第四十一訓 良い教育者は子どものことを大事に考える
銀時は、宴会が終わったその日の夜、フランとの約束通りに一緒に寝ることとなった。今回の件で相当色々溜まっていたのか彼女からのスキンシップはいつも以上に激しく、危うく銀時の心はへし折れてしまうのではないかと思われたが、鋼の意思でなんとか堪えたとのこと。
そしてそんな激動の一日から数日が経過したある日のこと。銀時達万事屋メンバーは幻想郷の人里を歩いていた。
「珍しい依頼もあるものですね。寺子屋で一日代講をお願いしたいっていう」
歩きながら、新八が今回の依頼について話す。
いつものようにぐうたらしていた彼らの前に現れたのは、何やら少しだけ困ったような表情を浮かべる紫だった。彼女の話によると、『人里で寺子屋の一日代講講師が欲しいとの相談を受けた為、お願い出来ないか?』というものだった。
とは言え、銀時達に講師経験がないのは百も承知である為、実質子ども達の面倒を一日見て欲しいという中身の依頼だった。
こうなったのにも理由があり、元々寺子屋の先生として勤めている『上白沢慧音』が、たまたま外せない用事が急に入ってしまったとの事なのだ。授業前にある程度の説明はあるそうで、生徒が来る前に集まる事となっている。報酬についても慧音からきちんと出されるとのことで、銀時達にとっては引き受けるのに十分な依頼だった。
「まぁ、ガキの面倒見るくらいならなんとかなんだろ。流石に丸々授業してくれって言われたら俺達もどうしようもなかったけどな」
「滅多にない経験だから楽しみアル!」
神楽の頭の中ではおそらく、遊んで給料がもらえるという図式が成り立っているのだろう。確かにそういう風にこなすとも出来るだろうが、そう上手くいくのだろうか。
「っと、やっと着いた……」
ポツリと呟いたのは銀時だった。人里に入ってからもそこそこ歩いていた一同は、目的地である寺子屋まで到達する。
ここまで様々な店を見てきた一同だったが、歌舞伎町に並んでいる店とそこまで大差ないように見えた(実際には機械とかがある分歌舞伎町の方が発達している)。
寺子屋に来た瞬間、
「……」
銀時の脳裏に、かつての記憶が蘇る。かつて自分が師からの教えをもらっていた頃の、大切な記憶。そんな思い出に浸っていた銀時だったが、
「あぁ、貴方達が万事屋ということでいいのか?」
という、凛々しい声が聞こえてくる。
その後、寺子屋から出てきた女性は、
「今日は本当にありがとう。私は上白沢慧音。ここの寺子屋で教師を勤めている」
腰のあたりまで伸びた青のメッシュ入りの銀髪、胸元が大きく開いた上下一体の青いロングスカート、胸元に赤いリボンをつけて、頭に帽子をかぶった女性、慧音が銀時達の前に現れた。
「は、はじめまして。志村新八、ですっ!」
新八は少しどぎまぎしている様子である。これだけ魅力的な女性であり、しかも胸元が大胆に開いているのだ。一言で言ってしまえば、可愛い上に色気むんむん。
「新八どぎまぎし過ぎね。童貞丸出しアル。私は神楽ネ!」
息をつくようにそんな言葉が飛んできた。
「坂田銀時でーす。今日はよろしくお願いしまーす」
口調こそいつも通りだが、心なしかいつもより表情はキリッときているように見えた。
「……男って本当素直アル」
軽蔑の眼差しを向けながら、神楽は誰にも聞こえないような声でポツリと呟いた。
「ところで、仕事が始まる前にいくつか説明してくれるって話でしたけど……」
「あぁ。それについてこれから説明するよ」
新八からの言葉を聞いて、慧音は説明を始める。まとめると大体以下の通りだ。
この寺子屋は人里に作られているが、人の子も妖怪の子も教えている場所である。基本的に歴史の授業を行なっているが、時折様々な社会経験として普段は話すことのない人を呼んだり、算術や語学の勉強も行うのだそうだ。本日は、せっかくの機会なので外の世界について教えて欲しいというものと、慧音のもう一つの仕事の都合で出かけなければならないので、その間まで生徒の面倒を見て欲しいというものであった。
基本的に各人でやらなければならないことについては既に伝えているため、その質問対応をするのと、外の世界についてのレクチャーをすればよいということになる。
「けど、俺たちの世界とそっちだと、少しどころかだいぶ歴史ズレてんぞ? そこはいいのか?」
銀時の言う通り、幻想郷に伝わる歴史と、銀時達の住む世界で学ぶ歴史には決定的な違いがある。さらに言えば、今まで得てきた知識の多くがズレている可能性すらあるのだ。
しかし慧音は、
「構わないさ。よりいろんな知識を取り入れてこそ、生徒達はより良い大人になる。だからこそ、子ども達に興味を持たせて欲しいんだ。くだらないことでもいい。よほど間違えたことを教えない限りは、貴方達に任せようと思う」
そう言った慧音の瞳は、とても優しそうだった。それだけ彼女が、子供のことを大切にしているんだということを銀時たちは感じていた。
「……アンタ、本当に子どものことが好きなんだな」
「そうだな。子ども達は未来への宝物だ。だから、ただ単に学問を教えるだけではなく、子ども達には色んなことを学んで欲しい。ちょうどその時、貴方達のことを知ったのよ」
「そこまで言われちゃ仕方ねぇな……」
慧音の目を見て、銀時は頭を掻き毟る。
彼女は何処までも真っ直ぐだ。生徒の為なら、どんなことだってするのではないかと思われる程、教育者の鑑とも言える存在。
銀時達にしてみても、そんな彼女の手助けになりたいと思った。
神楽と新八の二人も、銀時に続いて頷いて見せる。
「任せろよ。この万事屋、アンタの大事な生徒を一日、責任持って預かるぜ」
「あぁ……ありがとう」
こうして、万事屋による特別授業が幕を開けることとなるのだった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
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