銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第二百二十四訓 迷ったときには共に歩む者が隣にいると安心する

 封獣ぬえは、宴が開かれている博麗神社を一人眺めていた。そこで繰り広げられているのは、妖怪と人間が共存している空間。

 

「…………なんで」

 

 ぬえにとって、人間とは憎むべき対象。所詮人間と妖怪は分かり合えるわけがない。それが当然の帰結だと考えていた。だからこそ彼女は華陀と結託し、今回の異変を起こすことによって人間を排斥しようとしていた。結果的にそれは二人の侍とその仲間たちによって阻まれて、失敗に終わった。

 

「ここにいたのじゃな、ぬえ」

 

 ぬえのそばに現れたのは、マミゾウだった。彼女はぬえによって幻想郷へ招かれた存在。古きからの友。ぬえに近寄るその表情は、心配するような笑顔だった。

 

「こちらの世界に呼び出しておいて、結果としてこのざま……マミゾウには本当に申し訳ないことをした」

「よいのじゃ。儂はこうして幻想郷を知ることが出来た。そしてこの場所を守らんとする者達の強さを知ることが出来た。何より、友の助けとしてこうして舞い戻れたことを嬉しく思っておる……結果としては、儂も負けてしもうたのじゃがな」

 

 何処か納得しているような、そんな笑顔を浮かべているマミゾウ。彼女にとって、今回の一件を通じて幻想郷に足を踏み入れることが出来たことこそ、幸せなのかもしれない。

 

「これからどうするつもりじゃ?」

 

 そんな彼女から発せられた言葉は、ぬえがどうするべきかということ。彼女がこれから幻想郷という場所で、どのような生き方をするのかということ。

 

「……分からない」

 

 だが、ぬえは今もなお迷っていた。

 

「私は、ここまで自分の目的の為に動いてきた……けれど、それらは結果的にすべて裏目に出て、こうして失敗に終わった……何をしても、私はもう思う通りに行動出来ないんじゃないかって……私の行動、私の選択には……意味なんてないんじゃ……」

「ぬえ」

 

 優しく、しかしそれでいて力強い声だった。それ以上の言葉を発することを許さないような、そんな気迫すら感じられた。その気迫に押される形で、ぬえは口を閉じてしまう。

 そんな彼女の頭を……マミゾウは優しく撫でていた。

 

「誰にでも過ちはある。すべてが上手くいくことなどあり得ぬのじゃ。何かが上手くいけば、何かが失敗するやもしれぬ。そしてそれが大きな影響を及ぼすことだってあり得るやもしれぬ。だからこそ大事になってくるのは……自身が行動したその後じゃ」

「その、後……」

「うむ。行動には常に結果が付き纏う。それがどのような結果であれ、必ずしもよい結果とは限らぬ。じゃが、結果を見て次にどんな行動を取るかは自身で選択出来ることじゃ……後悔するのは悪いことではないが、立ち止まっていてはいつまでも次へ進めぬぞ」

 

 行動からもたらされる結果は、その時になってみなければ分からない。だが、見ているだけでは始まらない。行動し、自分からどうするかを考えていくことも大事なのだ。

 

「それに、もう分かっておるのじゃろ?」

「え……?」

 

 そしてマミゾウは、ぬえにとっては予想もしていなかった言葉を発する。

 

「人間というのも、案外悪い者ばかりではないということを」

「!?」

 

 薄々、ぬえは感じ取っていた。坂田銀時という男を通じて……その周りにいる者達を通じて……人間と妖怪の関係性における、可能性というものを。

 

「確かに、人間には悪い者もおる。じゃが、それと同じくらいに良い者も存在するということじゃ。自分のことを考えれば良いのに周りのことしか考えない者や、その程度ではやられないことを確信出来る信頼……あの者達を通じて、そんな可能性を見出しておるのじゃろ?」

「…………」

 

 ぬえは言葉を返せなかった。

 マミゾウが告げたその言葉が、まさしく真実だったからだ。

 

「儂はこの地で生きていこうと思う……じゃから、共に迷おうぞ。そして、さらに良き道を選べるよう、共に歩もう……友よ」

 

 優しく、マミゾウは手を差し出す。

 ぬえはその手を……掴んだのだった。

 

 かくして、幻想郷を崩壊の危機に晒した異変が幕を降した。

 だが……次なる異変の足音もまた、聞こえてくるのやもしれない。

 

 

 

 

 

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かくして、こうして宴は幕を降しましたー。
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