銀時が目をさましてから数日後の、某所で行われたとある会議の模様。
「貴女が西行寺幽々子ね……」
「そういう貴女はレミリア・スカーレット。誇り高き吸血鬼と伺ってるわ」
「此度はうちの妹が世話になったみたいだな」
「あらあら。噂に違わず妹が大好きなようね。文屋の方がシスコンと記事で書いていたのを拝見させていただいてるわ」
「よし烏天狗は後でお仕置きしよう」
「それで? 今日は一体どんな要件で? まさかそれを言うためだけに私を呼んだわけではないわよね?」
「もちろんだ。貴女も、異変解決後の宴を開くのだろう? それならば、うってつけの場所があると私自らが伝えにきたのだ」
「紅魔館で宴会を開こう、と?」
「いや、ちょっと違うな」
「すると、どちらへ?」
勿体ぶるように言葉を溜めた後、誇り高きシスコン吸血鬼は宣言する。
「宴会を開く場所は……紅魔館2ndG、だ」
※
「と、言うわけで長谷川様。当日は何卒失礼のないようお願い致します」
場所は変わって、紅魔館2ndG。
廊下の掃除をしていたマダオこと長谷川に伝言を伝えたのは、紅魔館のメイド長こと十六夜咲夜。
「え? ちょ、マジですか? それっていつ開かれて……」
「明日でございます」
「明日ー!?」
まさしく『そんなの聞いてないよ』状態。長谷川の反応はもっともであるし、何より伝えた張本人である咲夜もまた、苦笑いを浮かべているレベルだった。
「無茶なのは百も承知ですが、それでも当日は大切な御客人がいらっしゃるのも確かです。なるべくそれまでに準備の方をお願い致します。勿論、私や美鈴、小悪魔も手伝いますので」
「分かりました……がんばりまぁす……」
涙目になりながらも、本日も残業が確定した長谷川なのだった。
※
「よぉ銀さん! 邪魔するぜ!」
「銀時。食材を運ぶのに通らせてもらうわよ」
「銀時さん。今度剣の修行を一緒にさせてくださいね!! あ、これは幽々子様の分の食材です」
宴会前日。
もはや分かりきっていたことではあるが、何度も万事屋銀ちゃんを往復する霊夢達。
その回数の多さに、流石の銀時も、
「いい加減別のところにも入り口つくらねぇか!?」
と叫んでしまうほどだった。
何せ幻想郷と歌舞伎町を繋いでいるのは、万事屋銀ちゃんの居間にある押入れのみ。紅魔館2ndGにも繋ぐという案も最近になって生まれており、現在スキマ担当の紫と交渉しているところであるとのこと。
「ところで銀さん、気になることが一つあるんだけど質問してもいいか? 拒否られてもするぜ」
「いやなら許可取んなくてもよくね?」
いつの間にやら準備など放置して、ソファに座ってくつろいでいる魔理沙。そんな魔理沙が、銀時をーーより正確に言うと、銀時の周辺を見つめながら、一言。
「前よりフランとの距離、近くなってる気がするぜ?」
今までならば、膝の上に座ってる程度がデフォだった二人の関係。それが今はどうだろう。膝の上に座っているだけならまだしも、あろうことか、向かい合って、抱き着いている。もう油断してるとキスしまくるのではないかと思われるほど。というかそのせいで銀時の顔が見えない。
「気のせいだろう」
「どう考えても気のせいじゃないぜ!? 新八! 神楽! これどう考えたって……」
「魔理沙さん。ぼくがこの状況、ツッコミを入れてないとお思いで……?」
「なん……だと……?」
打ちひしがれている新八の姿がそこにはあった。
経験値で言えば彼のほうが明らかに上だ。故に当然ツッコミを入れたのだ。入れたのだが……結果は悲惨なものだったのだ。
今の彼は、ツッコミとしての自信を喪失してしまっている。
「ギン兄様……もう、離さない……っ」
「絶対距離感やばいと思うぜ? これ、兄妹のような関係から進歩し過ぎて一夜の過ち犯してしまいそうなくらいのものになっちまってるぜ? いやさすがにこれはやばくない?」
フランの声色が、ただ単に甘えているだけのそれとは随分質が変わってしまっている。例えるなら、好感度がカンストしてしまったギャルゲーのヒロインのような、そんな感じ。
「何言ってんだ魔理沙? フランだぞ? 今はこの前の反動があってすげぇ甘えてるだけだろ?」
「銀さんはもう少し危機感覚えようぜ!? 一番アンタが気にしなきゃいけないところだぜ!?」
当事者であるはずの銀時は、どこか間違った分析をしている。何故かこういう時に疎い銀時だった。
「そういえば魔理沙、今回宴会っていうのを紅魔館2ndGでやるんだったよネ? 美味しいもんたくさん出るアルか?」
神楽に関しては、宴会の方に夢中になっているおかげで、銀時とフランについては眼中にないって感じだ。
「え? あ、あぁ。何と言っても、幽々子と妖夢の二人がそこら辺大量に調達してるからな。期待してもいいと思うぜ」
「本当アルか!? 楽しみアル!」
心の底から期待している神楽。
おそらく彼女が宴に参加すると、大食い選手権みたいな感じになることだろう。
「そういや、紅魔館2ndGでやるってことは、長谷川さんがいるってことだよな?」
「あ、確かにそうなりますね」
ようやっと立ち直ったのか、新八も会話に参加する。
「あの人、ちゃんとやれてんのかね……住み込みのバイトっていうから、きっと今までよりはるかにマシになってるだろうが」
「そこは気にしないでも平気、だそうよ。この前咲夜から聞いたから間違い無いわ……それより魔理沙、早く食材持って来なさいよ。いつまでもサボってんじゃ無いわよ。私が働いてるのよ? アンタがサボってどうすんのよ」
霊夢が不機嫌そうなのを隠すことなく、魔理沙の首根っこを掴む。
「うわっ! ちょ、ちょっと休憩してただけだぜ!? だから霊夢、その手に出してる弾幕を抑えるんだぜ!?」
「ちょっとー!? ここを消し炭にする気ですか!? やめてくださいよ!?!?」
流石に慌てて新八が止めた。そんな彼に免じて、霊夢は弾幕こそしまうが、その代わりに魔理沙を掴む手の力が強まった。
「ちょ、れい、む、くるじ……」
「煩い。ここにいると何だかムカムカすんのよ。だから早く行くわよ」
「ぢょっ、わがっだがら、ぐび、ばなじで……」
ズルズルと引きずられていく魔理沙と、フランとイチャイチャしてる銀時を一瞥して、霊夢の不機嫌さはより増した。
去り際に、霊夢は銀時に一言。
「ロリコン」
「ちょっと待て!? そう言われる筋合いはねぇぞ!?」
「銀ちゃん……流石にそれは言い逃れ出来ないネ」
「自首しましょう? そして心ん入れ替えって帰って来てください」
「なんでそんなに冷てぇの? なんなの? 局所的に氷河期なの?」
ある意味息の合った新八と神楽のコンビネーションに、銀時のライフポイントはゴリゴリと削られていた。
「霊夢さんや魔理沙さんも苦労しますね……」
「ホントネ。天パーが自覚ねぇから尚更タチ悪いある」
「いや本当になんの話してんの?」
ぽかんとしている銀時を尻目に、二人の言葉によってフランは何かを感づいたようだ。
銀時を抱きしめる腕の力が、強くなっていた。
「いででででで! どうした、どうしたってんだ!?」
フランは答える気配を見せない。いや、不機嫌そうな表紙を浮かべつつ、銀時から頑なに離れようとしない姿勢を見たら、もはや答えと言っても過言では無いのだが、如何せん相手はちゃらんぽらん。全然伝わってる気配はない。
「「……はぁ」」
その光景を見て、神楽と新八はため息をつく。
宴会が楽しみであるのと同時に、どんな修羅場が待ち受けているのか、彼らにとっては恐怖でしかなかった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第三十六訓 どうしようもない企みでもきちんと計画は立てた方がいい