「邪魔ばかりされても困るんだよね! そんだけ強い力を持ってるならさ、何故この幻想郷を支配しようとか考えないわけ!?」
フランと対峙している正邪。
正邪の目的は実に単純だ。
――幻想郷の支配。
皮肉にも、その心は華陀と同じもの。考えについてもほぼ同じ。だが、彼女は針妙丸共々利用された。この異変を引き起こし、最終的に華陀が支配する為の道具にしか使われていない。
もちろん、正邪とてその事実に気付いていない訳がない。気付いた上で敢えて乗り、更に自分が華陀を上回ろうと画策さえしている程だ。それだけ、彼女の心は揺るがない。
「幻想郷を支配するだなんて考えは私にはないの。だって、ギン兄様が居て、お姉様が居て、みんなが居る……そんな幻想郷が、私は好きだから……だから! 貴女のような邪な考えを持っている人を止めるの!! 私だって、ギン兄様の……みんなの役に立つんだって所、見せるの!!」
正邪の放つ弾幕を、フランは爪でかき消していく。
「くっ……こん、の……っ!」
逆転『リバースヒエラルキー』。
フランと正邪の居た位置が突如として逆転する。それだけではとどまらない。
「え、あ、あれ……!?」
フランは困惑している。
そう。今の彼女は、上下左右がすべて反転した状態で戦わされている。
正邪は、この空間をすべて反転させたのだ。
だが、その影響を受けるのはフランだけではない。
「なっ……!?」
「ちょ、ちょっとこれはどういうことですか?!」
同じ空間に居るこいしや針妙丸についても、その影響を受けてしまう。
「悪いが、こっちも勝つためには容赦しないから……だからちっとばっかし我慢してくれ」
「しょうがないですね……それならば……!?」
少し。
そう、針妙丸にとってはほんの一瞬のつもりだった。
しかし――その一瞬こそ命取り。
「……え?」
古明地こいしを、彼女は完全に見失っていた。
針妙丸は知らない。こいしが『無意識』を操ることが出来るということを。
その能力を利用して、相手の意識から外れることが出来ることを。
「『ブランブリーローズガーデン』」
「しまっ……!?」
そしてこいしは、その無意識から攻撃を放つ。
無数の薔薇の竜巻が、針妙丸を呑み込んで――薔薇が一気に爆発を起こした。
「ちぃ……上下左右すべて反転している世界でそこまで……」
「たかがそれだけ、でしょ?」
フランは周囲を自由に飛び回り、正邪を困惑させる。
「私にとって、重力なんて無意味。確かに左右逆にされるのはちょっと困るけど、慣れればどうってことないんだね」
「くっ……縦横無尽に飛び回るってか?!」
「そういうこと。私は吸血鬼だよ? それ位、わけないよ……スカーレット家の妹を、舐めないでよね!」
禁弾『スターボウブレイク』。
彼女の羽についている宝石のような物を彷彿とさせるような、色とりどりの弾幕が天井にあがり――一気に正邪目掛けて降り注いだ。
ただし、ここは上下左右すべてが反転している世界。
その弾幕は――本来ならばあり得ない動きを見せる。
「なっ……!?」
上からも下からも、正邪目掛けて降り注いでいた。
「私の力を、利用して……っ!」
「ここで眠って。今はギン兄様の助けに行かなきゃいけないの……だから、ここで一気に終わらせる!!」
フランの叫び声と共に、正邪を呑み込む無数の弾幕。
その弾幕は、正邪を逃がすことを決して許さず――そのまま彼女の意識を刈り取ることに成功した。
「っ!」
正邪の意識が途切れた瞬間、反転していた空間は元に戻る。
「……私達、勝ったんだね?」
こいしがポツリと呟く。
それに答える様に。
「……うん。こいしちゃん、フラン達勝ったよ。ギン兄様の役に立てたんだよ!」
「そっかぁ……よかったぁ……」
こいしが心底嬉しそうな表情を見せる。
彼女達の心にあるのは、自分達が銀時の役に立てたという自信。
今まで護られてばかりだった彼女達が、自分の強い意志で戦ったという証拠。
フランにとっては、何度か異変に関わることがあったものの――その度に、何かしら心に違和感みたいなものが残っていた。
そして――その違和感は、戦いを終えた今にも現れそうになる。
その正体は――不安。
「……ギン兄様の所に行こう! 今も戦っていると思うから!」
「……うんっ!」
彼女達は、銀時に加勢する為本拠地へ向かう。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百十訓 勝負