銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第二百十四訓 行動には当然のように責任が付き纏う

 華陀の計画は失敗に終わった。彼女が立てた計画は、完璧とまでは言えないものの、成功するだけの可能性は秘めていた。しかし、物事には不確定要素というものは常に付き纏う。その結果、それが良い方向に転ぶこともあれば、悪いことを呼び寄せることもある。今回、その両方が彼女の元に訪れて、結果として敗北した。

 

「おのれ……妾の計画を二度も阻もうだなんて……許せぬぞ、猿共……っ!!」

 

 人間を憎むその表情からは、妖怪や天人を率いていたカリスマ性などどこにも見当たらない。ただ単に私念のみで動いている小物と何ら変わらない。最早華陀はそれほどまでに落ちぶれてしまっていた。

 

「この雪辱や必ず果たす……っ!!」

 

「見苦しい抵抗はそこまでにして欲しいですわ」

 

 突然、誰もいない筈の所から声が聞こえた。その声は極めて冷静だが、静かなる怒りを秘めたような声。

 

「なんじゃ、貴様は……!? 何処から……!?」

 

 華陀は周囲を見渡す。声の主が何処に居るのかを探そうと辺り一体を隈無く確認し、

 

「あら、意外と早く見つけられましたわね。無能な女狐だと思っていたら、案外そうでもないのかしら?」

 

 その人物が、自身の真上に居たことに気付いた。

 その人物は女性だった。妖艶な笑みを浮かべ、紫色のドレスに身を包んだ金髪の女性は、とてつもなく美人であることは分かる。ただし、彼女が姿を表しているその空間の裂け目に、これでもかと詰め込まれた瞳が無ければ、の話だが。

 

「貴様は……彼奴の言っていた……!!」

「知っているのでしたら話が早くて助かりますわ。一々自己紹介をすることもありませんわね」

「八雲……紫……!!」

 

 スキマ妖怪、八雲紫。幻想郷をこよなく愛する者。それ故に、幻想郷を脅かす存在については怒りを抱くことのある人物。

 

「貴女は幻想郷に流れ着きながら、二度も幻想郷の存在を脅かしました。これ以上貴女のような存在を好き勝手にさせるわけにはいきませんの」

「妾が何処で何をしようと、妾の勝手じゃ! 少なからず、お主に決め付けられる筋合いはなかろう!」

「えぇ、何処で何をしようが勝手ですが、それならば私だって何処で何をしようが勝手ですわよね? だって他人が何しようが、それに気付かない限りは止めようがありませんものね?」

 

 煽るように紫は言う。

 当然、華陀は怒りを覚える。

 

「戯れもここまでじゃ。妾は先を急ぐ……」

「せっかちですわね。せっかく貴女を元の世界に戻そうとしてあげているというのに」

「元の世界に……まさか!?」

 

 そこで、華陀は気付く。

 彼女のいう元の世界というのは、本来華陀が居た世界。それはつまり……。

 

「妾は戻らぬぞ!?」

 

 あの牢獄に、もう一度戻されるということに他ならない。

 

「身の丈に合った生き方をしていれば、こうなることもなかったでしょうに……行動には必ず責任が付き纏うということを理解していなかったのかしら?」

 

 最早紫は、華陀の言い訳を聞く気などなかった。華陀は、既に八雲紫の怒りを完全に買ってしまっている。彼女が許される道など用意されている筈がなかった。

 

「貴女はもう、二度と幻想郷の地を踏むことはないでしょう。せめてもの慈悲として、命だけは取らずに元いた場所に帰すことを光栄に思いなさい」

「何を世迷言を!? それならばここで命を落とした方が余程マシじゃ!!」

 

「だから言ったでしょう? 身の丈に合った生き方をしろ、と」

 

 華陀の足元が突然裂ける。そこに生まれたのは『スキマ』。彼女を地獄へと突き落とす、世界と世界の狭間。

 

「こんなところで妾は……妾はァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 そのままスキマに落ち、やがて華陀の姿は見えなくなった。その様子を眺めながら、紫は言う。

 

「貴女は牢獄で身を滅ぼす方がお似合いよ……それが身の丈に合った生き方ね」

 

 

 

 

 

 

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