銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第二百十一訓 気高き魂

「寺田、辰五郎……!?」

 

 その一言で銀時は確信する。たった今目の前に現れた男は、かつての江戸の番人であり……お登勢の旦那であった男だということを。そして、坂田銀時が勝手に約束を結んだ男であるということを。

 

「これだけの数、天人やら妖怪やらがうじゃうじゃといるパーティー会場なんて、随分と珍しい所にいるじゃないの兄ちゃん。アンタ、只者じゃねえな?」

 

 口元をニヤリとさせながら、辰五郎は尋ねる。対する銀時は。

 

「そういうアンタこそ、好き好んでこんな修羅場乗り込んで随分と楽しそうじゃねえか。アンタ、只者じゃねぇよな?」

 

 同じように口角を上げ、辰五郎にそう言い放った。

 

「ちげぇねぇ。アンタ、江戸の住人だな? 如何にもこういう馬鹿騒ぎが好きそうな雰囲気してやがらぁ。やっぱそう簡単にゃ変わるもんじゃねぇってかい」

「天下の歌舞伎町だぜ? 時代は変わっても、その本質は変わっちゃいねぇよ。あの街も……あの地に住む馬鹿共も」

「そうかい……お登勢や次郎長は元気にしてっか?」

「ババアもジジイも相変わらずだ。ジジイの方は旅に出たっきり会ってねぇけど、娘とよろしくやってんよ」

「あいつ父親になってんのか!? 時の流れたぁすげぇもんだなぁ」

「ババアは元気に家賃払えってうるせぇのなんの。アンタん所の奥さんだろ? 何とかしてくれよ」

「お登勢も相変わらず元気そうで安心した。これで思う存分戦えるってもんよ」

 

 互いに軽口を叩き合う。

 目の前に華陀やぬえもいるというのに、まるでそこに居ないものとして扱いながら、勝手に話を進める二人。

 

「こんな状況で、これだけの敵を前にして、たかが猿二匹で何が出来るというのじゃ!? 貴様らは自身の置かれた状況が分からぬというのか!?」

 

 数だけでいえば絶体絶命。客観的に見たらそう判断せざるを得ない状況。しかし、銀時も辰五郎も、そんな考えなど微塵もない。互いの素性は細かく知らないし、力量だってどの程度のものなのか把握しているわけでもない。

 だが、彼らは感じ取っているのだ。

 

 ──この場で魂は折れないということを。

 

「「!?」」

 

 故に、その剣に迷いはない。

 一瞬のうちに、自身の直ぐ近くに居た天人や妖怪達を斬り伏せる。

 そして、銀時と辰五郎は互いに背中合わせになり、

 

「アンタのその魂、折れるんじゃねぇぞ?」

「そういうのはテメェの心にでも刻んでおけ、銀髪の兄ちゃん。俺の魂は、決して折れるこたぁねぇよ」

「だろうな……奇遇だ。俺も折れる気がしねぇ」

「「なら、何も問題はねぇな?」」

 

 銀時から放たれる無規則な剣戟と、辰五郎から振るわれる力強い剣筋。

 その圧倒的な力に、ぬえも華陀も思わず言葉を失っていた。

 

「っ!!」

 

 銀時に襲い来る三体の敵。刀を持った者、鋭い爪を生やした者、筋骨隆々とさせた者。

 銀時は真っ先に、相手の刀を奪いにかかる。木刀で敵の手を叩き潰した後、痛みに悶える敵が落とした刀を蹴り上げて、それを握る。その刀を左手で握りしめて──そのまま一閃。左から襲ってくる巨体を、右手に握った木刀で殴り飛ばし、右から迫ってきた爪を、刀で斬り崩した。

 

「……」

 

 辰五郎の前には、刀を持った天人が複数人。最初に襲ってきた敵の刀を十手で受け止め、そのまま剣筋に沿って突っ込んでいき、勢いを殺すことなく左の刀で斬り伏せる。そんな辰五郎目掛けて、妖怪が噛み砕こうと襲い掛かる。敵の動きをしっかり見て、辰五郎は敵の猛追を避けた。目標を失った妖怪はそのまま地面に落下し、そこを辰五郎が見逃す筈がなかった。

 

「ヲォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

 相手を一瞬で斬り伏せる。

 銀時と辰五郎は互いを見つめると、そのまま全力で駆ける。やがてその身同士がぶつかり合いそうになる程距離が近くなったと思ったら。

 

「「まだここで死ぬんじゃねえぞ?」」

 

 互いの背中に居た敵を、それぞれの刃で突き刺した。

 

「な、なんじゃコヤツらは……!?」

 

 華陀は、その圧倒的な力に恐怖していた。

 そして皮肉にも――歌舞伎町でのことを思い出していた。

 二度もこの男に――自身が下等生物とみなしていた人間共に、野望を止められようとしている。

 

「な、んで……?」

 

 そしてその恐怖は、ぬえも感じていた。

 憎き人間が、妖怪や天人相手に一歩も遅れを取ることなく、むしろ立ち向かっている。

 彼女は、人間は醜く卑しい生き物だと考えていた。それだけに、彼らの魂は――気高く美しく見えた。

 

「死にたくなけりゃここを突破しろってか。分かりやすくていい」

「アンタ偏差値低いだろ? 銀髪の兄ちゃん」

「そういうアンタも、馬鹿やってるみてぇだな」

「そりゃな。こんだけ暴れていい場所用意されて、馬鹿騒ぎしねぇ方が損ってもんよ。テメェだって同じだろ?」

「……そうだな。精々テメェの刃で傷つけられねぇよう、気を付けるこったぁ!」

「そりゃこっちの台詞だ!!」

 

 二人の侍の戦いは、今ここに幕を開ける――。

 

 

 

 

 

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