銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第四十四訓 飲み会の場では節度をわきまえるべき

「なんでテメェはさっきよりベロンベロンになってんだよ」

 

 アルコールの匂いをぷんぷんさせて、より一層顔を真っ赤にしながら、ニヘラニヘラと笑っている萃香。誰がどう見ても酔っ払っている彼女は、銀時を見つけるなり、

 

「よーう、銀の時〜、まだ酒が飲み足りねぇんじゃないの〜?」

 

 と言いながら、あろうことか抱き着いてきた。

 

「なっ!?」

 

 これには、近くにいた霊夢は殺意の波動を隠しきれていない。銀時はアルコール臭さによって離れろと対抗しており、文は相変わらず写真を撮りまくり。

 

「ってか、何処ぞの指名手配犯みてぇな呼び方すんじゃねぇよ! そして離れろ!! 酒飲めねぇだろうが!!」

「ん〜? なんださけのみてぇのか〜?」

「おめぇが足りねぇのかとかほざいてたんだろうが!!」

 

 酔っ払いを相手に最早会話は成立していない。

 

「ちょっと萃香、離れなさいよ!」

 

 ブチ切れ寸前の霊夢が、銀時から萃香を引き剥がそうとするも、元々の力が強すぎてなかなか離れない。むしろどんどん力が強くなっていくので、その度銀時の身体は悲鳴を上げていく。

 

「あああああああああああ!! やめろおおおおおおおおおおおお!! リバースしちゃう!! リバースするとこ見られちゃうぅううううううううう!!」

「特ダネ☆特ダネ☆!!」

 

 はっきり言おう。

 宴会始まって数分にして、最早地獄が広がっていた。

 

「何やってるんだぜお前達……」

 

 そこに、呆れた表情を浮かべている魔理沙が登場。横には、同じく『何やってんだこいつら』という表情を貼り付けてきたアリスの姿もあった。

 

「たすけてぇえええええええ!! このままだと銀さんの大事なものが奪われるぅううううううううううう!!」

「いやその反応おかしいぜ!? やばそうなのは分かるけど、大事なものってなんだぜ!?」

「それに助けてと言われても……抱きつかれて嬉しそうにしか見えないのだけど……」

 

 魔理沙はいつものとおりにツッコミを入れ、アリスは何処かずれた感想を述べていた。

 

「魔理沙、アリス……こいつら、殺るわよ?」

 

 たちの悪いことに、殺意の波動に目覚めた霊夢が、ドスの効いた声で二人に告げる。

 視線の先にいるのは、萃香、銀時、文。

 

「あやや!? 私もですか!? 何故!?」

 

 文目線で見れば完全にとばっちりなのだが、客観的に彼女の動きを見た場合、明らかに自業自得であろう。他人の不幸は蜜の味と言わんばかりに、猛烈な勢いで写真を撮りまくっていたのだから……。

 

「まてぇええええええ!! 俺に関しては完全にとばっちりじゃねえか!!! 抑えろ!! ってかまず離れろぉおおおおおおおお!!」

「もうめちゃくちゃだぜ!?」

 

 その場を収拾させるのに相当の時間がかかったのは言うまでもないだろう。

 

 ※

 

 地獄のようなひと時から解放された銀時。全身から冷や汗を垂れ流し、肩で息をするような状況。

 

「感謝なさい。何とか収めてあげたんだから……」

 

 呆れながらそういうのはアリスだった。

 あの後、主に第三者であるアリスのおかげでその場を何とか取り持った。尚、文に関してはカメラが壊されると察したのか、事が起きる前に逃走していた。逃げ足は本当に速いのである。

 魔理沙は現在、霊夢を宥めている所だ。萃香は他の人に絡みにいっている。

 

「たすかったぜ……何度か川が見えちまった……見知らぬジジイとババアが満面の笑みでこっち見てやがった……」

「それ完全に三途の川じゃない。アンタ完全に死にかけてるじゃないの。よく戻ってこれたわね」

 

 何度か溜息を吐きつつ、アリスがそう言った。

 

「にしても、確かアリスだったか? あの修羅どもをよく止められたな」

「前にも言ったけど、私は人形を遣う魔法使いなのよ? いくつか人形用意して、命令通り動かしただけよ」

「そんなこと出来るのか……」

 

 魔法使いと言えば基本的に魔理沙を見る機会が多かった銀時にとって、魔法はぶっ放すものというイメージがついていた。しかしその実、アリスがやったことに関しては火力よりも精度が問われる物。それだけ器用であるということが証明されていた。

 

「魔理沙を魔法使いの基本として見られては困るわ……あの子は人間にしては凄いけど、魔法使いとしてはまだまだこれからよ」

「へぇ……そういや魔理沙やお前って何処に住んでるんだ?」

 

 よく博麗神社に来る姿は見られるが、何処に住んでるのかを聞いたことがなかった為、銀時はふと気になって尋ねた。

 

「私達は魔法の森に住んでるのよ。今度来てみる?」

「え、いいのか?」

 

 やけにあっさりと許可が下りたので、銀時は思わず聞き返してしまった。

 アリスは特に気にすることもなく、

 

「別にいいんじゃない? どうせそんなにやることもないんだし、暇だから」

 

 つまり、暇つぶしも兼ねているということだ。

 

「それに、外の世界で忘れ去られた物を売ってる店もあるし、アンタの方こそ暇つぶしにはちょうどいいんじゃない?」

「そんな店もあるのか?」

「えぇ。もし興味があるなら、明日にでも行ってみる? どうせ今日は帰れそうにないし」

「え、なに、これからどんなサバトが待ち受けてんの?」

 

 何気ないアリスの一言が、銀時を恐怖のどん底に陥れていた。

 

「私もどうせ今日はここに泊まっていくつもりだったし、朝起きたら出発としましょう? 魔理沙も一緒に来るだろうし」

「そういや帰る場所一緒なんだっけか?」

「えぇ。後で私の方から魔理沙にも声かけておくわ」

 

 そう告げると、軽く手を振って、アリスはその場から立ち去った。

 明日の予定と、本日帰還不能が確定した瞬間だった。

 

 

 

 

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