弟子。祖父と孫。そんな二人が手を組んで、一つの異変を解決へと導こうとする。そんなお話がまさしく今、繰り広げられようとしていた。

 

 

「それぞれが解決へと奔走しておるようじゃ」

「貴女もなかなか考えたものね……力はなくとも、知略家としては向いているみたい」

「元々妾は博打が好きじゃからなぁ。博打とは相手の心を読み、知略に富んでいなければならぬのじゃ」

「これもまた、一種の博打ってやつなの……?」

「それはどうかのぅ。確かに勝つか負けるかだけで言うなれば、博打であるという捉え方も出来なくはない」

「けど、もし博打だとするのであれば……」

「勝つのは妾達じゃ。これだけの兵力を集められれば、人里など容易く襲うことが出来ようぞ」

「人間を追い出す……この地を妖怪が……私達が支配する……」

「そうじゃ。そうして妾達が幻想郷をより住みやすくするよう改造じゃ」

 

 二人の野望は動き出す。

 いずれ大きな騒動が巻き起こされるだろう…………。

 

 

 

 

 

 

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