叩かれた二人はそのまま意識を失う。新八のことを助けたその人物は、他に大きなハリセンを握りしめている。腰には二本の剣がかけられていることから、この人物が何者であるのかを新八は判別することが出来た。
「妖夢さん!?」
魂魄妖夢。
白玉楼の庭師兼剣術指南役を勤めている少女である。そんな彼女は今、武器としていつも使っている剣を収めてハリセンを使って戦っている。新八はそんな光景にどこか覚えがあった。
「よかったです……まだご無事な方がいらっしゃったようで」
対する妖夢は、困惑する新八を見てむしろ安心している様子だった。恐らく、彼女は最初新八も叩こうとしていたのだろう。しかし、三人のやりとりを見ていくうちにそれは違うということに気づいたに違いない。
ちなみに、叩かれた二人の格好はいつも通りのものに戻っている。
「これは一体何があったんですか……?」
事情を知っているであろう妖夢に対して新八が尋ねる。今はとにかく現状把握をするべき状況。何が起こっているのかが分からないと、新八の行動指針が固まらない。今は少しでも情報が欲しい状態なのだ。
妖夢はハリセンを降した後で、新八に向き直って語り始める。
「数日前、何かが幻想入りしたとの情報が文屋より入りました。それはいつもの通り新聞の形で流されたのですが、その日を境に幻想郷にいる人たちの様子が少しずつおかしくなっていったのです」
「どう、おかしくなったのですか?」
「……一日前とはまるで別人。かつ、発言に関しても『まるで既に二年経過した』かのように語るのです。私や幽々子様は冥界に居たので難を逃れることが出来ましたが、その他の人たちはどうやら巻き込まれてしまったみたいです」
「……ん?」
ここで新八は引っかかる。
妖夢は今、『まるで二年が経過した』かのように、と告げていた。その状況を、新八は知っている。かつて経験してきたことの中に、同じ様な事象があった筈だ。思考の中からそれを検索しているうちに、妖夢はその答えとも言える言葉を口にする。
「その人達の共通点としては……全員の身体に、イボのような物があったということ」
「なんでイボまで幻想入りしてんだァアアアアア!!」
寄生型エイリアン『キューサイネトル』。またしてもこいつが悪さをしていて、今のような状況を作り出していたようだ。
それゆえに、今まで出会ってきた人物達の中では既に数年間経過したことになっているが、実際にはそんなことはない。言ってしまえばこれはまやかし。
「やはりあなた達の世界の物でしたか……坂田さんに解決策を伺っておいて正解でした」
「銀さんに会ったんですか?」
「はい。輝夜さんや早苗さんに付き纏われているところを見かけたので助太刀したのです……これもやはりそのイボの……」
「いえそれはいつも通りです」
悲しいかな、輝夜や早苗が銀時に近づくその光景は前からのものである。彼女達の中でどう変換されているのかは不明だが……。
しかし、これで判明したことがある。
「なるほど。幻想郷にいた人達にイボは寄生し、僕や銀さん、神楽ちゃんのように、イボのことがニュースに取り上げられた日に幻想郷にいなかった人には寄生していない……というわけですか」
何故か長谷川のことが話題に上っていたが、それはレミリアや咲夜が作り出した話なのか、それともたまたまその時だけ幻想郷での仕事を任されていたのか。
ともかく、この影響がもし幻想郷の至る所に広がっているとすれば、膨大な量のツッコミを入れていかなくてはならないという計算になる。
「幸い、感染の中心から外れている人達もいるようです。例えば私や幽々子様のように、人里近辺におらず冥界にいた人とか……」
「それなら、地底も安心ですね」
幻想郷の地上で広まっているのだとすれば、直接的な関わりが薄い地帯や上空については対象外と見ていいのだろう。もちろん何らかの形で感染経路があった場合は除かれるが。
「とにかく、今のところは私と貴方でなんとか切り抜けなくてはいけません……協力、してくださいますか?」
「お安い御用です」
「話が早くて助かります」
新八は、普段ツッコミ用に使っているハリセンを取り出す。その様子を確認すると、妖夢は安心したように微笑んだ。
そしてすぐに真剣な表情へと変えて、
「この状況……このおかしな状況を打破するため、叩き斬って差し上げます……!」
新八と妖夢は、幻想郷中にツッコミを入れる旅に出たという……。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第二百四十訓 俺達の戦いはこれからだ! で終わるような話は大抵その後が描かれない