銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第二百三十二訓 人は時折目の前が見えなくなる程暴走する

 今回の件について盛り上がっているのはなにも博麗神社だけではない。守矢神社でもまた、今回の人気投票について話が行われていた。

 

「これはある意味信仰に関わるのでしょうか……?」

 

 この神社の巫女である東風谷早苗は、わりと珍しく真剣な表情を浮かべている。ただし彼女の頭の上には、『4』という数字が浮かんでいる為になかなかシュールな光景を生んでしまっていた。ちなみに、この場にいる二柱の神については、揃いも揃って仲良く『2』の文字がふよふよとしている。

 

「ここにいる三人合わせても八……あの眼鏡くんとその眼鏡を足した数よりも下だとは……」

「やめてよ神奈子……そう聞くとかなり悲しくなるじゃん」

 

 実際その通りなのだから、現実というのは実に非情な物である。守矢神社として獲得した総票数は八であるという事実は揺るがない。これはもはや決定事項なのだ。

 

「幻想郷にいる人達からの信仰と、実際に小説を読んでいる読者からの信仰はまた別問題だよ、早苗。だからそこまで気落ちする必要はないさ」

「神奈子様……」

 

 今回の投票において、自分達が不甲斐ない結果に終わったのは責任があるのではないか? 早苗がそう考えているかもしれない、と神奈子は思ったのだろう。自分の子供をあやす親のように、慈愛に満ちた表情で早苗に語りかけていた。しかし、早苗の身体はそれでま震えている。

 

「違うんです、神奈子様……確かに、信仰に関わることであるとすれば、私の努力が至らなかったと考えておりました……ですが、それ以上に悔しいことがあるんです……」

「悔しいこと?」

 

 今度は諏訪子が尋ねる。

 そして早苗は、自身の胸の内を明かした──。

 

「順位の上で銀時さんと並べられなかったんです!!」

「「そっちかィイイイイイイイイイイ!!」」

 

 今まで流れていた真面目な空気はどこへ消え去ってしまったのか。ある意味ブレていないともとれる早苗の言葉は、神奈子と早苗をツッコミ役へと変貌させるには十分すぎた。

 

「フランさんやこいしさんはまだわかりますよ? でも!! よりによって眼鏡が三位ってどう考えてもおかしいじゃないですか!!」

「確かにそれについては私も思ったけども! 無機物なのにヒロインと並んでいるって考えたけども!」

「そうですよね神奈子様!? こんなの異常事態なんですよ!! 私だって相当銀時さんにアピールしているのに、素の順位で銀時さんの隣に並べられなかっただけじゃなくて、よりによって眼鏡やサングラスに負けるなんて……!!」

「やめてぇえええええ! 今まで考えないようにしてたけど、私達自身の票がサングラスに負けたことを考えたくはなかったの!!」

 

 諏訪子もそのことは気にしていたようだ。

 

「第一、サングラスや眼鏡とか、無機物がランキング上位に食い込んでくるような人気投票って何さ!? なんかもう色々とおかしいでしょこの作品!?」

「落ち着け諏訪子。メタ発言しないで」

 

 あまりのショックさに、どうやら諏訪子はメタ発言まで繰り出す始末。正直な話、ジャスタウェイまで入り込むランキングは不気味でしかない。ある意味では究極のネタとも言えるだろうが……。

 

「こうなったら、諏訪子様、神奈子様……やるしかありませんよ」

「「何を?」」

 

 立ち上がるや否や、突然決意に満ち溢れた表情を見せる早苗。そんな彼女に対して、不思議そうな目で見つめる諏訪子と神奈子。そして早苗は、自身が決意した内容をくちにする。

 

「奪ってやりましょう。他人の票を」

「「またんかい早苗!!」」

 

 当然、二柱の神は暴走する現人神を止めようと躍起になったという。

 

 

 

 

 

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