頭の上に獲得した票が表示されるという状況はかなり異質で、それは時として自身を評価する上での材料として活用することが出来たり、あるいは、
「あら、良かったわね。頭の上にある『1』という数字が輝いているわよ? それはそれはもう貴女を象徴するかのように、強く燃えているかのように。まぁ私は貴女の三倍はもらっちゃってるわけだけどね! 妹紅!」
「そういう輝夜はえらくまた中途半端な数字だなぁ……ネタとしても美味しくないし、かといってとりわけ上の方に位置しているわけでもなく、こうして滅多に出番がない人にまで煽られた上、後から出て来た人達に次から次へと抜かされていく気分はどうなんだ? 私は元々そこまで出番多い方ではないから、自分の順位に納得いっているけどな、輝夜」
こうして他人を煽る材料としても活用する事が出来たりする。
ここは永遠亭。たまたま別件で訪れていた妹紅を見つけた輝夜が、今日もこうして喧嘩売りに行ったのである。元々彼女達にはとある事情がある。そこから今のような喧嘩し合う仲となっているようだ。喧嘩するほど仲が良いとは言ったものだが、彼女達がもしその気になれば周りへの被害など微塵も考えずに激しい戦闘を繰り広げる可能性すらある。その度に永琳に怒られるのだが。どちらが主人なのか分からない感じである。
「お二人とも落ち着いてください。今は患者を治すことが最優先ですから」
輝夜の前ということもあり、ある程度かしこまっている永琳が止めに入っている。
「患者、か……頭から血を流して倒れていた人が複数人……」
「しかもほとんど顔見知りばかりと来たわね。人間、妖怪、妖精……被害の幅は語りしれないときた」
一応、妹紅と輝夜の二人も、今回の事態をなんとかしなくてはと考えているようだ。
普段はそこまで忙しいというわけではない永遠亭に、次から次へと人が運び込まれていくこの状況。人里まで薬を売りに行っている鈴仙が、見つけた患者を次々に搬送していることによって出来上がっている。今や薬を売りに行くことよりも患者を見つけて迅速に搬送する事の方が優先度が高くなっていた。
とはいえ、患者達の命に別状はなく、血を流しているからといってすぐさま命を落とすことはない。しかし、死なないことが良いことというわけではない。こうして『患者が増えすぎている』状況こそ最大の問題なのだ。
「この調子で運び込まれてくるのは私達としてもあまりよろしくない状態です。人里に行き来している妹紅さんなら、今何が起きているのか情報収集出来るかと思いまして、御助力を願いたくてお呼び立てしました」
「確かに、私ならその辺り情報をえられるかもしれない……慧音にも応援要請しておくよ」
「助かります」
輝夜は、そんな二人のやり取りを眺めながら考える。今回の事件、犯人像については大凡検討がつかない。だが、なり得そうな人物の特徴は割り出せる。
「なら、犯人は『ランキングに載ってない人物』から探すべきかもしれないわね」
「載っていない人物……?」
輝夜の言葉に反応したのは妹紅だった。
「どれだけ票が低かったとしても、最低でも2票得られればランキングに名前は載る。だけど、もしランキングに載っている人が票を盗んだとしたらどうなると思う?」
「票数が変動するのだから、その人のランキングが上に上がる……」
「なるほど。つまり元々票を持っている人がやると特定されやすいというわけですか」
「その点、一票しか獲得出来なかった人はランキングに載っていない。そしてランキングに載っている中で最も順位が低い人の人数はかなりいる。つまり、そこに食い込もうともすぐには気付かれない。そしてそのタイムラグを利用して、一気に上位に登り詰める……雑だけどこんなところじゃないかしら」
輝夜は普段外には出ないが、頭の回転については回る方である。犯人視点で考えて、今回の推論を立てたのだろう。事実、その場にいる二人は納得していた。
「そして、妹紅は犯人ではないと確信出来たわ。貴女の票数に変動がないもの」
「そりゃどうも……複雑な気分だけれど」
一票しか持ってないが故に犯人から外される複雑さ。ランキング外であることは、ある意味心に響くことなのだろう。
「とにかく、私としては旦那様が心配だわ……一刻も早く時間を解決しないといけないわ。あぁ、護衛の為に私が旦那様のそばにいくのも……!」
「ニート姫が行ったところで道中で討たれて終わりでしょうに」
「それは宣戦布告と捉えても?」
「喧嘩っ早いのは嫌いじゃないよ。いいよ、表出ようか」
「ここでおっ始めないでください!!」
苦労人永琳。
彼女の苦労が報われる日は訪れるのだろうか……。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百三十四訓 表示されていることこそこれ以上ない位の証明となる