命蓮寺の参道。幽々子と紫の目的は、命蓮寺の先にある場所。いずれにせよまずはここを通らなくてはならないために、二人して並んで歩いていた。そんな彼女達の前に現れたのは。
「あれ? こんな時間から参拝客ですかー!?」
近くにいるというのにとても大きく明るい声で話す少女に出会った。
緑青のウェーブがかったショートボブ、瞳の色は緑色。小豆色の少し短めな長袖ワンピースを着用し、白い三つ折りソックスの上に黒い靴を履いている。何より最大の特徴は、茶色に薄く斑点模様の入った大きな垂れ耳と、小さな尻尾。
その他には箒が握られていることから、どうやらこの少女は今参道を掃除していることが伺えた。
「あらあら、元気な子ね。貴女はどちら様?」
幽々子がにこにこしながら尋ねる。
「はい! 私は幽谷響子といいます! 最近命蓮寺に入門させてもらったばかりなのですー!」
最初に会った時と印象が崩れることなく、明るさを欠かさない響子。
「なるほど。この子、山彦みたいですわね」
「ありゃま!? 早速正体バレちゃいましたか!?」
紫が響子の正体を見抜く。彼女は幻想郷の管理人だ。そこに住む者がどのような能力を持っているのか、そして正体は何者なのかを大凡把握する事が出来るのだ。ただし、把握出来るのはあくまで『幻想郷で生まれた者』か『幻想郷に纏わる世界の住人』のみ。銀時の世界から訪れた者や現れた者については、その正体を掴むことは難しいのだという。
「それならば、いくつか試してみようかしら?」
「なんでもばっちこーい、です!」
幽々子は何かしらをするつもりで、響子は身構える。
そして幽々子は。
「やっほー!」
「ヤフー!」
「バカヤロー!」
「なんだとテメー!」
「すいませーん!」
「こちらこそー!」
「ヤマー!」
「カワー!」
「今何時ー!」
「そうね大体ねー!」
「一たす一はー?」
「……………………」
ただの山彦遊びだった。
しかもこんな近距離で、目の前に山彦がいる状態で。
「バリエーションが豊富なのですわね……というか最後計算出来ていないのは気のせいかしら……?」
「いきなり難しい問題出してくるのがいけないんですー!」
「一たす一は算数の常識ですわ……答えは二ですわ……」
「おぉ! 頭いいですね!」
「頭痛がしてきますわね……」
もしかしたら響子は、チルノに並ぶバカなのかもしれない。
閑話休題。
「さて、遊ぶのはこのあたりまでにするとして……この先に何か最近不審なことは起きていないかしら?」
山彦遊びを終え、幽々子は本題に入る。
幻想郷に突如として現れた神霊。現れるとすれば何かしらの理由が存在するはず。大結界異変のような自然現象による幽霊発生とは違い、今回の件は何かしらの力が関わっている。その上で怪しいと思っているのは命蓮寺の方面だと、幽々子は睨んでいた。
「んー……そういえば、墓場にあった死体が動き出したりしていたような気がしますねー。それにしても、何かあったのですか?」
「……そう」
幽々子はなんとなく、響子は今回の一件に関与していないのではないかと考えた。
幽霊の話が出てきていないのは、関わっていない証拠と取れるかもしれない。
が。
「墓場にあった死体が動き出した、ですって?」
幽々子からしてみれば聞き捨てならない出来事が発覚した瞬間だった。
死人が生き返ることは、余程のことがない限りあり得ないことだ。前例がある為一概に否定はできないが、相当な労力がかかる。冥界の番人として幻想郷に携わる魂を見てきている彼女にとって、それは驚くべきことなのだろう。
「その墓場はどちらにあるのかしら?」
「ここを真っ直ぐに抜けたところですー!」
「そう……ありがとう、掃除、頑張ってくださいませ」
「ありがとうございますー!」
紫は例の言葉を響子に告げると、そのまま指示された方向へと歩みを進める。幽々子もまたそのあとを追う。
「……何やら色々と複雑な事が多く起きているそうね」
「今は私達に出来ることをやるのみ、ですわ」
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百訓 叫んだ言葉と同じ言葉が返ってくるとは限らない