命蓮寺より少し進んだところにある墓地。その先にある場所を目指して紫と幽々子は歩みを進めていた。彼女達の考えが正しければ、この先に間違いなく何かがある。進むにつれて神霊の気配も徐々に増えてきていることからもそれが伺える。
「やはり、何者かが神霊を誘っていると考えるのが自然かしら」
「それが偶発的か人為的かはともかく、少なからずこの先にある人物に何かしらの関係があると考えるのが自然ですわ。本来ならばここまで神霊が猛威を振るうことなどあり得ませんもの……」
白玉楼に突如姿を現した神霊──夜王鳳仙は、まさしく人間の支配欲を象徴とした存在だった。神霊は確かに人の欲を表す。だが、ここまではっきりとした形を為すことは少ないはずなのだ。そもそも幽霊とは総じてそこまでの力があるわけではない。つまり。
「なるほど。空に浮く城の存在と相まって、ここまでの力をつけるようになったと言うべきですわね」
「空に浮く城……それは一体?」
幽々子からしてみれば、紫の口から発せられたことは初めて聞く事実。そもそも彼女の頭の中に、城の存在などはじめからない。
だが、幻想郷の管理人たる八雲紫は、今幻想郷で起きている異変のある程度を掴むことが出来る。その上で輝針城の存在にも気付いていたのだ。
「現在、幻想郷では同時に幾多もの異変が起きておりますの……その一つが神霊。そしてもう一つが、『全てがひっくり返ったかのようになる』異変。その異変には、空に浮かぶ城……輝針城が関わっているとされておりますわ」
「……つまり、本来弱いはずの力が、反転して強くなっている、と?」
神霊が強くなっていることについては、あくまで偶発的であるという仮説が立てられる。本来であればそう結論付けても良いだろう。
しかし、紫はその先まで疑う。
「もしかしたら、彼女達はこのタイミングを伺っていたのかもしれませんわね……」
「何かしらの異変が起きることを待ち、その上で自分達でも新たなる異変を起こす。そして幻想郷中がパニックになったところで、本来の目的を果たす……雑ながら筋書きはこんな感じかしら?」
「その仮説が現状一番正しそうですわね。何にせよ、今の私達に出来ることは、この先にいる人物の説得に他ならないですわね……きっと、今外でこのようなことになっているとは知らない筈ですから」
恐らく、今この先にいる人物については、直接の関係性はないのだろう。しかし、少しでも被害を食い止めるためには必要なことであるのには違いない。故に彼女達は歩みを進めようとしたの、だが。
「ここから先へは行かせないぞー」
「あら、こんな所に人が……いいえ、妖怪が立ち入るなんて珍しいわねぇ」
一人と、一体がいた。
先に話した方は、肩程度の長さの暗い藤色の髪の少女。青紫色の人民帽には星型のバッチがつけられている。袖が広口の半袖上着は赤い中華風となっていて、下は黒いスカート。何より最大の特徴は、おでこにお札が貼られていること。彼女こそ、先程響子が言っていた『動く死体』なのだろう。所謂キョンシーである。
もう一人は、ウェーブのかかったボブの青髪。髪の一部を頭頂部で∞の形に結い、結い目には鑿を挿している。水色の、袖が膨らんだ半袖のワンピースを着ており、その下には、ワンピースと同じような形の、白い薄手の服を着ている。上から下まで、青で統一されたような少女だった。
青い少女が、紫達の前に立って自己紹介をする。
「私は霍青娥。この子は宮古芳香よ。どう? 可愛らしいでしょう?」
どうやら青娥は、芳香のことを溺愛している模様。彼女の口ぶりから察するに、芳香をキョンシーとして蘇らせたのは青娥なのだろう。
だが、今の紫や幽々子に、彼女達の関係性など関係ない。それよりも先にしなければならないことがあるからだ。
「私たちはこの先に用事がありますの。退いてくださらないかしら?」
「そういうわけにもいかないのだー。私はここで侵入者を迎え撃つからー」
「そういうことだから、大人しく引き返してくれるとありがたいのだけれど、そういうわけにもいかないわね?」
二人はすでに迎え撃つ気満々らしい。
それを察した幽々子と紫は、
「……あらあら。誰を敵に回しているのかまだ分かっていない様子ね」
「いいですわね。たまにはこういう戯れも楽しみの一つになりますわ」
そして、彼女達の弾幕ごっこが幕を開ける……。
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第二百二訓 我が子はやはり可愛らしい