とある場所にて実しやかに囁かれる噂があった。その噂が広まる要因となったのは、一人の女の存在だった。
「女が急に牢屋の中に現れた? 確か元から牢獄に打ち込まれてなかったっけ?」
「どうも、牢屋に閉じ込めておいてその存在を忘れてたらしいな……日の目見ることねぇから、そいつらも思い出すことがなかったらしい。そしてある日突然……」
「その女が姿を現した、と」
彼らが話しているのは、かつて牢に入れたはずの女性ーー華陀についてだった。本来、彼女は永遠に牢獄から出られないはずだった。そんな女狐が、何らかの手段でそこから消え去り、そして何らかの外的要因によって突然元に戻った。
「ソイツァ譫言のように呟き続けてるそうだ……『幻想郷』と『忌々しい猿共』と」
「へぇ……」
無邪気に笑う男の目が光った。
それはまるで、新しいおもちゃを手に入れた子供のよう。しかしそれでいて、狂気すら伺えるような目。
「幻想郷なんざ興味はねぇが、あの女狐が『忌々しい猿共」と称するってこたぁ……」
「侍が出入りしている可能性がある、ってことだよね? ということは、そこにはきっと彼らも……」
「いるかもしれねぇな」
眼帯をつけていないもう片方の目が鋭くなる。彼らが思い浮かべている人物は共に同じ。だが、そこに抱かれる気持ちはあまりにも違いがありすぎる。
「幻想郷なんて面白そうな場所に、侍が出入りしているなんて……オラワクワクすっぞ!」
「勝手にしてろよ」
「つれないなぁ。だけど、何も無関係ってわけじゃないだろ?」
「戦闘狂いの酔狂ってわけじゃねえんだ。壊す価値もねぇ所なんざ興味もない」
「怖気付いちゃった?」
「そんなわけ……」
「死人も闊歩するような世界。そう聞くと俄然興味湧かない?」
男の動きが止まった。
そんな様子を見て、嬉しそうに笑顔を見せている。悪戯が成功した子供のように無邪気だ。
「忘れ去られた者が行き着く先が幻想郷なら、世界から忘れ去られて死人となった者もまた、その地に現れるとは思わない?」
「何が言いたい」
放たれる殺気に慄く様子は一切ない。それどころか、その反応を待ってましたと言わんばかりの笑顔。
「夜王鳳仙。紅桜。人斬り仁蔵……名だたる者が、その命を散らしている。そして、幻想郷からあの女狐が帰ってきているということは、自由に行き来出来るということ……」
確かに、男の言うことは事実かもしれない。
華陀が突然消え去り、そしてこうして幻想郷から帰ってきた。それはつまり、二つの世界を行き来出来るような何かがあるということを示していることに他ならない。これを利用すれば、かつて死んでしまった者達を連れてきて戦力強化に繋がる。彼からしてみれば、あわよくばそういった者達と戦うという野望も抱いているのかもしれない。
「…………なるほどな。つまり、戦力を強化するにはもってこい、と」
しかし、もう一人の男はそこまで乗り気ではなかった。
理解はしていても、そこまで気分が乗らないといったような感じだ。
「あれ? 意外にも大人しいね。その点を気にしているのだと思ったんだけど」
「…………そんなんじゃねえよ」
男は視線を合わせようとしない。
点を仰ぎ見て、一体何を考えているのだろう。
その思考の先にある何かを見出すことは、彼にしか出来ない。
「まぁいいや。とにかくさ、なんとかしてその地に向かってみようよ。もしかしたら意外な入口があるかもしれないしさ……晋助」
「勝手にしろ……神威」
高杉晋助と神威。
この二人がもし幻想郷に関わりだしたとしたら……果たしてどうなってしまうのだろうか。
静かに、影が入り込み始めていることに、幻想郷の住人はまだ気付いていない。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百二十五訓 暗躍し始める影
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