第ニ十六訓 寒い時は人肌に触れるとなんだか心も暖まる気がする
とある日のこと。
銀時達がいつものように万事屋でぐうたらしていた時の話である。
「そういや、紅魔館2ndG、出来上がったんだってな」
「マジでその名前に決まったの!? 何考えてるのあの人たち!?」
「おぉ、なかなか強そうな名前ネ。結局私のネオ紅魔館アルティメットドラゴンは採用されなかったアルな」
「微妙に変わってるし採用されるわけねぇだろ!!」
「ちなみに、管理者として住み込みバイトしてくれる人募集してたみたいでな。この前長谷川さんが住み込みの清掃員として雇われたらしい」
「あ、長谷川さんですか。あの人根は真面目そうですし、いいんじゃないですか?」
「けどマダオだヨ? 咲夜にけつ引っ叩かれる未来しか見えないネ」
「どちらかというナイフでけつ串刺しの方が十六夜っぽくないか?」
「あはは! 確かにギン兄様の言う通りかも!」
「咲夜さんが仕事道具で何かをするとは思えないんですけど……って、何食わぬ顔でフランちゃんが銀さんの膝の上にいるんですけどぉおおおお!?」
なぜか平然とフランが銀時の膝の上に乗っかっていた。
というか、新八と神楽もそれが当然のことのように受け入れてしまっていたほど、かなり自然に溶け込んでいた。
「なに? ギン兄様の膝の上に乗るのがそんなに悪いことなの?」
「いや、そうじゃないんだけど……あまりにも自然だったからつい……」
「ギン兄様ったら、なかなか私のところに遊びに来てくれないんだもん。この前も幻想郷に来てたって新聞で見たのに、全然紅魔館来てくれないし……」
「あん時はマスゴミに放置されてとんでもねぇ修羅場に巻き込まれてたからな……」
頰を膨らますフランに説明する銀時。思い出すだけで冷や汗がダラダラと流れ出していた。
「うぅ……次絶対に遊びに来てね! じゃないとギン兄様、私から離れられなくしちゃうから!」
「へいへい……」
頭を撫でながら、わりかし適当に返事をする銀時。
「この人本当にわかってんのかな……銀さん、適当に返事するのはよくないですよ?」
「んなことねぇぞ? 美鈴との約束もあるし、行ってやらねぇと……」
「ギン兄様? 美鈴との約束って、ナニ?」
「「あ」」
神楽と新八は、フランの声色より察してしまう。
坂田銀時は今、確実に地雷原をタップダンスし始めた、と。
「いや、十六夜から聞いたんだけどな。前の戦いで負けたのが悔しいそうで、手合わせして欲しいって頼まれてな。正直面倒だから断りてぇけど、修行の一環とか言われちゃ仕方ねぇからな……」
「そうなんだ……それならいいよ!」
「「ふぅ……」」
どうやらタップダンスしても地雷が発動することはなかったようだ。
「あとねー、最近幻想郷寒いの……ここにはギン兄様もいるし、とってもあったかいから……」
「ん? さむい? それおかしくねぇか? 時間の流れ自体はそっちもこっちもかわらねぇはずだろ?」
一部の場所を除いて、基本的に幻想郷と銀時達の住む世界はほぼ同じ時間の流れ方をする。即ち、季節の流れも同じであることを意味しているのだ。
現在、歌舞伎町は春。そこそこ暖かい日が続いている最中。花粉症に悩まれる人も出てくるのではないかと思われるような感じである。ならば、幻想郷も同じような天候でなければ話が通じないのだ。
それがどうだろう。フランは今『幻想郷は寒い』と言った。それは春が来てない事と同義なのではないだろうか。
「銀さん、なんだかそれっておかしくないですか? 幻想郷って四季もちゃんと存在するんですよね?」
当然、そのことに新八も気付いていた。
だが、今この場において現状を分析することが出来る人物はいない。
幻想郷については幻想郷の住人に聞くのが一番だが、今この場にいるのはフランのみ。彼女は495年間ずっと地下室に閉じ込められていたため、外部の状況はわからない。
となれば、
「坂田さん。依頼をしたいのだけど……」
外部の人間ーー今回で言えば八雲紫に事情を伺うのが早かった。
※
結論から言うと、文字通り『春が来ない』異変とのことらしい。本来ならば桜が咲き乱れる季節なのに、降り積もる雪。そのせいで幻想郷が寒くなっていたと言うわけだ。
フランの言うことは事実だったと言うわけになる。
「で、その異変解決を依頼するってことは、当然誰が犯人なのかも目星はついてるのか?」
「……えぇ。大体の目星はついておりますわ。ただ、その目的だけが分からないのです」
「なるほどな……で、春を奪うなんざ風流なことをする奴は一体何者なんだ?」
銀時が尋ねる。
紫は一度目を伏せて、その後でゆっくりと告げる。
「西行寺幽々子。私の古きからの友人よ」
「紫さんのご友人ですか!?」
西行寺幽々子。
紫の古きからの友人。
今回の異変を引き起こしている張本人。
「……ん? 待てヨ? 古きからの友人ってことは、その女何歳アルか?」
「聞くなチャイナ娘。話の腰を折る前にテメェの腰折るぞごら」
「話の腰折ってんのあんた達だろ!! とにかく説明を続けてください!!」
相変わらず仲の悪い神楽と紫であった。
「ねぇねぇ、ギン兄様。どうしてあの二人仲悪いの?」
「さぁな……なーんか神楽が一方的に突っかかってるけど……よくわからん」
「ふーん……ギン兄様に被害が及ばないならそれでいいや」
本当にどこまでも銀時を中心に話を進めるフランなのであった。
話を戻そう。
「で、なんでテメェは犯人の目星もついてるのに、犯人止めに行かねぇんだ?」
「友人だからですわ……止めに行かないのではなく、止めに行けない、のです」
「そりゃなんでまた?」
「……彼女は私の意見を聞きません。それだけでなく、彼女が何を考えているのか、何を企んでいるのかを考えることは難しいでしょう。旧知の友である私達でも、通じ合っていないものなのですわ。目的も分からず、話を聞き入れてもらえない相手に時間を割くのならば、私としては幻想郷を維持させることに注力したいものでして」
「なるほどな……幻想郷の管理人であるがゆえに、そこを手放して新たな問題引き起こしちゃたまったもんじゃねぇってことか」
「察しが良くて助かりますわ」
前回の異変と違い、今回に関しては犯人の目星はついている。即ち、目的地が分かっているのは明らかにいい点だろう。
だが、目的がはっきりしない。前回ならば『種族が吸血鬼である』ことが功を成し、ある程度の予測が可能であった。今回は違う。つまり、根本的に異変を解決する為には、犯人を突き止めて辞めさせるか、強制的に叩く他ないということになる。
「まぁ……最初の依頼を受けちまってるからな。今回も断るつもりはねぇさ。代わりに、コイツらも連れて行っていいな?」
「えぇ。人出は多い方が宜しいですから。既に神社には霊夢と魔理沙の二人も待ち構えていますわ」
「用意周到だな……ったく。仕方ねぇ。万事屋に任せろよ」
「えぇ。僕達におまかせください!」
「首の下洗って待ってろヨ」
「神楽ちゃんそれ決闘相手とかに言うセリフだから」
これで少なくとも、紫は五人の協力者を得ることが出来た。
「ギン兄様が行くなら私も行く!!」
元気よく手を挙げるフランがいた。
「お前も来んのか? 遊びじゃねえんだぞ?」
「でもギン兄様、人出は多い方が良いって言ってたよ? それに私、ギン兄様より多分強いよ?」
「…………なんも言えねぇ」
それは事実である以上、銀時は反論の台詞を用意することが出来なかった。
「フラン、貴女も協力してくださるのね」
「うん! お姉様に伝えておいて!」
「分かりましたわ。お伝えしておきますわね」
優しく微笑みながら、紫は言葉を返す。
これで人員は六人。探すには十分と言った所だろうか。
「じゃあ早速、博麗神社へ……」
紫の先導の元、銀時達はまず博麗神社へと向かうこととなった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第ニ十六訓 寒い時は人肌に触れるとなんだか心も暖まる気がする