そんな訳で始まった、万事屋による一日講師なのだが。
「おいみんな席付けー。今日一日限定で先生を勤めることとなった銀八先生だぞー。何か分からないことがあったら、後ろに控えているチャイナと眼鏡に聞いてくれー」
「いきなり出鼻くじかないでもらえます?」
「おい職務放棄すんなヨ天パー」
前に立つ銀時は、原作において銀八先生のコーナーを行う時に着ている服装。神楽と新八は後ろでアシスタントをするという形式をとっている。
つまり、謎に煙が出ている物体を銀時改め銀八は咥えているわけで。
「せんせー、タバコ咥えないでくださーい」
「これはタバコじゃありません。ペロペロキャンディを超高速でレロレロしてるから、摩擦で煙が出ているだけです。人体には無害なので安心しなさい」
恐らく人里の子供であろう男の子より指摘された銀八は、ペロペロキャンディと言い張っていた。
そんな彼を指差して、
「あー! 銀さんなのだー!」
金髪の少女――ルーミアが喜びの声を上げていた。
「ん? あ、ルーミアか。元気にしてたか?」
銀八の前で嬉しそうに跳ねているのはルーミアだった。
ここは妖怪も通う寺子屋。そして彼女は見た目こそ子供。恐らく精神的にも子供なのかもしれない。なら、ここに通っていても何ら違和感はないということなのだろう。
「元気なのだー。それに、私はあの時のお礼、まだ言えてなかったから」
「あの時? ……あ、もしかしてお前、起きてたのか?」
思い出されるのは、紅霧異変でのこと。あの時、魔理沙のマスタースパークによって気絶してしまったルーミアを、銀時が優しく介抱したのだ。その時のことをルーミアは覚えていて、そして、今の今まで会うことが叶わなかったのだ。
「本当にありがとう。おかげで私は、すぐ帰ることが出来たのだー」
「そうかい……そりゃよかった」
優しく頭を撫でる銀八。
ルーミアは嬉しそうに笑っていた。
「せんせー、すごいやさしそー」
その時、授業を受けている生徒の一人が、そんなことを言ってきた。
後ろでは、
「……あれが銀さん? 嘘だ、僕達は夢を見ているんだ」
「銀ちゃんが女の子に優しくしているなんて、何か悪いものでも食べたに違いないネ……」
全然銀時のことを信じていない二人の姿があった。
※
ルーミアの一件もあり、最初の時間は質問タイムということになった。
「はい、というわけで聞きたいことがあったら何でも聞いてくれー」
「はい!!」
元気よく手を上げたのは……。
「……お前まで通ってんの? バカ」
「バカって言うな! あたいにはチルノって名前があるんだ!!」
愛すべきお馬鹿こと、チルノの姿がそこにあった。
「はいはい。で、何を聞きてぇんだバカ」
「それが先生の言うことかー! おうぼうだー!」
「お、おちついて、チルノちゃん……」
チルノの横では、オロオロしながら大妖精が止めようとする。その姿はどことなく癒しに思えるし、健気に頑張っている姿は応援したくなる。
「とりあえずあたいと勝負しろー!」
「質問じゃない。次」
「ばっさり切り捨てられた!?」
ガーン! という効果音が似合いそうな程、チルノは膝から崩れ落ちていた。
「あぁ、チルノちゃん大丈夫!?」
横では大妖精がフォローしている。
何とも微笑ましい光景だろう。
「銀さん、チルノちゃんに何か恨みでもあるんですかね……随分容赦ない気がするんですが」
「あれだヨ新八。さっちゃんに対する対応と似てるネ」
「あー……確かに。適当かつ雑で、容赦ない」
恐らく、銀八の中でチルノに対する扱い方が固定されているのだろう。だからこそ、バカネタを押し通しているのかもしれない。
「はーい、次は私なのだー」
今度はルーミアのターンだった。
「お、次はルーミアか。なんだ?」
「かめはめは、ってなんなのだー?」
瞬間、銀八の身体からオーラみたいなものが放出された(単純にあの時のことを思い出して恥ずかしさがぶり返しただけである。決して『気』ではない)。
「うぉおおおおおおおおおおおお! それを思い出させないでくれぇえええええええええ!!」
「アンタまたかめはめ波の練習してたんかいぃいいいいいいいいいいいいいい!!」
ここぞとばかりに新八のツッコミが炸裂した。
「ルーミア、世の中にはナ、知らない方がいい真実ということもあるネ」
「そーなのかー?」
「そーアル。だから聞かないであげて。あれはおっさんの悲しい一人遊びアル」
「やめろぉおおおおおおお! これ以上俺の心の穴を抉ってくるなぁあああああああああ!!」
銀時のライフは既に限界まで到達していそうだ。
「まぁ、とにかくこのまま質問させてっと、俺の心が持ちそうにねぇから……テメェら!! 外で鬼ごっこだこのやろうぅううううううううう!」
「わーい!」
子ども達が、銀八に続いて外へ出る。
どうやらこうして外で遊ぶのは久しぶりのようだ。
「銀さん、外で遊ぶのもいいですけど、この子達の課題をやる時間も忘れないでくださいよー!」
「分かってるっての!」
はしゃぎ回る子ども達に押されるように、銀八――いや、銀時は外へ出る。その際、ルーミアは銀時の手をしっかりと握っていた。
「今こそ、あたいがさいきょーだっていうことを証明してみせる!」
「チルノちゃん、がんばって!」
チルノと大妖精の二人についても、今この状況を楽しんでいるようだ。
神楽も一緒になって遊び回っている。
見張っていた筈の新八さえも、一緒になって楽しんでいた。
銀時が先導し、彼らが一緒になって遊び回っている図は、他人から見ても楽しそうな光景に見えた。
※
「なる程な……彼には人を惹きつける何かがある、というわけか」
寺子屋で銀時達が楽しそうにはしゃいでいる姿を見て、慧音は嬉しそうに言葉を零す。その隣には、白髪のロングヘア―に赤いリボンをつけ、城のカッターシャツと赤いもんぺのようなズボンをはいた女性――藤原妹紅がいた。
「慧音も人が悪いなぁ。外来人である坂田銀時のことが知りたいからって、わざわざスキマ妖怪の力を借りてまで、こうして試すようなことをして」
元々、彼女に仕事があるという話自体は嘘ではなかった。しかし、その用事自体は寺子屋での授業が始まる前に完了していて、普通に帰っていれば間に合う位のものだった。それでも彼女が万事屋に依頼したのは、
「彼が敵となる可能性を持っていたら、今からでも乗り込むつもりだった……」
「だけど、そうは見えないぞ? そんなに器用な奴には見えない。どうしようもなくチャランポランに見える筈なのに、子ども達はあんなに楽しそうにしている」
「子どもは大人よりずっと素直。そんなあの子達があそこまで信頼しているということは――」
それは即ち、坂田銀時という男を信用していいという何よりの証拠となる。
「……仇為すようであれば、二度と人里に――いや、幻想郷に入れないつもりだった。違うか?」
「妹紅の言う通りよ。けど、気が変わったわ……」
銀時の方に視線を向けながら、慧音は告げる。
「あの人がどう動いていくのか、見守っていくわ」
そうして、銀時達万事屋の一日講師代講キャンペーンは、幕を降ろしたのだった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第四十二訓 その人を見定める時は子どもの反応を伺うとよい
寺子屋のエピソード終了でござんすー。
今回は、新たなヒロインとしてルーミアさんが出てきましたよ回でした!!
そして、次回の異変に向けて少しずつ新たなキャラも登場していきますねー。