銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

41 / 254
第三十九訓 守る事と救う事は根本的に違う

 フランは銀時の姿を確認すると、一目散に駆け寄ってくる。そしてそのまま勢いを殺すことなく、

 

「アサルトバスツゥァァア!!」

 

 銀時の鳩尾へダイレクトアタック。

 食らった銀時は意味不明な奇声をあげながら、何処か遠くへとぶっ飛んでいた。もちろんフランと共に。

 

「「…………え?」」

 

 これには月詠と幽香の二人も驚きを隠せない。何せ二人で修羅バトル繰り広げていたと思いきや、いつの間にやらやってきた人物に漁夫の利を得られ、更に結構な距離まで離されてしまったからだ。

 

「初めましてになるな」

 

 そんな二人の前に、カリスマシスコン吸血鬼ことレミリア・スカーレットが、それはもう極上の笑みを浮かべながらやってくる。その横には涼しい顔をした咲夜も控えていた。

 

「紅魔館の吸血鬼とそのメイドね。私は風見幽香」

「月詠じゃ。して、お主らは……?」

「あぁ。この館の主人であるレミリア・スカーレットだ。こっちはメイド長を勤める……」

「十六夜咲夜と申します」

 

 レミリアの紹介に預かって、咲夜は綺麗に頭を下げる。

 

「お主じゃったか……歌舞伎町に面妖な建物を建てたのは」

「如何にも。紅魔館2ndGはどうだい?」

「ある意味街の話題を掻っ攫ったと言っても過言ではなさそうじゃ。事実、知り合いから出てくる話題の大半はここの話じゃったし……って、セカンドジー?」

 

 最後に付けられた言葉の意味を月詠は理解することができなかった。

 

「ところで、先程銀時に特攻したのは何者じゃ?」

 

 ここで月詠は、突然目の前に現れたダイレクトアタックガールのことについて尋ねる。

 するとレミリアは、それはそれはとても愛おしい物を眺めるかのような最高級の笑顔で、

 

「私の可愛い可愛い妹の、フランドール・スカーレットだ!! めちゃめちゃ可愛いだろ!? それはもう目に入れても痛くないどころか、むしろもっと入れたいくらいだ!!」

「御嬢様、カリスマブレイクされております……っ」

「いやお主も鼻から血流れ出ておるぞ。とんでもない量流れておるぞ」

「これは汗です」

「汗にしては随分と勢いよく流れ出る赤色ね……」

 

 これには流石の幽香もため息混じりに言わないわけにはいかなかった。

 もう、この場は別の意味で収拾がつきそうにない。

 

 ※

 

 一方、吹き飛ばされた銀時はと言うと。

 

「あらあら。いきなりこんなところまでダイナミックエントリーしてくるなんて……」

 

 飛んだ先には幽々子がいた。

 ただし、その隣には神楽も控えており……。

 

「って、なんだこれ!?」

 

 目の前てフードファイトが開かれていた。

 神楽も幽々子も、それはそれはもうめちゃくちゃ食べている。どこに吸収されていくのかわからないが、それはそれはもうとんでもない量の食事を食べている。

 

「幽々子様は食事をたくさん食べられますから……負けず劣らず、神楽さんも食べるようですが……」

 

 何処か遠い目をしながら妖夢が呟く。

 

「お前……苦労してんだな」

「わかって……くださいますか?」

「うちも似たようなもんだ……おかげで家計が火の車」

「わかります。それすごいわかります……毎日の食費を削れば、もっと他のこともできるんじゃないかって……」

「……今度、旨い酒でも飲み行くか」

「えぇ、是非とも……」

 

 二人がそうして飲み会の約束をしたところに、

 

「ギン兄様!!」

 

 とうとうしびれを切らしたフランが、銀時のことを思い切り抱きしめた。

 

「あばばばばば! どうしたフラン!! 銀さんの肋骨が悲鳴あげてるから力緩めて!! カリスマじゃなくてボーンブレイクしちまうからぁああああああ!!」

「私とっても寂しかったんだよ!? なのにギン兄様ってば、他の女の人とばかり話してて、あろうことか入るときには、知らない女の人に抱き着かれてデレデレしてて……っ!!」

「あれ見てたの!? いやちげぇからね? 俺何も悪くねぇからね? 銀さん幽香に遊ばれてただけだからね?」

「その割にはアームストロング砲発射準備してたネ。女の目は誤魔化せないアル」

「テメェはフードファイトに勤しんでろ神楽ぁあああああああああああああ!!」

 

 恐らく銀時は、異変解決よりも相当過酷な修羅場に突入しているに違いない。

 

 ※

 

 閑話休題。

 とりあえず何とかフランを落ち着かせた銀時は、ようやっとまともな話を展開出来るようになる。ちなみに、『今日は絶対フランと一緒に寝ること』ということで何とか落ち着いたのだとか。

 ちなみに、幽々子と神楽はまだ食べている。彼女たちの顔が見えなくなるのではないかと思われる程、大量の皿が積み上がっていた。

 

「あいつ確か今回の異変起こした張本人だよな? 参加者より食べてねぇか? おかしくね? あいつの胃袋宇宙なの?」

「闇のフードファイトに出たら間違いなく連戦連勝な気はしますけど、さすがに地球レベルで収まって欲しいです……」

「流石に私でも、あれだけ食べるのは無理……」

 

 見たこともない程の食事量に、フランですら動揺するレベルだった。

 

「銀時さん……今回については本当に色々感謝しております。貴方がいなければ、もう少しで私達はとんでもないことをしでかす所でした……」

 

 深々と頭を下げる妖夢。彼女は今回の一件において、唯一止められる立場にいた筈なのに、それが出来なかった。幽々子のことを第一に考える彼女にとって、それは出来ないことであったからだ。

 

「解決したんだからそれでいいだろ。宴会開いてチャラにもなってる筈だし、それで十分なんじゃねえか?」

 

 対する銀時は、過ぎたことだと気にする様子はない。

 しかし、妖夢の顔は晴れない。

 銀時に抱きついているフランもまた、複雑そうな表情を浮かべている。

 

「……教えをいただいた私が言うのもどうかと思いますし、差し出がましいとは思いますが、これだけは言わせてください」

 

 妖夢は真剣な眼差しを銀時に向け、そしてこう言い放つ。

 

「もっと自分のことを大切にしてください」

「……」

 

 銀時は何も答えない。

 妖夢の言葉にフランは賛同しているようで、心配そうな眼差しを向けながら、じっと銀時を見つめている。

 

「その生き方は大変立派だと思います。事実、自分の身を犠牲にし、他者を最優先にする生き方を真似するのは相当難しいことです。どうしても最終的に我が身が恋しくなってしまいます。けれど貴方は……誰かを先導し、誰よりも前に立とうとしますね。以前の戦いでそのことを認識させられました。だからフランさんはこうして貴方を敬愛し、他の方もまた貴方のそばに居続けるのではないですか?」

 

 妖夢の言葉は恐らく正しい。

 坂田銀時が師として追従したのは、後にも先にも吉田松陽のみ。基本的に彼は前に立ち、誰かを引っ張り上げようとする。だからこそ彼の後ろは常に着いてくる者がいるとしても、彼の前には人はいない。後ろから押し上げることは出来ても、前から救い上げることは出来ない。それが、坂田銀時という男の生き様だった。

 

「ですが、その生き方は美しく、そして残酷です……貴方の生き様は、誰かを助ける事は出来ても、救うことが出来ずに取りこぼしてしまう危険性すら孕んでいます……これは幽々子様が仰っていたことです」

「幽々子が?」

 

 思いもよらぬ者の名前が出てきて、銀時は少し驚いてしまう。

 

「幽々子様は、人を見るのが得意ですから。普段はああして飄々としておりますが、本来の幽々子様は……」

「まぁ、なんとなく想像出来る。ったく、幻想郷ってのは意外な一面を持つ奴らが多い場所だなぁ、ったく」

 

 頭をかきながら銀時は呟く。

 

「そんな幽々子様が仰っていました。貴方が誰かを助ける度に、傷付いてしまう者もいる、と」

「…………」

 

 心なしか、フランの銀時を抱き締める力が強くなる。それはまさしく、今回でいえばフランのことだと思わざるを得なかった。

 それだけでなく、銀時は問題を一人で抱えてしまうことが多い。そして、彼は彼の周りに生きる者を『守る』のだ。たとえそのために、自分自身がどれだけ犠牲になろうとも御構い無しに。

 

「貴方は残される人のことも考えるべきかと……でなければ、今後も貴方は、誰かを守る度に誰かを傷つけることに……そんな貴方を、私も、フランさんも、そして他の方々も、見たいとは思いませんよ……?」

「……まぁ、肝に命じておく」

 

 その答えに満足したわけではないが、とりあえず意見の一つとして消化してくれた銀時にホッとため息をつく妖夢。

 対するフランは、銀時のことをじっと見つめて、

 

「……ギン兄様。約束して。もうあんなことをしないって。自分を犠牲にしないって……」

 

 目には薄っすらと涙が溜まっている。

 銀時は頭をがしがしと掻きむしった後に、

 

「……約束なら、仕方ねぇな」

 

 と、彼女の頭を優しく撫でるのだった。

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三十九訓 守る事と救う事は根本的に違う

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。