「えーっと……」
あまりにも膨大過ぎる情報量に、新八の処理速度が追い付いていない。突如現れた四人の美少女たちは、それぞれがそれぞれで、自由気ままに行動し過ぎていた。こんなタイプ、今まで会ったことない者ばかりである。
一番まともそうなのは、メイド服を着用している咲夜と言った所だろうが、
「ここが万事屋という場所か……なかなかに面白そうな場所だな」
「御嬢様、あまりはしゃがない方がよろしいかと……」
好奇心旺盛に辺りを見渡しているレミリアを見ながら、咲夜は鼻血をだらだらと流していた。
「またんかいぃいいいいい!! いきなり鼻血出すな処理が困るんだよォオオオオオオオオ!!」
銀時も神楽も掃除するわけがないのだから、この中で誰が一番困るのかと聞かれたら、当然新八である。何かが起きれば、そのとばっちりは彼にすべて来ると言っても過言ではない。
「これは失敬……」
しかし次の瞬間、咲夜の鼻血によって汚れていた筈の場所は、一瞬にして何もなかったかのように綺麗になっていた。
「え……?」
これには、新八も動揺を隠せない。
「お前、今何したアルか? 手品カ?」
近くで見ていた筈の神楽でさえ、何が起きたのか理解することが出来ずにいた。
そんな彼らに対して、咲夜は説明する。
「これは私の能力、『時間を操る程度の能力』でございます」
「なん……だと……? テメェ、ザ・ワールドが使えるって言うのか……? くっそ羨ましいぞ」
フランによるダイレクトアタックのダメージから帰ってきた銀時は、未だ抱き着いているフランを抱えたまま、冷や汗をかきつつ尋ねる。何故かジョジョ立ちしている。
「ザ・ワールドというのがどのような能力かは分かりませんが……私は時間の流れを早くしたり、遅くしたり、様々なことが出来ます。そういえば銀時様とは戦ったことがありませんでしたね」
「それ以上につえぇ化け物共と戦ってたからな……」
銀時が紅魔館で相手をしたのは、美鈴・フラン・レミリアの三人。武術で言えば美鈴は間違いなく最強で、フランとレミリアに至っては種族が吸血鬼であることより、当然ながら馬鹿みたいに強い。一方咲夜は人間ではあるものの、能力面では随一である。今は目を回しているパチュリーも、魔法を使う面で言えば間違いなく最強の部類に入るだろう。
とにかく、紅魔館には強者しか存在しない。
「あぁ、紹介が遅れたな。私はレミリア・スカーレット。誇り高き吸血鬼だ」
カリスマを全開にしながら、レミリアが自己紹介をする。
「ついでに物凄いシスコンだ。気をつけろ。フランを突け狙おうものなら、爪と牙が飛んでくる」
「おいギントキ。せっかくの私の自己紹介を返してくれないか? 普段なかなか出せないカリスマ全開にしたのにすべてが水の泡になるじゃないか。だけどフランは可愛い」
「シスコン隠す気ねぇぞ!? それどころか誇り高きシスコンにランクダウンしてる気すらしてるぞどういうことなんですかこれぇ?!」
「新八だって似たようなものじゃネエカ。姉御にぞっこんフォーリンラヴな時点で十分やばいネ」
「色々ねつ造スルナァアアアアアアアアアアア!!」
鼻をほじりながらそんなことを言っている神楽に、新八は心の底からツッコミを入れていた。
「面白い方々ですね……申し遅れました。私は紅魔館のメイド長を勤めさせていただいております、十六夜咲夜と申します。こちらで目を回されているのは、パチュリー・ノーレッジ。御嬢様の御友人でございます」
「むきゅー……もうすこしだけ、やすませ……」
「わんっ」
「て……あれ、真っ暗で、何もみえない。とうとう私の意識は何処か遠くへ行ってしまったの?」
「定春ぅううううううううううううう!! やめて!! お客様をいただかないでぇえええええええええ!!」
目を回しているパチュリーを、問答無用で定春が召し上がっていた。
あまりにも突然過ぎる展開に、パチュリーは現実を受け止めきれていない様子。新八は必死にパチュリーを救出するも、パチュリーの全身は定春の涎塗れ。
「ぱ、パチェ、なんだその面白は……くくく……っ」
「おーい、友人が大変な目に遭ってるのに笑うとか最低だぞー」
軽蔑の眼差しを向けながら、銀時は言う。
それでも尚、レミリアは笑うのを止めない。
「仕方ないわね……疲れてるからあまり魔法は使いたくないんだけど……」
そう呟きながら、彼女は自分自身に水の魔法をかける。
そうすることによって、自身に付着した汚れをすべて取り除いていた。
「え、えぇえええええええええええ!?」
魔法を目の前で見せられた新八からしてみれば、驚きの連続に他ならない。
というより、一般人はなかなか見ることの出来ない光景だろう。
「新八、さっきから驚き過ぎアル。いちいち煩いネ」
「むしろ神楽ちゃんはなんでさっきからそんな冷静でいられるのか分からないんだけどォオオオオ!?」
この場合、新八の反応がある意味正しいと言えるだろう。
「そういえば、未だに銀ちゃんに抱き着いてる女の子について、私まだ名前知らないアル。離れた方がいいゾ。天パーと糖尿病と駄目人間が移るネ」
「何人を伝染病みたいに扱ってんだゴラ。移らねぇよ? つか天パー移るってなんだ? 天パー移せるならテメェに移してやろうか?」
「あー嫌だ嫌だ。変態も移されちゃたまらないネ」
「だから移らねぇっつってんだろ!! いい加減にしろよゴラァアアアアアアアアア!!」
青筋立てまくっている銀時だが、そんな時ですらフランが離れない為、存分に動くことが出来ないでいた。
見かねた神楽は、銀時からフランを引き離そうとして、
「嫌だ!! ギン兄様にもっとくっついていたいの!!」
明らかに威嚇しているフランを見て、絶句していた。
「え、ぎ、銀ちゃん……幼気な女の子に何したアルか? 銀ちゃんにこんなに懐くなんて……やっぱり警察呼んだ方がよかったアルか……?」
「大丈夫だよ神楽ちゃん。電話ならもう準備してる」
「だから誤解だっつってんだろテメェら!! ほらフラン、テメェも自己紹介して誤解を解いてくれ。ちなみにチャイナ服の方は神楽、眼鏡は新八な」
「いちいち僕の説明雑なのは喧嘩売ってんすか」
少しキレ気味な新八。
フランは銀時に抱き着くのを止めず、そのまま新八と神楽の方を見て、こう言った。
「私はレミリアお姉様の妹、フラン・スカーレット。ギン兄様と一生一緒に生きると決めた、フィアンセなの!」
「あ、もしもし? 土方さんですか? うちにロリコンの変態天然パーマが……」
「今すぐ電話すんのやめろぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
余計な騒動を招いただけだった。
※
閑話休題。
誤解を何とか解き、パチュリーの体調も戻った所で、一同はそれぞれの定位置へと座る。
新八と神楽は隣同士に。銀時は自分の席に。
向かいのソファには、パチュリー、レミリアの順番に座り、その後ろに咲夜が控えている。
「あの、十六夜さん? 座らないんですか?」
「私はメイドですから。こちらで大丈夫です」
新八が座るよう提案するも、やんわりと断る。
そして肝心のフランが何処に座っているのかと言えば……。
「ギントキ。やっぱり私達、いつか決着をつけなきゃいけないと思うんだ……膝の上にフランを座らせる権利を手に入れる為にも」
「随分と局所的な争い過ぎて、それ必要なのか分からないんですけどォオオオオオ!?」
「何言っているメガネ。必要に決まっているだろう。フランだぞ? 可愛いだろ? だが貴様にはやらん」
「いや誰も欲しいとは言ってないんですけどね!?」
「フランを要らないだと?! 貴様それでも人間か!?」
「もうめんどくせぇよこのシスコン吸血鬼!! 話が通じないってレベルじゃねえぞ!?」
会話があまりにも成立しなさ過ぎて、新八は若干キレ気味である。
「あなた、大丈夫? そんなに大声で叫んで……喉が痛くならないの?」
「御心配ありがとうございます、パチュリーさん……」
体調が戻ったことで一番まともになったパチュリー。
「ところで、テメェらはどうしてここに?」
ある程度落ち着いた(?)所で、銀時が話を切り出す。
すると、膝の上に座っているフランが、
「ギン兄様に会う為だよ! お姉様にお願いして、一緒に来させてもらったの!」
「……悔しいけど、その子の言う通りよ。フランがどうしてもって言うから来させてもらったの。だけど、一人で行くのはまだ危険だから、こうして私達もついてきたってわけ」
「まぁ、気持ちは分からないでもない……フラン一人だと、何処行くか分かったもんじゃねえからな」
「私が行くのはギン兄様のところだけだよ?」
上目遣いで、不思議そうな眼差しを向けるフラン。
銀時は髪をぼりぼりと掻きながら、気恥ずかしそうにしている。
「それにしても新八。あの天然パーマのどこがいいのか私にはさっぱり分からないアル」
「奇遇だね、神楽ちゃん。僕もだよ……」
「ひそひそ噺してるつもりなんだろうけど、丸わかりだからな? 銀さんのハートズタボロだからな?」
「ギン兄様のハートは、フランが守ってあげる!」
「あ、あぁ、ありがとうな……」
今は純粋なフランが眩しく見えると考える、銀時なのだった。
「それと、実はもう一つ目的があってな」
「目的?」
レミリアが話を切り出すと、銀時は何を意味するのかを尋ねる。
レミリアは、目を鋭くさせて、不敵な笑みを浮かべると共に、こう宣言した。
「こっちでの私達の拠点が欲しくてな。カブキチョウという場所に、私達の別荘を建てようと思う」
「「「……へ?」」」
銀時、新八、神楽の三人は、目を大きく見開いていた。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二十訓 人が目的を話す時は不敵な笑みを浮かべるのが常なのだろうか