銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第三十四訓 油断大敵

「終わった、のか……?」

 

 ポツリと呟く銀時。

 彼の目の前には、気絶している幽々子がいた。それは間違いなく戦いの終わりを意味している。

 

「ギン兄様ー!」

 

 戦闘が終わったことを信じているフランが、銀時めがけて一直線に飛んできて、その胸に飛び込んでくる。受け止めた銀時はその場に座り込んだ。

 

「流石は銀さんだぜ。そして、新八と神楽もありがとな!」

「今回は貴方達がいなければどうなってたかわからなかったわ……ありがとう」

 

 魔理沙と霊夢の二人が、素直にお礼の言葉を述べる。

 

「いいってことネ!」

「神楽ちゃん最初寝てたけどね……」

 

 新八の呟きはどうやら神楽の耳には届かなかったらしく、彼女はニヤニヤと笑みを浮かべている。

 一方でフランは、ここぞとばかりに銀時に甘えているようで、抱きつきながら胸元にうずくまり、すりすりとすり寄っている。

 

「ギン兄様……私頑張ったよ? たくさん頑張ったよ? だからご褒美が欲しい!」

「……ったく、あとでレミリアにもらえばいいだろう?」

「やだ! ギン兄様からがいい!」

「仕方ねぇな……」

 

 フランにせがまれる形で、銀時は頭を撫でる。その度にフランの表情は緩まり、心から嬉しく、そして甘えているのが見て分かった。控えめにいって、可愛い。

 

「これで幻想郷に春は戻るアルか?」

「当の本人である幽々子が倒されたから、もうすぐ春が奪われた場所へと帰るはずよ。もしかそうならなければ、ふん縛ってやらせるだけよ」

「こういう時だけ霊夢はアグレッシブだぜ……」

 

 何故か霊夢はお仕置きとかを考える時だけは本気になるという。やはりそこは主人公と言うべきか。魔理沙はため息混じりにそうつぶやいた。

 そう、これで今回の一件は幕を降ろす。誰もがそう考えて、油断してしまった。

 

「…………皆さん、なんですか、あれ」

 

 新八がポツリと言葉をこぼすまでは。

 

「ん?」

 

 言われて銀時は、新八が指差した方を見る。そこにあるのは西行妖。ついていた花弁は散っていき、元の場所へ帰るはずなのに。

 

「なによ、これ……」

 

 それは幽々子の前に集まり、人の形を成していく。所々欠けている部分があったり、影のように揺らいでいる部分もあるが。

 

「何が起こっている、アル……?」

 

 右手に紅色に輝く刀ーー紅桜を握り締めた、西行寺幽々子の形をしたナニカが、銀時達の前に姿を現した。

 

「っ!! フラン! みんな! 離れろ!!」

 

 その影は銀時の姿を捉えると、一目散に迫ってくる。銀時はフランのことを優しく離し、そのあとで敢えて影へと向かっていった。

 ガギン! という鈍い音が鳴り響き、それが戦闘開始の合図であることを誰もが認識するほかなかったのだった。

 

「そんな……! 異変は終わったんじゃ……!」

 

 新八の叫びに明確な答えを用意できるものはこの場にはいない。だからあくまで、これは予想となる。

 

「……幽々子は西行妖を満開にさせる目的として、埋まってる人を蘇らせるといっていたわ。そして目の前に現れたのは、西行妖の力で創り出された影」

「まさか……埋まっていた人物って……幽々子ってことになるのか? 信じられないぜ……」

 

 霊夢と魔理沙の推論が正しければ、幽々子が蘇らせようとしていた人物こそ、生きていた頃の西行寺幽々子ということになる。先ほど対峙した幽々子は亡霊。そこに矛盾は生じない。

 

「そして、そいつに紅桜が同調したってか……? 笑えねぇ話だな、おい……」

 

 あの時、妖夢の手によって仁蔵は葬り去られた。しかし、仁蔵が手にしていた刀ーー紅桜は葬り去られていなかった。そして西行妖は、最後の抵抗を試みるために、紅桜と同調した。

 

「ギン兄様!!」

 

 フランは銀時を助太刀する為近寄ろうとする。しかし、目の前にいる影は邪魔者の存在を許さない。

 

「っ!!!」

 

 反魂蝶 -八分咲-。

 無数に広がる蝶形の弾幕、全方位に張り巡らされるレーザー。密度が濃いとかそういう問題ではない。まるで全てを出し切って消え去ろうとしているかのようだ。

 

「みんな! ここは危険よ、逃げるわよ!!」

「で、でも! 銀さんがまだあそこに居るんだぜ!?」

「銀ちゃんを放って逃げられるわけ……!」

 

 霊夢の提案にもちろん一同は反対する。

 

「やだ!!! ギン兄様も一緒に帰るの!!!!」

 

 特にフランは顕著だった。今回ばかりはあまりにも異常すぎる上に、命を落とすかもしれない。その危険性を認知出来てしまっているからこそ、フランの焦りは尋常ではない。とはいえ、近付こうにも弾幕が張り巡らされて進むことなどかなわない。全ての力を出しきろうとしているのであれば時間切れまで待てばいいのだが、その間に銀時が無事でいる保証などない。

 

「テメェら……早く逃げろ……っ」

「銀さん、何を……!?」

 

 銀時の言葉を聞いて、新八が何かを察する。

 そして銀時は、

 

「わりぃな……テメェの悲しみ請け負うわけにゃいかねぇのよ。だからせめて……共に地獄へ落ちようじゃねえか。安らかに、永遠に……」

「っ!! 駄目!!!! ギン兄様!!!!」

「ーーーー!!」

 

 影は声なき叫びを上げつつ、紅桜の刃で、

 

「ぐっ……あっ……」

 

 銀時の腹部を貫いた。

 

「イャアアァアアアアアアアアアアァアアアアアアアアアアァアアアアアアアアアア!!」

 

 泣き叫ぶのはフランだった。

 目の前で、大切な人が、凶刃に倒れそうになっている。

 彼女は495年生きているが、その精神は酷く幼い。大切な者の命が失われていく様を見るのに慣れていない。

 もちろんそれは他のメンバーも同様だ。特に万事屋の二人については顔を真っ青にしている程。

 

「うごけねぇ、だろ……そのままなら、うごくことなんざ、できやしねぇだろ……だから……これで、おわりだ……っ!!」

「!?」

 

 片方の手で刃を握りしめ、抜けないように力を入れる。

 そして銀時は、もう片方の手に握りしめている木刀で、影を一閃。

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 切り裂かれた彼女は、桜の花びらを撒き散らしながら、人の形を失っていく。手に握りしめていた紅桜もまた、桜の花びらと化してそこから消えていった。

 やがて影が完全に霧散し、そこに残っていたのは……。

 

「ぎ……ギン兄様ぁああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 腹から血を流し、体温がどんどん奪われていく銀時だけだった。

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

 

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三十四訓 油断大敵

 

 

 

 




異変解決、ですね…。
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