銀時、こいし、フランの三人は、輝針城の中を駆け抜けていた。ここは敵の本陣。本来ならば冷静に対処しなければならないのだが、時間はそこまで残されていない。一刻も早く事態解決へ踏み込まなければ、どうなってしまうのか正直分からない。そういった事情がいくつも重なりながら、銀時達は進んでいく。
「くっそ……じゃまだぁ!」
道中で襲いかかってくる妖怪を退けながら、さながら徹甲弾の如き勢いで進んでいく三人。先陣を銀時が切り開き、左右をこいしが守り抜き、後陣をフランが撃ち抜く。三人の相性は良好だった。
「ギン兄様とこいしちゃんの背中は任せて!」
「左右は私が護り抜くよ〜!」
やる気は十分。
このまま最終関門まで突き進まんとばかりの勢い。しかし、そういうときにこそ壁は必ず現れる。
「侵入者発見、ってやつだな……」
「貴方達は一体何の目的でここまで来たんですか!?」
銀時達の耳に届いた二人分の声。声の主が何処にいるのか分からないため、彼らはその場で足を止める。周りを確認し、気配を探る。
「ギン兄様! こいしちゃん! こっちにいる!!」
フランの視線の先には、一人立っていた。
黒髪に白と赤のメッシュが混在した頭に、小さな二本の角を持つ。瞳の色は赤色。 服装は矢印がいくつも連なったような装飾がなされているワンピースのようなもので、腰には上下逆さになったリボンを付けている。足元は素足にサンダルを履いている。右腕にのみブレスレットを付けている女性。
だが、肝心のもう一人の姿が見当たらない。
「私は鬼人正邪。打ち出の小槌を壊されるわけにはいかないからね……ここでお前達を足止めさせてもらうよ。でないと私の野望が果たせなくなっちまうからね」
「テメェの野望?」
「あぁ。いつまでも強者が弱者を踏み潰す世界が続くってのは飽き飽きだ。だからこれからは弱者が強者を乗り越えられるような世界を作ろうとしてるってわけさ!」
正邪が目的としているのは、文字通りパワーバランスの反転。
強き者と弱き者。そのバランスを崩して、弱者が支配する幻想郷を作り出す。
「なるほどな。要するにテメェは幻想郷乗っ取ろうと企んでる奴らに、まんまと利用されてるってわけか」
「……なんだと?」
銀時の言葉に、正邪が殺意を剥き出しにする。
実際は銀時の言う通りだ。華陀が正邪たちを利用し、自身が美味しい所をすべて持っていこうとしている。だが、正邪としてはそれを認めるわけにはいかないのだ。
「私達が利用されていたとしても、それでも! 弱い者にも矜持ってものがあるんです!!」
「「「!?」」」
突如として声が聞こえた。
それは銀時達の背後――即ち、進行方向からやってきたのである。その声と共に飛び交う――弾幕。
「本能『イドの解放』!」
ハート型の弾幕をこいしが放つことによって、迫りくる弾幕を撃ち消す。
煙の中から現れたのは、一人の少女。
薄紫色のショートヘアーにお椀を被り、赤色の和服で、足元は裸足。右手に縫い針のような特注の剣、左手に打ち出の小槌を持っている。小槌の片面から魔法陣らしきものが出ており、針妙丸を囲うように輪を描いてもう片面と繋がっている。
「少名針妙丸。弱き者にも誇りがあるという所を見せてやります!」
敵意を見せる針妙丸。
それに対して、
「……ギン兄様。ここは私とこいしちゃんに任せて」
「!?」
フランは正邪のことを警戒しながら、銀時に言う。
フランの意見に賛同しているようで、こいしも針妙丸を警戒しながらも、銀時に向けて頷く。
「おめぇら……」
「この先に居る黒幕を倒すのはギン兄様の役目なんでしょ? フランも、ギン兄様のお役に立ちたいから」
「いつまでも守られてばかりじゃない。こいしだって、お兄さんをお守りしたい! 助けになりたい!」
フランもこいしも、こういった場ではなかなか前線に立たないことが多かった。実際、今回の異変においても、銀時達に守られることが多かったのだ。銀時達からしてみれば、彼女達のポテンシャルを買っているからこそ最終兵器として残しておきたい気持ちだったのだが、本人からしてみればそうもいかない。
ここで活躍せず、いつ活躍するというのか。
「……分かった。テメェら信じて、俺は先へ行く。だからテメェらも、ここでくたばるんじゃねえぞ!」
「「もちろん!!」」
その掛け声に合わせて、銀時は全力で駆け出す。
「いかせると思っているんですかぁああああああああああああ!!」
妖剣『輝針剣』。
右手に握りしめた剣を振るい、ナイフ状の弾幕を張り巡らせていく。
しかし、銀時の行く道を。
「抑制『スーパーエゴ』!」
こいしが創り出していく。
先程針妙丸に放ったハート型の弾幕を、今度は後ろから戻してナイフの弾幕を相殺していく。
「こっちにも居ること忘れちゃいないよねぇ!」
「もちろんだよ! 後ろはフランが護る!!」
正邪の拳を、フランの爪が食い止める。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
その間に、銀時は最終地へと向かうのであった――。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百七訓 護られるだけでなく護りたい