銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第二百五訓 かつての偉人が蘇るのはロマンを感じる

 紫と幽々子は現在、更に奥へと進んでいた。先ほど襲いかかって来た二人については……最早語る必要もあるまい。少なくとも、幻想郷で敵に回してはいけないランキングのトップ2を相手にして無事でいられるはずがない、とだけは宣言しておこう。

 

「この先から何やら強い気配がしますわ」

「ということは、この先にきっと、居眠りしていた誰かさんが待ち受けている、ということでよさそうね」

「そうですわね……寝坊助さんの寝起きをこの目で確かめる事になりそうですわね」

 

 紫と幽々子は、まるでピクニックに来た子供のように、楽しそうにやり取りをしていた。これはこの二人だからこそのやり取りであり、本来他の者がこの場所にいようものなら、警戒心を存分に放ちながら静かにゆっくり進んでいることだろう。しかし、この二人はそんな常識が通用しない。

 彼女達のすぐ近くには相変わらず神霊が居るが、構わず進んでいく。時折近寄ってくる神霊については、紫がスキマを用いて何処か別のところへ飛ばしたり、幽々子が扇子で追い払ったりしている。

 そうして進んでいくうちに。

 

「……あたり、ですわね」

 

 紫がそう呟いた。

 

「……私に何の用だ?」

 

 そこに居たのは、一人の人間と一体の亡霊、そして──。

 

「なるほど。聖人、ね……そりゃ神霊達も騒ぎ出すわけだわ。そうと分かれば話が早いわね」

 

 幽々子はその事に気付いて、思わず微笑んでいた。

 人間の方は、銀色の髪をポニーテールにまとめ、ディープブルーの瞳を持つ。頭には烏帽子を被り、身体には黄と緑の衣の上に白装束、紺色のスカートを履き、紫色の靴を履いている。

 亡霊の方は、薄い緑色でウェーブのかかったボブカットに、紐が付いた黒い鳥帽子を被っている。瞳の色は髪の色と同じ。濃緑色のロングスカートのワンピースを着ている。スカートの裾には大量の御札がある。最大の特徴は、本来人間の脚が付いている筈の部分に、霊体としての脚が付いていることだ。

 そして聖人は、獣の耳を彷彿とさせる程尖っている金髪に、『和』と書かれた耳当てをし、薄紫色のノースリーブに、紫色のスカート。腰には柄の部分に太陽を象った剣を携え、手には笏を持っている。

 

「関係性から察するに、ルーツは飛鳥時代ってところか……なるほど。確かに聖人として申し分ないだけの偉業を成し遂げているわけね」

「つまり、1400年前の人間が復活を果たした、と……素敵で羨ましいわ」

 

 紫の言葉からそのことを察すると、亡霊である幽々子は本当に羨ましそうにそう言った。かつて自身も、西行妖の下に眠る人物を蘇らせようとしていたことがある為、そういった話には敏感なのだろう。

 

「この地に踏み入る侵入者は、物部布都が許さぬぞ! ここで大人しく倒れるのが筋であろう!」

「どうしてもやろうってんなら、アタイが相手してやるっての。蘇我屠自古と言えば、どれだけの力を持ってそうなのか分かるだろう? 霊体は便利だからな……」

 

 布都と屠自古は、紫や幽々子に対して挑発的な態度を取っている。彼女達からしてみれば二人は侵入者。警戒して然るべき存在であるのだから当然の反応とも言えるだろう。

 しかし、

 

「待て、二人とも。恐らくこの人たちは戦いに来たわけでも、ましてや侵入したわけでもない」

 

 聖人である彼女が止める。

 そして止めた張本人は前に出ると、

 

「私は豊聡耳神子。出来れば貴女方の名前を伺いたい」

「「!?」」

 

 布都と屠自古の二人は、神子がそういった途端に驚きの表情を浮かべる。

 

「戦わずして、実力を認めた……?」

 

 屠自古は思わずそう呟いてしまっていた。

 そんな反応を見て、紫は。

 

「なるほど……貴女は聡明なお方なのですわね。実力を測ることが出来ている」

「よく言うわよ……それだけ莫大な妖力放っていたら、嫌でも私は身を引かざるを得ないさ。これがもしもう少し弱かったなら、私達ももっと高圧的に出られただろうに……」

「あらあら。そう言う貴女もなかなかの力を持っていてよ?」

「お気遣い感謝する……だが生憎私はまだ目覚めたばかり。寝惚けた身体で二人を相手するのは骨が折れそうだ」

 

 いい意味で、神子は聡明だった。彼女は自分の前に対峙している二人がどんな存在であるのかを勘で感じ取ったのだ。それがどんな種族なのかはともかくとして、少なくとも自分よりは格上の存在である、と。

 

「それで、ここに何の用事が? ただ単にふらっと立ち寄った、ってわけではないのでしょう?」

「そうですわね……簡単な話ですわ。あなた方の活動拠点をここから地上に動かして欲しいだけですの」

 

 紫はまるで最初からその台詞を用意していたかのように、間髪入れずに告げる。

 

「それは私達としても有難い話だが……何せこうして私が復活したのも、この地に流れる力がどこがおかしかったのにも起因しているし……」

「しかし、いきなり過ぎて訳わからないであろう? 我らにも分かるよう説明を求む」

 

 布都の疑問はもっともである。いきなり住処を移せと言われているのと同じなのだ。何か理由があることは推測出来るものの、それが納得いくものであるのかどうか不明なところだ。

 それに対して、今度は幽々子が答える。

 

「今、幻想郷には神霊が発生し続けている……その発生時期は恐らく、貴女が復活してからずっと、よ」

「なるほど……私の救いを求める人間の欲が具現化して、幻想郷を闊歩していると?」

「早い話がそういうこと。だけど、貴女の力を感じ取ることができても、その場所までは特定出来なかった……だから、力に惹かれた神霊達は行き場を失い、地上に残り続けてしまった……結果として、それが良くない影響をもたらし、本来救済を求めるのみだった神霊の中から、人間の欲の結晶として独立する者が生み出されてしまった……雑な予測に過ぎないけれど、これが冥界の番人たる西行寺幽々子としての解答であり、貴女達の疑問に対する答えよ」

 

 白玉楼で現れた夜王鳳仙。本来ならば彼のような存在は生まれることはなかったはず。しかし、こうしてある程度の自我を確立して現れてしまったのも、欲の塊が集まり、思考が一人分の物として確固たる物となってしまったから。詳しい理由は不明だが、予測としては一番確信に近いものであると幽々子は考えていた。

 もしかしたら、すでに発生してしまっている分に関してはどうしようもないかもしれない。だが、これから発生し得るものについては、神子の存在が外にいる事によって変わってくるかもしれない。それが、幽々子と紫が導いた答えだった。

 

「確かに……私の存在がこの地に悪影響をもたらすというのも、聞いていて心地よい話ではないな。それである程度の解決が期待されるのならば……良いだろう」

 

 神子は二人の案を受け入れる。

 これである程度神霊による被害は食い止めることが出来るだろう。

 

 ……それまでに人里が無事ならば、の話だが。

 

 

 

 

 

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なんか書いてたらいつもよりも長くなりました……?
全盛期と同じくらいの文量になった気がしますが、次回にはまた戻っていると思います()。
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