チルノがぶっ飛ばされて数分が経過し、それでも一同はまだ雪の中を歩いていた。
「しっかし本当寒いな……こう寒いと気分が滅入っちまいそうだ」
はっきり言って、現在幻想郷は寒い。雪が降ってる程なので、決して気温は高くないだろう。
「本当……こたつでぬくぬくしてる神楽ちゃんが羨ましいですよ」
「ていうか何しにきたんだよあいつ。後で覚悟しとけよなあいつ……」
「ギン兄様、どうするおつもりなの?」
フランが上目遣いで尋ねる。
「そうだなぁ……こたつから放り出して一日中外に縛り付ける」
「地味な嫌がらせね……」
「ていうか陰湿だぜ……」
「銀さんそれはちょっと……」
「やめてー! その冷たい眼差しを俺に向けるのはやめてー!」
雪よりも冷たい眼差しで銀時を捉える一同なのだった(フランだけは別)。
閑話休題。
とにかく今は進む他ない為、寒い中ではあるが、雪に混じる桜を頼りに進んでいく。
とは言え、見渡す限りの雪、雪、雪。
「こう雪がたくさん積もってますと、雪合戦の一つでもやりたくなりますよね?」
「おーそうだな。お前一人でやってこい」
「一人雪合戦とか悲しすぎるにもほどがあるだろ! 壁打ち以上に寂しい何かを感じるよ!!」
適当に流す銀時なのであった。
「私もパスね……雪当てられた時なんか冷たいじゃない」
「相変わらず霊夢ってばそうなるなぁ……私はちょっとやってみたいぜ」
「お? なんだ魔理沙。子供っぽい一面もあるじゃねえか」
「そのニヤニヤ面はやめて欲しいぜ銀さん……」
苦笑いしか浮かべない魔理沙。
「ギン兄様、ゆきがっせんってなに?」
唯一、雪合戦をしたことのないフランが銀時に尋ねてくる。
少し考えるそぶりを見せて、彼は答えた。
「雪を弾にした弾幕ごっこみてぇなものだな。まぁ、弾幕と違って、積もってる雪を使って自分で弾作らなきゃならないから、あんだけ大量に張ることは出来ねぇけどよ」
「雪玉作って相手に当てるだけのシンプルな遊びなんだぜ! 今は異変解決の途中だから無理かもしれねぇけど、次の機会にやろうぜフラン!」
魔理沙は笑顔でフランに提案する。
フランはそれに対して、
「なんだか楽しそう……!」
ワクワクしている様子だった。今の説明を聞いて少しやりたくなったのだろう。
「それならこれから雪の中で弾幕ごっこをする〜?」
その時、銀時達の耳に新たなる人物の声が聞こえてきた。
咄嗟に後ろを振り向く一同。
そこにいたのは、薄紫色のショートボブにターバンを巻き、紫色のロングスカートに白いエプロンをつけた、おっとりとした感じを見せる少女。
「私はレティ・ホワイトロック。雪女よ〜」
その少女は、どこまでもおっとりと、間延びしたような話し方で彼らの前に立ちふさがった。
「おいこら雪女。俺達はちょっくらこの先に用事があるんだよ。だから退いてくれねぇか?」
「だめよ〜。だって冬が終わっちゃうもの」
「……なるほど。アンタはこの冬を楽しみたいが為に、続いて欲しいと願うのね」
霊夢が納得したように頷く。
雪女である彼女は、基本的に冬にしか行動しない。その他の季節になると、大抵は陽が当たらない暗い所でのんびりひっそりと暮らしているのだそうだ。
それ故に、冬が長続きする今、彼女は活発的になっている。
「そういうこと〜。せっかくの冬よ? 楽しまなきゃ損でしょ。冬にしか出来ないことだってあるのよ?」
「コタツムリできるのは冬の特権だからな……たしかに惜しいな……」
「もう少し前向きな想像してくれませんかね銀さん」
ダメ男を見る目で新八は銀時を見つめていた。
「でしょ〜? だから今日のところは大人しく……」
「申し訳ありません、レティさん。貴女の事情は分かりましたが、僕らにも事情があります。ですから……押し通らせてもらいます」
真っ先に前に立ったのは、意外にも新八だった。こんな時のために腰に挿しておいた木刀を抜き、構える。
それを見たレティは、楽しそうな目をする。
「へぇ、向かってくるんだ〜……ちょっと意外だったかも」
「銀さん、霊夢さん、魔理沙さん。ここは僕に任せてください。ついでに戻って神楽ちゃん引っ張ってくるんで」
「……へぇ、新八。なかなかいい目するじゃない」
霊夢は素直に感心していた。
第一印象を見た時には、そんなに頼りなさそうに見えたのだ。しかし、そう言ってのけた新八の目は、銀時と負けず劣らず。
「……新八、任せたぜ」
「はい!!」
侍の目だった。
「行かせると思うのかしら〜?」
大きさの違う弾幕を張り、レティは行く手を阻もうとする。
しかし、
「力づくにでも行かせてもらうぜ!」
箒に跨った魔理沙が銀時の手を掴み、乗せる。
「あーっ!! ギン兄様を返せー!!」
負けじと猛スピードで後を追うフラン。
その後ろを、霊夢が追う。
「追おうだなんて考えないでくださいね。万事屋、志村新八がお相手させてもらいます」
「……あの三人を追いかけるのも楽しそうだけど、貴方と戦うのも同じくらい楽しそうね〜。いいわ、乗せられてあげる〜!」
相変わらずの間延びしたような声だが、その中には何処か楽しさも含まれているように聞こえた。
先程三人に向けて放った弾幕を、今度は新八に向けて放つ。
「これが、弾幕……っ!」
彼にとっては初めてとなる弾幕ごっこ。
しかし、彼は銀時同様弾幕を放つことは出来ない。
即ち勝敗を決するには、弾幕を避けつつ、新八自身の攻撃を当てなくてはならない。
相殺することは、難しい。
「でも、これなら……!」
まだ避けることは出来る。
多少のダメージは仕方ないと考え、擦り傷はもはや気にも留めない。
本当に間近にきた弾幕は斬り伏せる。そうして少しずつレティとの距離を縮めていく。
「冬符『フラワーウィザラウェイ』」
だが、そうして近づいた時にレティはスペルカードを発動した。
自身の周囲にレーザーが放たれる。
「なっ……」
なんとか新八はその場を転がることで躱すが、レーザーからは小さな弾幕が散らばっており、ゆっくりと新八目掛けて飛んでいるのが見えた。
「追尾……っ」
「私は雪女だよ〜? つまり、今はとても強いってこと」
天候は雪。季節は雪。レティにとってこれ程の好条件はなかった。通常よりも力を出せる今において、彼女はまちがいなく、強い。普通の人間相手ならばまず負けることはないだろう。
「なるほど……一筋縄ではいかなそうですね」
近付いてくる弾幕を斬り伏せつつ、新八は彼女との距離が遠ざかっていくのを感じる。
だというのに、
「……どうして貴方は、笑っていられるの?」
彼は笑っていた。
それが不思議でならなくて、レティは思わず尋ねてしまう。
「これは追尾型。一度目標を定めたら、その目標に向けて飛んできます。そしてその標的は僕……即ち、他の人には当たらないということ!」
「それがどうしたというの?」
「だから、この勝負……僕の、いや」
「「万事屋の勝ちだ(ネ)」」
「なっ……!」
突如聞こえてくるもう一人の声。
レティは混乱する。
相手にしていたのは間違いなく一人だった筈。
それなのに、それなのに。
「ホワチャー!」
番傘を振り下ろした神楽が、レティの動きを封じてみせたのだ。
「まったく……遅いよ神楽ちゃん」
「つい寝てしまったアル。でもお陰様で間に合ったみたいネ」
「そうだね。ちょうどよかったよ神楽ちゃん」
ハイタッチをしながら、そんな会話を交わす二人。
そんな彼らをみて、
「……私の負けね〜。まったく、最後の最後まで面白くさせてくれるんだから〜。私、ちょっと貴方のこと気に入っちゃったかもしれない〜」
「あ、あはは……それはありがたいお言葉ですね」
少し顔を赤くしながら、新八はドギマギしている。やはり彼はこう言ったことには慣れていないようだ。
「新八、童貞精神丸出しね」
「それとこれとは関係ねぇだろ!!」
最後まで締まらない彼らなのだった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第ニ十八訓 冬にしか出来ないことってあるよね
なんと今回は意外にも新八メイン回でした!