「これは……一体……!?」
人里に辿り着いた霊夢達を待ち受けていたのは、慧音と妹紅が妖怪達と戦っている光景。そして、数多くの妖怪達が人里を襲っている所だった。
「霊夢!! 私達だけじゃ食い止めきれない! だから手伝って欲しい!」
弾幕を放ち、自身の力を存分に振るい、戦いながら慧音は要請する。
「いくら私が不死であるとはいえ、ここを抑え込むには必要のない力……今はとにかく人手が欲しい。だから頼む……協力して欲しい!」
「言われずとも分かっているぜ! 人里を好き勝手やらせるわけにはいかないぜ!」
真っ先に前に出たのは魔理沙だった。彼女の放つ極太のレーザーは、妖怪達を呑み込んでいく。大抵の妖怪は彼女の放つマスタースパークの前に倒れ伏すのだが。
「何体か……立ち上がっている……!?」
新八がその事実に気付く。
もちろん、マスタースパークにやられてそのまま消え去った者も居る。それらは恐らく神霊の類だったのだろう。しかし、妖怪達の中には、それでも尚立ち向かってくるものも居た。
すべては、輝針城における打ち出の小槌の力と、神霊が湧き出る現象。これらが嚙合わさることによって完成してしまった状況。結果的に、人里にしわ寄せが寄ったのである。
「華陀とかいう奴はこれを待っていたわけか……人里が妖怪達に襲われてしまえば、幻想郷における人間と妖怪のバランスが崩れる。均衡を保てなくなった幻想郷の存在すら危ぶまれるじゃない……っ!」
博麗の巫女として、現状を冷静に分析する霊夢。
いや、内心そんな冷静でいられるわけがなかった。
言ってしまえばこれは、自分達が住む世界の存在自体が危ぶまれている状態。
もしこのまま見逃してしまったら、その時は――。
「脇巫女! 何をボサッとしているアルか! さっさと戦うネ!!」
「!?」
神楽からの叱咤を受ける。
神楽は既に、自分の周囲に襲い来る妖怪達を、番傘を以て叩き伏せている。
「考えるよりも先に、今は目の前の敵を倒すべきですよ霊夢さん!!」
新八も、木刀で敵を斬り倒していく。倒しきれなかった敵は、妹紅が焼き消していく。そうして、彼らは人里の被害を最小限に抑えようとしている。いや、抑えるだけではない――人里を救おうとしている。
「……そうね。何をボサッとしていたのかしら。博麗霊夢がこんなことで気圧されてはいけないものね!」
夢想封印。
彼女が得意とするスペルカード。
札と陰陽玉によって構成された弾幕は、妖怪達を退ける。
「ここを一気に乗り越えて――!」
「そうはいかねぇってもんさ! テメェらには鬼ってもんを見せてやらねぇとなぁ!」
突如、霊夢の前に振り下ろされた巨大な棍棒。
その形相から、まさしく鬼であると心の中で呟いた。
「鬼獅子……テメェらにゃ何の恨みもねぇが、こうして前に出てきた以上、一夜限りの戦場を大暴れさせてもらうぜぇ!」
「なっ……アイツは確か、銀さんに倒された筈……!」
鬼獅子。
かつて銀時が煉獄関に突入した際に倒した、荼吉尼族の天人。
彼もまた、こうして新八達の前に現れて、行く手を阻もうとする。
「こまけぇこたぁどうだっていい! 今はまず暴れられれば……っ!」
「そうか。暴れられるのは困る。だから一刀のもとに沈めさせてもらおう」
「……え?」
更なる男の声。
荘厳な声色が人里に響く。
その場に居た誰もが、鮮やかすぎる一閃に声も出せなかった。
「な、に……?」
「欲に塗れ、存在を迷わせた哀れな霊よ。その未練を、我が刃で以て斬り捨てる」
男が剣を鞘に収めた瞬間、鬼獅子は呆気なくその姿を消し去っていく。
あまりにも一瞬過ぎるその光景に、霊夢達はおろか、その場にいた妖怪達でさえ言葉を出せずにいた。
「間に合いましたね……もう大丈夫です。私と、師匠が来ましたので……加勢はこれで十分ですね?」
その後ろから――魂魄妖夢が剣を抜いた状態で追いかけてきていた。
「妖夢?! つーか、師匠ってことはつまり……!?」
魔理沙も、かつて妖夢から話だけは聞いていた。
彼女の剣を鍛え上げた師匠が居たことを。
そしてその師匠の名は――。
「孫が世話になっておるな。その恩を、この場で以て返させてもらおう。この――魂魄妖忌が、必ずや人里を妖怪共から救ってみせようぞ」
男――魂魄妖忌は、この現状を斬り伏せる為にやってきた。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百九訓 斬り伏せ御免