銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第二百五十訓 空から降ってくるのが女の子であるとは限らない

 その日、幻想郷から眺める月は満月だった。とはいえ、何か特別なことがあるわけでもない。せめてあるとすれば、綺麗な月を肴として酒を飲む位だろうか。そんな中、今回の話が始まった段階でBGオンリーでダラけていた万事屋の三人はというと。

 

「いやなんであの暴走輝夜姫のところ行かなきゃなんねぇの」

「まぁまぁ。せっかくのお誘いなんですし、断る理由もないじゃないですか」

「美味しいご馳走用意してるって書いてあったアル。特に銀ちゃんは絶対に連れてくること、とも書いてあったネ」

「あの女絶対なんかしでかす気だろ。銀さんのやる気はいつになく下限突破してるぞ」

 

 どうやら輝夜に招待されて永遠亭へ向かっている途中のようだ。

 

「永琳もいるわけだし、その辺りは問題ないんじゃないかしら」

「そうだぜ! それに、銀さんがとっ捕まった所で私達にはなんの影響もないから、別に問題ないぜ」

「銀さん的には問題ありなんだよォオオオオオオオ!!」

 

 彼らの横にはちゃっかり霊夢と魔理沙もついてきている。魔理沙としては正直銀時が輝夜にとって喰われたとしてもそこまで問題ないようだ(ある意味その後で魔理沙の胃に穴が空きかねない事態が発生しそうではあるが)。

 

「にしても、あいつらが満月の夜にこういったことをしようとするなんて、珍しいわね……」

 

 霊夢がポツリと呟く。

 

「? どういうことですか?」

 

 その呟きに対して新八が疑問を抱いた。

 

「満月って言ったら、輝夜姫的には身を潜めていたい頃合いじゃないの。そのせいで前の異変が起きたわけだし」

「あー……確か月の使者がどうのこうのー、とか言ってた気がするぜ」

 

 霊夢と魔理沙の言う通り、永遠亭にいる人たちが以前の異変を引き起こしたのは、満月の晩に月の使者が訪れることを恐れたからである。別に訪れることはないということは判明したわけだが、それでも尚苦手意識というものは持つ物である。彼女達とて例外ではないのだろうと霊夢は考えていたのだ。

 

「ま、心境の変化でもあったってこったろ。そこまで深く考える必要なんざねぇんじゃねえか」

「……そうかもしれないわね」

 

 両手を頭の後ろに組んで、月を見上げながら歩く銀時。その言葉に答える霊夢。

 迷いの竹林から見える月は何処までも輝いている。強い光を放ちながら、そこに鎮座し続ける。美しい晩と称するには十分な物だった。

 そうして一同が歩いていると。

 

「…………お?」

 

 神楽が何かを見つけたらしい。

 銀時達もその声に合わせて視線を向ける。

 そこに居たのは。

 

「えぇ……これどうすればいいのさ……確かに私は悪戯するのは好きだけどさ……いきなり空から降ってきたと思ったら、都合よく落とし穴に落っこちるとかあるの……? ていうかこれ生きてる? 一応死なないように大量にクッション的な何か詰めてるけどさ……えぇ……」

 

 落とし穴の先を見つめながら、何やらぶつぶつと呟いている因幡てゐの姿があった。彼女の言葉を信じるならば、恐らく落とし穴に嵌っただれかがいるのだろう。

 

「…………お前、とうとうやっちまったのか」

「やってないよ!? ってうひゃあ!! いきなり声かけてくんなよ!?」

 

 ジト目で話しかけてきた銀時に対して、てゐは純粋に驚いたような反応を取っていた。

 

「何してるんですか?」

 

 てゐの近くまで歩み寄る新八。穴の中に何かあるのかと思って覗こうとした所、

 

「な、ななななな……め、眼鏡!! ち、近づくなー!」

 

 めっさ照れて顔真っ赤にしたてゐに突き飛ばされて、近くの木まで吹き飛ばされた。

 

「なんでじャアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 当然、理不尽な暴力に対してツッコミを入れざるを得ない新八。しかしそれだけでは終わらない。木に激突したことにより、地面より大量の槍が出現! 

 

「うわぁああああああああああああ!!」

 

 器用に避ける新八だったが、上空から縄が降ってきて彼の体を……亀甲縛りに縛り上げた。

 

「いくらなんでもあんまりだろこれェエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

 

 志村新八、完全にとばっちりを喰らった瞬間である。

 

「あ……めんごめんご」

「謝れそこの悪戯兎ィイイイイイイイイイイ!!」

「まぁいいじゃねえか。滅多に出来ねぇ刺激的な体験を一足先にすることが出来たんだからよ。大人の世界へようこそ」

「何イケボでど変態発言してんだ天然パーマァアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 わざわざご丁寧にサムズアップまでしている辺り、確信犯である。

 

「……近寄るなヨ変態。変態が移るアル」

「いやちげぇよ!? 縛られて喜んでねぇからな!?」

 

 新八のすぐ近くで痰を吐く神楽。控えめに言って汚い。

 

「……で、結局なにがあったのよ」

 

 いつまで経っても話が進まないと判断したのか、霊夢がてゐに質問を投げかける。

 すると、穴の先を指差しながら、彼女は言った。

 

「空から兎が降ってきて、この穴に落ちた……」

 

 

 

 

 

 

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