新八達がレティを食い止めている間、銀時達は犯人たちがいると思われる場所の目の前まで辿り着いていた。そこはとてつもなく長い階段。その何処までも先に、一つの建物があるような場所。
「おいおい、随分なところに来ちまったな……一体ここは何処なんだ?」
「何処って……ここ、冥界よ?」
何聞いているんだこいつ、と言いたげな表情を浮かべつつ、霊夢が答えた。
「……は? 冥界?」
「そう、冥界。死者が集まる場所とも言うべきかしらね」
「……つまり、ここにいるのって」
「あぁ、幽霊だぜ?」
笑顔で魔理沙が言い放ったところで、銀時の身体中から冷や汗が流れ始める。
「お、おい。マジで言ってんのか? ここ、本当に幽霊出るの?」
「あれ? ギン兄様、どうして震えてるの?」
この中で一番純粋なフランが、心配そうに頭を撫でながら尋ねてくる。
しかし、銀時は本当のことを話せるわけがない。
何故なら……。
「ははーん、さては銀時。アンタ、幽霊が苦手なのね?」
「ちちちちちちちちち、ちげぇし?! べべべべべべ、べつにそんなんじゃねえし!! ただちょっと、暗いから大変だなぁとか思ってただけだししししししししし!!」
「思いっきり動揺しちまってるぜ銀さん……」
呆れ半分心配半分といった感じで、魔理沙が首を振りながら呟いた。
と、そんな時だった。
「……なぁ、霊夢。なんか音楽が聞こえてくるぜ?」
「音楽? ……本当ね」
「なんだろう、演奏してるのかなー?」
魔理沙、霊夢、フランの三人は、聞こえてくる音楽に対して冷静に反応する。一方で、心中穏やかではない銀時に関しては、音楽が聞こえてきた段階で恐怖MAXヤバ過ぎ状態。
「バイオリン、ラッパ、キーボード……まるで宴会でも盛り上げているかのようね」
「これからこの先で花見でも始まるってのか? だとしたら凄い風流だぜ?」
「はなみってなぁに?」
「あぁ、桜を見ながら食事をしたり騒いだりすることよ、フラン。多分貴女もやれる日が来るわよ」
「本当? お姉様に聞いてみようかなぁ……せっかくカブキチョウに紅魔館2ndG建てたし」
「……こう言っちゃあれだけど、レミリアのネーミングセンスって時々ぶっ壊れてる気がするぜ」
「同感ね……」
フランより告げられた紅魔館の別荘の名前は、やはり霊夢や魔理沙にも受けはよろしくなかったようだ。というより、この名前を満を持してつける段階で、レミリアは一体どんな思考をしていたのだろうか。
そうこうしている内に、音色は段々と彼らの元へ近づいてくる。
「お、おい、テメェら、やっぱり、ここはひきかえさねぇか?」
「何言ってるんだぜ銀さん! ここまで来てそりゃねぇぜ?」
「観念なさい。もう敵はすぐ近くよ」
「大丈夫だよ、ギン兄様。何かあったら私が守るから!」
情けない男を守る幼女の図が完成しそうな状況。
魔理沙と霊夢は冷たい眼差しで銀時を見つめる。
「止めろ!! そんな目で俺を見るんじゃねェエエエエエエエエエエエエエエ!!」
流石に耐えきれなくなった銀時は、叫び声で何とか恐怖を克服しようと試みる。
と、その時だった。
「「「ようこそー!」」」
という、三人の妖精の声が聞こえてきた。
「……え?」
ポツリと呟いたのは銀時だった。
その声が聞こえてきたのと同時に、演奏もはっきりと分かる形で聞こえてきた。
三角錐状の帽子、フリル付きのベスト、そしてスカートを履いた三人の少女。色違いで同じような服装をしていることから、三姉妹であることが予想される。
「私はルナサ・プリズムリバー」
と、黒+赤+黄色のカラーリングの少女。
「メルラン・プリズムリバーだよー!」
と、薄桃+青+水 のカラーリングの少女。
「そして私が、リリカ・プリズムリバー!」
と、赤+緑+茶のカラーリングの少女。
「「「三人合わせて、プリズムリバー三姉妹!」」」
三人の声が合わさり、演奏は更に続く。
「……アンタ達は何しに来たの?」
呆れた表情を浮かばせながら、霊夢が尋ねる。
三姉妹の内、ルナサが答えた。
「ここで今夜宴が開かれるって話だから、演奏しに来たんだよ」
「そうそう! それで私達は今、盛り上げる為にこうして演奏しているの!」
「私達の演奏に聞き惚れな、ってね!」
メルラン・リリカの三人も続ける。
そうしてやっと気を取り戻した銀時は、
「マジで花見でもするつもりなんじゃねえか……?」
と呟いた。
割とその発言を決定づける証拠として、
「……なぁ、あれ、でっけぇ桜が咲いてそうな気がするぜ?」
魔理沙が指を差した先にあったのは、遠目からでも咲いているのが見て分かる程の、桜。そこに向かって、『春』がどんどん吸い込まれていくのが見て取れる。
つまり、ここの主が、何らかの手段を用いて『春』を奪い、桜の花を大きくさせているのだ。
「けど、あれはまだ満開じゃないみたいなの」
「だから満開になったら宴が始まると思うから! それまでの辛抱だよ!」
「先行きたければ進むといいよ! すっごく綺麗だから!」
意外にも、三姉妹は道を譲ろうとしていた。
彼女達からしてみれば、邪魔をする理由がないのだろう。戦う理由もなく、ただ演奏出来ればそれでいい。銀時達がどうしようとも、彼女達は演奏するのを止めないだけだ。
「あれがさくらなんだぁ……凄い綺麗……」
遠くから見ているが、初めて見る桜に、フランは心を奪われていた。
そんなフランの頭を撫でながら、
「歌舞伎町にはもっと面白ぇモンたくさんあるからな。それも楽しみにしておけよ?」
「うん! ギン兄様と一緒に見に行く!」
「……俺、捕まるんじゃねえかな」
別の意味で冷や汗を流しながら銀時はポツリと呟く。
確かに、フランとの一件が耳に入っただけで豚箱入りしそうになった程度だ。
共に回っている様子を見られた日には、街中の至るところから軽蔑の眼差しを浴びせられ、挙句豚箱から出られなくなるのではないかと考えてしまう。巡るのはいいが、新八や神楽も連れていこうと決意した銀時なのだった。
「それじゃあ、私達は花見でもしに行こうかしらね」
「そうだぜ! そして、帰ってもう一度花見をしようぜ!」
「うん! 今度はみんなで騒ぐんだよね?」
「……そうだな。ちょっくら、上に居るだろう奴らと花見しに行こうか」
霊夢、魔理沙、フラン、銀時の四人は、長い階段を上り始めた。
※
長い階段を登り終えた彼らの前に立ち塞がったのは、一人の少女だった。
銀色に輝くボブカットには黒いリボンをつけており、その瞳は灰褐色。白いシャツの上に青緑色のベストを履き、動きやすさを重視にしたスカート。何より特徴的なのは、横に浮く白い塊と、手にする長い刀。
彼女は侵入者達の姿を確認すると、
「私は魂魄妖夢。白玉楼の庭師であり、幽々子様をお守りする警備役。何をしに来たのかは……聞くまでもありませんね」
「ちょっくらそこに咲いてる桜が綺麗なもんでな。つられてきてみりゃ、春が集まってるときた。だからまぁ、帰って花見酒でもしてぇもんだから、取り返しにきただけだ。どうだい? 一緒に花見でも」
「戯言を。幽々子様の邪魔をしに来たというのであれば、敵であることは間違いありません。そんな相手と杯を交わすなど、言語道断です」
「だろうなぁ……霊夢、魔理沙、フラン。テメェらなら飛べる筈だよな。先に行け」
木刀を抜き、構えながら、三人に告げる。
「け、けど、ギン兄様……っ」
真っ先に止めようとしたのはフランだった。彼女は銀時を守る為に一緒に来ている。ここでもし別行動をして、彼女に銀時が倒されてしまったとしたら……。
しかし、銀時は笑ってこう言った。
「たまには俺の強さ信じろよ。アイツぶっ倒して、追いつくからよ」
「……アンタがそう言うんだから、大丈夫ね」
「あぁ、銀さんならすぐ来るよな? 先に行ってるぜ! 後で来て出番なかったとしても後悔するんじゃねえぜ?」
「……分かった。ギン兄様。必ず、来てね」
霊夢、魔理沙、フランの三人は、その場から飛んで先へ行こうとする。
「先に行かせるなど、誰が……」
「俺が認めた」
「なっ!」
刀を振るい何かをしようとした妖夢を止めるように、銀時は木刀を振るう。
妖夢はすぐさま標的を銀時へと変えて、木刀を止めた。
「なる程……その刀は伊達じゃねえな?」
「馬鹿にしないでもらえますか。私の刀は、祖父から受け継いだ一子相伝の剣術です。師から学びしこの剣術を以て、貴方を必ず打倒します」
「師匠、か……」
その響きに、何処か胸を打たれる。
彼の中で、一瞬とある人物が浮かび、すぐに消えた。
「そうかよ。まぁ、今宵はこれだけ美しい桜が咲き乱れてるんだ。まだ満開ってわけじゃなさそうだが、満開になる前に、この異変終わらせてやるよ」
「させません。幽々子様が目的を果たす為、私は刀を振るいます」
距離を取り、もう一度刀を構える妖夢。
「……貴方の名前は?」
「万事屋、坂田銀時」
「坂田銀時、ですか……覚悟、よろしいですね?」
「御託はいいから、とっととかかって来いよ。生憎、フラン達に必ず後で行くと約束した身だからな」
「そんな約束、果たされることはありませんよ……っ!!」
互いに軽口を言い合った後、妖夢と銀時の剣が、ぶつかり合った。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第ニ十九訓 花見をする時には音楽と騒ぎが付き物
段々と山場へと向かっておりますよー!
次回は銀時vs妖夢です!