「ん……あたまいてぇ……ここどこだよ畜生……」
目が醒めると、そこは一面緑の大森林。いきなり木々以外には何もないような場所に飛ばされた銀時は、まず己の荷物を確認する。
財布、一張羅、木刀、ジャンプ。
「よし、なんら問題はないな」
この状況で
荷物を確認し終えた銀時は、辺りを見渡す。
視界に広がる木々の他には、辺り一面に広がる紅い霧。幻想郷という場所特有のものなのか、あるいはこれが紫の言う『異変』というものの前触れなのか。少なくとも、今の銀時にとっては判断材料が少なすぎて、判別する事が叶わない。
「ったく、あの
悪態をつきながらも、今の銀時に出来る選択は、とにかく前に進むことのみ。道標やコンパス等もない状態での散策となってしまったが、贅沢は言っていられない状況下。
とはいえ、ここで銀時はふと思い至る。
「……ん? 周りに誰もいない?」
少し考えた後、むしろこれはチャンスなのではないかと思う銀時。
辺りをキョロキョロと見渡した後、大きく息を吸って、腰を落とす。そのまま右手と左手を自分から見て右下まで持って行き……。
「かーめーはーめー……はーっ!!」
森一帯に広がる銀時の叫び声。反面、返ってくる言葉はなし。
しばらく静寂の時間が続いた後、
「今のは溜めがイマイチだったな……おっかしいなぁ、銀魂乱舞だとこれでかめはめ波撃てたのに……」
もう一度、かめはめ波を撃つポーズを取る。
そして。
「きゃー……めぇー……ひゃー……めぇー……はっ!?」
じーっ。
そんな効果音が出てくるほど、すごく見つめてくる少女が一人いた。
黒と白のワンピース型の洋服、金髪に赤いリボンを付けた少女は、紅い瞳でじーっと銀時を見つめていた。
「じーっ」
「……いや、これはね? あの、エクササイズなんだよ? だからそんな目で見ないで? ね? お願い?」
一気に恥ずかしさがこみ上げてくる。例えるなら、誰もいないと思って、一人で勝手に厨二台詞を叫んでいたら、たまたま通りかかったクラスメイトの女の子に聞かれていた時と同じような、そんな恥ずかしさ。そりゃもう、メチャメチャ、イケてない。
「じーーっ」
「ああそうだよ! 年甲斐もなく、かめはめ波の練習してたよ! わりぃかよ!!」
いっそ潔いほどの開き直り。
先程よりも少女の視線が強くなった気がするが、銀時はそれでもめげることがない。
そして少女は、やっと口を開いたと思ったら、こんな台詞を告げた。
「あなたは、食べてもいい人類?」
「……………………は? 食べる? イート?」
銀時は混乱している!
あまりにも唐突過ぎる言葉に、銀時の思考はショート寸前。
「あのー、お嬢さん? 俺を食べても美味しくねぇよ? むしろ腹壊すよ? だから、食べるのはちょっとやめといた方が……」
「そーなのかー、じゃあいただきまーす」
「聞けよこのがキィいいいい!! テメェの耳はただの飾りがこのヤロォオおおおお!! 遠回しに食べるなって言ってんのがわからねぇのかぁあああああ!!」
「そーなのかー、じゃあいただきまーす」
「ただの野生児じゃねえか!! 話聞くどころか、右から左へ聞き流して、本能の赴くままに動いてるだけだろぉおおお!!」
銀時の抵抗も虚しく、少女と銀時の戦いは幕を開けてしまった。
「ちっ……!」
舌打ちをしつつ、木刀を持つ手に力を込める。
ほぼ同時に、少女を中心として小さな光の弾幕が放たれた。
「くっそ……!」
幸い、追尾してこないことを悟った銀時は、関係ないものは無視し、自分に当たりそうなものだけを避ける。なるべく少女と距離を取り、すぐにでも逃げられるように。
「逃げるのは良くないぞー。闇符『ディマーケイション』」
「!?」
銀時の眼の前で、少女が、宙に浮いた。
それだけではない。
少女を中心として、青、緑、赤の順番で小さな弾幕が展開される。更に、その中の一部は銀時めがけて飛んできていた。
「こいつ……!」
近づいてきた弾幕のみ、銀時は木刀で切り裂く。
「おお……すごい!」
本当に心から感心している様子の少女。
「そりゃどうも……!」
幻想郷における戦闘はこれが初めてとなる銀時。弾幕を張る戦い方を知らないわけではないが、それにしても随分と数が多いと感じていた。
「それなら……夜符『ナイトバード』」
「また新たなやつか……!?」
自身はふよふよと至る所を彷徨いながら、弾幕を張り続ける少女。
大きく広げられた両手には、少しずつ光が集まってきているのが銀時の視界に映る。
「まさか……!」
咄嗟に、地面を強く蹴って速度を増し、近くにあった木を蹴っ飛ばして、進行方向とは逆に転がっていく。
次の瞬間、銀時が先程までいたところを目がけて、少女の両手からレーザーが放たれた。
それは地面を大きく抉り、もし直撃していたらタダではすまなかったことをおおいに物語っていた。
「ビームサーベ流かよ! そんなの反則だろうが!!」
「反則もなにも、立派な技だから仕方ないよー。それにしても、これも当たらないのかー。弾幕も使ってないのに、すごいぞー」
「へっ、生憎こちとら、毎日阿婆擦れ共と戦国時代送ってるような身でな。そう簡単にくたばるわけにゃいかねぇのさ」
「そーなのかー。よくわからないけど、なんかすごそう」
「ほとんど話わかってねぇだろ?」
少し荒くなった息を整えて、もう一度構える銀時。
対する少女も、これで最後にすると言わんばかりに構える。
「そういえば、おじさんの名前聞いてなかったー。私はルーミア。あなたは?」
「おじさんじゃねえ。坂田銀時。宇宙一馬鹿な侍だ、この野郎!!」
「あははー! 闇符!」
銀時は地を駆け、少女――ルーミアは最後の攻撃を繰り出そうとしたところで、
「霊符『夢想封印』」
「え? にゃああああああ!」
突然、銀時の真上を、赤い弾と無数の札が飛んで行き、それがルーミアに直撃したかと思った次の瞬間には、目を回して銀時の目の前に落ちてきたルーミアの姿があった。
「妖怪相手にそれだけの大立ち回りが出来るなんてね。あんたが紫の言っていた外来人ね」
背後より声が聞こえてくる。
その声の主を確認するために、銀時は後ろを振り向いた。
そこに居たのは。
「私は博麗霊夢。こっちは霧雨魔理沙よ」
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第ニ訓 隠れて何かをする時はまず周囲を確認すること