「鵺符『鵺的スネークショー』!」
前へ飛び出したぬえは、自身のスペルカードを発動させていた。いびつな形をした弾幕が、不規則な動きを見せて銀時と辰五郎に襲いかかってくる。二人はその動きを見て、避けられるものは避けて、避けきれなかったものを己の武器で打ち消していく。
「これなら、どうだぁあああああああああああああああああああ!!」
避けられたことを察したぬえは、次なるスペルカードを発動させる。
鵺符『弾幕キメラ』。
ぬえから発せられるレーザーが、二人を飲み込もうとする。銀時と辰五郎の二人はそれを避け、反撃に転じようとするが。
「……!?」
放たれたレーザーが、途中で動きを停止した。そして──。
「なっ……!?」
一筋の光は、形を失ってバラバラな形の弾幕となりて、侍達に襲いかかる。光の牙が、彼らの身体を抉り取ろうとしていた。
「「てりゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
二人はそれを許さない。
自身の領域に入り込んでくることを拒み、どんどん打ち消していた。その反動で先ほどまで受けていた傷口から鮮血が撒き散らされようとも、二人の侍は止まらない。
「なんで……どうして……!? どうして止まらないんだ!!」
鵺符『アンディファインドダークネス』。
周囲の視界を暗雲を以て奪い去り、辺り一面に光弾をばら撒いていく。闇の中に光り輝く弾幕はまるで夜空に輝く星空のよう。闇に紛れたぬえが、銀時目掛けて飛びかかろうとした時。
「……甘ぇよ。それでやれると思ったか?」
「!?!?」
冷たい声だった。
身体の奥底から込み上げてくる恐怖という感情をぬえは感じ取っていた。
恐怖──自身が憎んで下に見ていた人間に対して、封獣ぬえは恐怖していた。
「なんで……なんで!?」
ぬえは銀時に向かって殴りかかる。当然、銀時はそれを木刀で防ごうとする。ただし、ぬえの狙いは銀時本人ではなく──。
「テメェの武器奪おうってのは感心するが、些かその判断が遅れちまったみてぇだな、嬢ちゃん」
「!?」
銀時の武器を奪い去ろうとしていたぬえの手を、辰五郎の十手がはたき落とす。辰五郎はそのままぬえの腕を掴み取り、地面へと叩きつけた。
「が、は……っ」
思い切り勢いつけて倒れたぬえの肺から、溜め込んでいた空気が無理矢理吐き出される。ぬえもそんな状態をいつまでも続けるわけにはいかず、すかさず反撃に転じようと試みて、
「これでシメェだ、妖怪の嬢ちゃん」
ぬえのすぐ横に突き刺さった刀の刃が、視界いっぱいに広がった。
ぬえは察する。
今の瞬間に、辰五郎はぬえの頭から刀を突き刺すことが出来た。それはつまり、本来ならばここで彼女の命は尽きていたことを意味する。辰五郎に押さえつけられた状態から抜け出すことは、妖怪である彼女にとってそこまで不可能なことではないだろう。しかし、彼女が行動に移すよりも早く、辰五郎と銀時が動き出すだろう。つまり、彼女は認めなければならないのだ。
「私が……人間に負けた……?」
それはどれだけプライドを傷つけられることだっただろうか。人間に負けただけではなく、情けすらかけられたのだ。封獣ぬえにとって、これほどまでに屈辱的なことはないだろう。
「そんな……妾達の計画が……こんな下等な猿共に……二度も……またしても……ここまで完膚無きまでに打ち破られるなど……そんな……っ!!」
現実を一番受け止め切れていないのは華陀だった。彼女はこれだけの計画を立てた張本人。しかも綿密に練ったはずの計画が、今回もまた阻まれてしまったのだ。銀時や辰五郎がこの場にいるということは、少なくとも針妙丸や正邪を突破したということ。それはつまり、打ち出の小槌が効力を失うことと同義である。
「人里の方に希望抱いてるってんなら、諦めな。今頃博麗の巫女達が妖怪ぶっ飛ばしてる所だろうぜ」
「……っ!!!」
華陀にとって、銀時から発せられたその一言は死刑宣告にも近い。すなわち、彼女達の勝ち筋は完全に絶たれたということになる。
「観念しな、姉ちゃん。諦めて神妙にお縄についた方が身のためだぜ?」
余裕そうな口振りで辰五郎は煽る。しかしその実、身体についてはほぼ満身創痍だった。それは銀時とて同じこと。
「覚えておれ貴様ら……この借り、必ずや返させてもらう……っ」
当然、華陀は次なる計画の為、今回は逃亡する。ただし、その場に倒れているぬえを置いて、一人だけ。
「まちやが、れ……っ」
その後を銀時が追いかけようとするも、蓄積されたダメージによって身体がいうことを聞かず、その場に倒れ伏してしまう。それは辰五郎も同じで、目前で華陀の逃走を許してしまった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百十三訓 勝敗の行方