侍二人による見事な大立ち回り。互いの前に現れる敵を次々と斬り倒していき、背後より現れる敵を貫いていく。だが、数の利も土地の利も相手にある。二人で挑むには、敵の数が多すぎる。
「ぐっ……」
当然、銀時と辰五郎はそんな中で無傷でいられるわけがない。特に銀時に至っては、今までの戦いによって蓄積された疲労も溜まってきている状況。
だが、彼らは止まることはない。たとえ背中を斬りつけられようが、腹を貫かれようが、後退も降参も存在しない。もはや彼等は留まることを知らない。ある一種の弾丸みたいなものだった。
「妾達の野望の為、この者共を討ち取れェエエエエエエエエエエエエ!!!」
華陀の声が響き渡る。
声色からも察することが出来るように、彼女は今かなり焦っている。彼等の邪魔が入らなければ、己が野望はまだ叶いやすかったろうに……だが、それも今潰えようとしているのだ。
「テリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
銀時は吠える。
己を鼓舞し、相手を威嚇し、敵を討つ。
四方より迫りし無数の敵を蹴散らし、更に次の敵へ。
「…………っ!!」
辰五郎は静かに闘志を燃やす。
瞳に炎を宿し、磨き抜かれた動きで敵をねじ伏せる。
たとえその身がボロボロになろうとも、彼等は決して立ち止まらない。
「なんなんだよ……どうしてそこまでするんだよ……!? この人数差なのに、なんでお前ら人間は諦めないんだよ……!? このままだと、私達の野望が……潰えてしまう!!」
ぬえは、目の前で繰り広げられている光景に対して心が折れそうになる。
当然、彼女だって弾幕を放つことが出来る為、戦うことは可能だ。だが、そんな彼女が足を踏み出さないでいる理由は、思いの外明白だった。
──この二人に対して、恐怖を抱いているのだ。
それまで、ぬえにとって人間とは下等生物であり、醜き存在だった。見下していたと言っても過言ではない。それ程までに人間を憎んでいた。
だが、今こうして戦っている彼等は、記憶の中にある人間像とはおよそかけ離れている。いや、彼等は最早、ただの人間というよりは……。
「お、に……」
白夜叉。
かつて坂田銀時はそう呼ばれて恐れられていた。辰五郎と共に激戦の中に身を置いている内に、彼の中に眠る戦いの記憶が呼び起こされているのかもしれない。
「たかだか猿二匹に何を手間取っておるのじゃ!? 早く此奴らの息の根を止めよォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
華陀の叫びとは裏腹に、銀時と辰五郎は不気味な程の笑みを浮かべている。彼等は既に限界などとっくに超えている。それでも尚動きを止めることはない。
前方からの敵を薙ぎ倒し、後方からの敵を退け、左右からの敵を蹴散らす。圧倒的な戦力差があった筈なのに、気付けば華陀が従えていた筈の存在は、そのほとんどが数を失っていた。
「こんな……筈では……っ!!」
打ち出の小槌を利用して、本来弱い者が強くなる逆転現象を起こした。神霊騒ぎに乗じて、弱い力しか持たない筈の人の欲を強めた。計画の中に偶然すら味方につけ、華陀とぬえの計画はほぼ完璧であるようにすら思えた。だというのに……それでも、彼等は止めに来た。無茶を通してここまで来てしまった。
ぬえは人間を見くびりすぎていた。
華陀は幻想郷を知らなさ過ぎた。
それゆえに、彼女達の計画は失敗する。綿密に練られた筈の計画は、呆気なく霧散していく。
「テメェらなんぞに……この地を支配出来るかよ。ここにいる奴ら従えるにゃ力も理解も足りなさ過ぎる。大体、あの馬鹿共がテメェらみてぇな輩に支配される玉たぁ思えねぇよ」
「世界統べるにゃ、まずテメェの部下を統率させる方法を学ぶこったな。天人に妖怪よぉ」
銀時も辰五郎も、華陀やぬえが今回の計画を成功させたとしても、幻想郷を支配出来るとは考えていなかった。
たとえその身体がどれだけボロボロになろうとも、彼等は立ち止まる事を知らない。決して倒れない。この戦いを終えるまで、彼等は決して止まらない。
「さて、こんだけ暴れることが出来るのも今の内だからな……そろそろ終わりが見えてきそうだ」
「何……!?」
銀時の言葉に、華陀は目を丸くする。
あれだけいた筈なのに、自分が従えていた者達の数は……尽きようとしていた。
「もう……私が出るしかない……っ!」
そうしてとうとう……ぬえが二人の前に立ち塞がった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百十二訓 統べる力