前回の異変が終わった後で、地味に命の危機に瀕している二人がいた。
「なんか身体が消えかかってる気がするんだよねー」
九十九八橋は、自分の身体を見ながらそんなことを言っている。
「打ち出の小槌の力が弱まってるってことか……くっ、まさかこんなことが……っ」
九十九弁々は、悔しそうに拳を握っている。
理由は単純。彼女達は前回の異変の影響を受けて生まれた存在であり、打ち出の小槌が力を失えば、当然彼女達の身体にも影響が及ぶということだ。今彼女達がこうして現界していられるのは、いわば力の残りカスを必死に使っているから。放っておけばこのままだと自然に消滅するだろう。
つまり、圧倒的ピンチというわけだ。
「あははーすごいすごーい。どんどん消えていくー」
「感心してる場合じゃないからね!? このままだとただの道具に戻っちゃうんだよ!?」
力の源を失えば、彼女達は自我を保つことが出来ない。いくら付喪神とはいえ、力なくして存在は保てない。ただし、彼女達が異変終結後もこうしてある程度現界出来ていたのも、彼女達自身の力がそこそこ強かったからだろう。故に二人としては、ここで消えたいとは思っていない筈だ。
「お二人さん。お困りの様子だね?」
そんな彼女達のところに届く、一人の声。
「誰だー?」
当然、そんな疑問が生まれる。
その質問に答えるように、声の主は姿を現した。
「私は堀川雷鼓。今の貴女達の状況を理解し、その対策を打ち出せる存在よ」
髪は赤いショートヘアーで、黒い生地の上に赤いチェックが入った上着の上に白いジャケットを羽織り、ピンクのネクタイを付け、白いラップスカートを穿いている。 そんな彼女は、両手にドラムのスティックのようなものを持ち、バスドラムのようなものの上に乗っていた。
「何!? 本当か!?」
九十九姉妹からしてみれば、それは願ったり叶ったりな展開だった。自身の存在が消えなくて済むのなら、その方法にすがりたい……と、考えて、一度踏み止まった。
「しかし、それを私たちに教えるメリットは?」
「そうだなぁ……あえて言うなら、今後何かしらの騒動が起きた時に味方を増やすことが出来る。それは大きなメリットだと私は考えるけどね。君達が私のおかげで命を止めることが出来たとあれば、感謝する他あるまい? ……って感じなら納得する?」
本当にそんな行動に出るかはともかく、慈善事業としてのみの救いではないことは確かとなる理由だった。
弁々は察する。今自分たちが相手にしているのは、とても聡明な人物。恐らく口プロレスで勝てる事はないだろう。ならば、彼女の言うことを聞いてみた方が得なのではないか?
「……それで? それってどんな方法なの?」
「簡単な話さ。幻想郷の中でのものが力を失ったのであれば、外の世界から来たものの力を取り込めばいい。私は元々太鼓の付喪神だったけど、こうしてドラムの力を取り入れたことによって今も尚ここに居続けることが出来ている。いわば生きた証人って感じだね」
今の状況を存続出来ないなら、いっそ新しく作り替えればいい。容器は既に出来ていて、中身だけ空っぽならば、新しく注げばいい。そうすれば再び力を手にすることが出来るということだ。
「しかも今度は外から取り込んでるわけだから、打ち出の小槌のようにいずれ消えゆく力ではないさ。これならば悪くないだろう?」
「なるほど……」
「なんだか面白そうー」
二人としても悪くない話だ。
だが、と雷鼓は注釈をつける。
「取り入れるものを間違えるととんでもないことになるから気をつけてな」
「例えば……?」
雷鼓は一度言葉を区切り、その後でこう告げた。
「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を取り込んだら、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の付喪神になる」
「ってなんじゃそれは!?」
たしかに、その付喪神になるのは嫌すぎるだろう……。
「ほかにも、ジャスタウェイを取り込んだら、ジャスタウェイの付喪神になる」
「だからなんだそれ!?」
およそ彼女達にとっては聞き覚えのなさすぎる語群だが、ご存知の方なら分かるだろう……あれらの付喪神になってはいけない、と。
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第二百十九訓 物は選ばないと後々後悔する事もあるから十分気を付けろ
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